著者
米田 晃敏 日浦 政明 烏山 司 本間 雄一 柴田 道彦 蒲地 正幸 原田 大
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.363-369, 2018-07-20 (Released:2018-07-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

アセトアミノフェンの内服薬であるカロナールⓇの過量投与による肝障害の報告は多数あるが,静注剤であるアセリオⓇの過量投与による肝障害の報告例は少ない.今回我々は,周術期疼痛管理におけるアセリオⓇの過量投与による昏睡型急性肝不全の一例を経験した.アセリオⓇ投与開始から3日目に著明な肝障害を来しており,経過からアセトアミノフェンの薬物性肝障害と診断し,N-acetylcystein(NAC)や薬物吸着療法を開始した.その後III度の肝性脳症が出現したため,アンモニアなどの小分子量物質の除去と人工肝補助を目的に高流量血液濾過透析(high-flow CHDF)を開始し,速やかな改善が得られた.アセリオⓇの使用は静注剤である利便性から今後も臨床現場での使用頻度は増加すると思われるが,薬物中毒による昏睡型急性肝不全は救命率が低く,使用時には用法・用量を守り肝障害の出現に注意する必要がある.
著者
久米井 伸介 柴田 道彦 本間 雄一 松橋 亨 日浦 政明 大西 裕 阿部 慎太郎 田原 章成 原田 大
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.814-820, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

症例は42歳男性.20歳頃より記銘力障害や軽度の人格障害が出現し,30歳頃より暴言,被害妄想を認め,統合失調症と診断され内服加療をされていた.2010年12月に原因不明の肝硬変及び肝機能障害を指摘され,非アルコール性脂肪性肝炎及び薬物性肝障害と診断された.治療を受けていたが2011年1月より歩行障害,転倒,動作緩慢を認め薬剤性パーキンソニズムが疑われ,肝硬変の精査とともに当院を受診した.Kayser-Fleischer角膜輪の存在,血清セルロプラスミン低値,尿中銅排泄量の増加,肝生検での肝硬変の所見と肝組織中銅含量増加ならびに頭部MRIにて大脳基底核の信号異常を認め,一連の精神,神経症状と合わせて肝神経型のウイルソン病と診断した.Trientine hydrochlorideと酢酸亜鉛の内服及びリハビリテーションの開始により,肝機能ならびにパーキンソニズムや精神症状は徐々に改善を認めている.