- 著者
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柴田 利明
- 出版者
- 一般社団法人 日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.11, pp.738-745, 2012-11-05 (Released:2019-10-18)
- 参考文献数
- 52
- 被引用文献数
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陽子のスピン1/2が,陽子を構成するクォークやグルーオンからどのようにつくられているか,は「陽子のスピンの問題」と呼ばれていて今日の物理学の基本的な問題の1つである.1980年代のEMC実験によって,陽子のスピン1/2に対するクォーク・スピンの寄与がたいへん小さい,ということが発見されたのが発端である.その後,世界の様々な粒子加速器を用いて荷電レプトン-核子偏極深非弾性散乱と偏極陽子-陽子衝突型実験によって研究が行われてきた.その結果,陽子スピンに対するクォーク・スピンの寄与は約1/3であることが明らかになった.陽子スピンに対するグルーオン・スピンの寄与の測定も行われており,理論研究も進展している.現在の研究がどこまで進んでいるかを解説する.