著者
佐藤 武 柴崎 達雄 伊津 信之介 根元 謙次 柴崎 逹雄 星野 通平
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1984

第一鹿島海山の地形を検討すると、いくつかの地形面に区分することができる。そのうちで特徴的なものは、山頂部(水深3,700〜4,000m)の平担面と山体西半分を構成する鞍部(水深5,100〜5,500m)の平担面である。また、山体斜面部には、水深4,700m付近をとりまくように発逹する平担面と水深6,000m付近に同一深度をもつ平担面が識別できる。これらの面のうち、山頂部平担面と鞍部平担面とに礁性石灰岩の分布が確認されていること、さらに各面がほぼ同一深度に水平に発逹することから、これらの面の形成が過去の海水面の位置を示すものと考えることができる。さらに、それぞれの面には、その面を切り下位に開口する谷地形の存在が知られている。これらのことは海水面の変化が複雑な過程を経ていることを示している。これらの地形面(平担面)と谷地形を解析して白亜紀初期からの海水準変化を明らかにした。つぎに、山頂部平担面から採取した礁性石灰岩はチョーク,ウーライトを含み、石灰岩岩石学、古生物学的検討の結果、この石灰岩は一つの独立したbarrier reefの原形を残したまま沈水したものと考えられる。山頂部石灰岩の地質時代は前期白亜紀のlower Albianに対比される。また、鞍部石灰岩からも多数の二枚貝類,腹足類,石灰藻などが発見されているが、保存がわるく、同定が困難である。しかし、前期白亜紀のBarremianに特有な底生有孔虫が発見されていることから、山頂部石灰岩よりも古い時代に形成されたものと考えられる。鞍部の礁性石灰岩は未発達な礁を形成していたものと考えられる。音波探査,堆積物分析,岩石学的検討の結果も上記の古生物学検討の結果を支持している。