著者
松本 成史 橋爪 和純 渡邊 成樹 和田 直樹 北 雅史 柿崎 秀宏
雑誌
排尿障害プラクティス (ISSN:09195750)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.172-177, 2012-06

著者最終原稿版高齢化に伴い、下部尿路機能障害(LUTD)を有する人が増加しているが、その多くが「歳のせい」等の理由で受診していない。(株)セガの「トイレッツ」は、既存の男性用トイレに設置する広告機能付きゲーム機で、おおよその尿量が主に表記される。その結果により多くの人が排尿を身近に感じ、受診のきっかけになる可能性があると思われる。今回、「トイレッツ」を体験した中高年男性を対象に、LUTDの啓発として有効なツールになり得る可能性があるか否かをアンケートにより調査をした。その結果、81.5%が「トイレッツを体験して排尿状態を意識した」と回答しており、「トイレッツ」にて自分の排尿を知るきっかけになり、LUTDの啓発ツールに利用できる可能性が示唆された。
著者
松本 成史 柿崎 秀宏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.1, pp.40-44, 2016 (Released:2016-01-09)
参考文献数
26

1977年,F. Muradらは生体内における血管内皮由来物質としてのNO(一酸化窒素)の働きを発見し,1998年にはノーベル生理学・医学賞を受賞した.血管内皮やNO作動性神経から放出されたNOは,cGMP(環状グアノシン一リン酸)を産生して平滑筋を弛緩させる.cGMPを分解するPDE(ホスホジエステラーゼ)type5の活性化を抑制するPDE5阻害薬は,平滑筋細胞内cGMP濃度の低下を防ぎ,結果としてNO産生量を増加させる.PDE5阻害薬は,1990年代前半に狭心症治療薬として開発されていたが,陰茎海綿体平滑筋等を弛緩させることでED(勃起不全)に有効であることが認められ,本邦においても1999年にシルデナフィルがED治療薬として承認を受けた.またPDE5阻害薬はPAH(肺動脈性肺高血圧症)治療薬としても臨床応用されており,EDのみならず全身的な血管・血流改善薬の可能性を秘めている.LUTS/BPH(前立腺肥大症に伴う下部尿路症状)に関しては,その相関性について議論されており,共通の発症要因としてのNO-cGMP系の低下が注目されてきた.PDE5は陰茎海綿体のみならず,膀胱,前立腺,尿道をはじめとする下部尿路にも広く分布していることが知られており,PDE5阻害薬の中でタダラフィルは2014年に「BPHに伴う排尿障害」治療薬として本邦においても臨床での使用が開始となった.PDE5阻害薬は膀胱出口部閉塞抑制作用,骨盤内血流改善作用,求心性神経活動抑制作用といった下部尿路に対する作用に加え,抗炎症作用,抗酸化作用,血管内皮保護作用等の多岐に亘る薬理作用を有していることが知られており,本項では第88回日本薬理学会年会シンポジウムで発表した内容を中心に報告する.
著者
安住 誠 佐賀 祐司 橋本 博 柿崎 秀宏
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.781-784, 2006-10

著者版1994年7月〜2005年2月に3ヵ月以上の内分泌療法後に前立腺前摘除術を行い、pT0と診断された11例を対象とした。内分泌療法はLH-RHアナログ単独投与または抗アンドロゲン剤と併用投与が行われていた。病理学的に残存癌を認めない11例中9例は、サイトケラチン染色でも癌病巣は確認できなかったが、2例に残存癌が検出された(症例2と症例7)を報告した。症例2(64歳男)。1997年9月にPSA8.1ng/mlで経直腸的前立腺生検を実施し、低分化型腺癌診断のもとMAB療法を4ヵ月間実施後、翌年2月に根治的前立腺全摘除術を行った。残存癌なしで経過観察中、H-E染色で認識しにくい小腺管構造がAE1/AE3染色で多数確認された。症例7(58歳男)。2003年3月にPSA10.5ng/mlで経直腸的前立腺生検を実施し、中分化型腺癌と診断されMAB療法を5ヵ月実施した。半年後に根治的前立腺前摘除術後、残存癌なしで経過観察中、H-E染色で認識しにくい小腺管構造がAE1/AE3染色で多数確認された。