著者
柴田 洋昭 今福 道夫
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.268-276, 2010-03-15

ツマグロヒョウモンArgyreus hyperbiusとミドリヒョウモンArgynnis paphiaの食草外産卵について調べた.母蝶による産卵場所は,食草およびそれ以外のものを含むケージの中で,卵の被食率は野外の自然条件下で調べた.ツマグロヒョウモンは,食草にも食草外にも産卵したが,石や枯れ葉よりは生きた植物に多く卵を生み,また食草近くに多く生む傾向を示した.ミドリヒョウモンは食草から離れたケージの上部に産卵した.ミドリヒョウモンの卵の被食率は地表付近で高かったことから,本種の高所への産卵習性は,地上捕食者から卵を守るために進化したものと思われた.一方,しばしば見られたマグロヒョウモンの食草外産卵については,被食回避や,産卵習性の移行の可能性を検討した.