著者
柿本 佳哉 津々見 崇 十代田 朗
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1320-1327, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

全国各地の自治体レベルでは、独自の価値基準を設け選定を行う地域遺産の取組みが見られる。本研究では選定から年数の経過した全国16地域の地域遺産を対象に活用実態を明らかにした。さらに、継続的・多様な活用が行われている二戸市・にのへの宝、長岡市・地域の宝、沼津市・ぬまづの宝100選を対象に地域遺産の活用と関連がある行政計画で想定された活用方法を明らかにした。最後にこれらの地域が継続的・多様な活用に至った要因を考察した。本研究の結論は以下の通りである。①地域遺産の活用内容は幅広く、保全に取り組むものから教育への採用も見られる。選定後2年を境に新たな種類の活用はあまり見られない。②継続的・多様な活用をしている地域の行政計画には、観光産業への活用を図る旨の記載が見られ、地域外への宣伝を意図した活用が計画されていることが分かった。③継続的な活用には資源の価値を共有し、地域住民の参加を促した後、地域外へ情報発信して観光に活用するという段階移行が有効であることが分かった。地域住民の参加を促す際には、参加しやすい活動から取り組むことで、地域遺産に対する意識が徐々に育成され、継続的な活用に繋がるものと考えられる。