著者
栗原 昌子
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-62, 2000-02-02

チリが1980年代に経験した対外債務危機は民間債務比率の高さ, 危機発生に繋がる経済政策の失敗など, 1997年のアジア通貨危機との類似点が多い。また, チリは対アジア貿易依存度が高いにもかかわらず危機の影響が軽微であった。これにはチリが独自に採用している短資流入規制が有効に機能したとの評価があり, 新興市場の通貨危機予防策としてこの規制が注目を集めている。しかし, 危機の伝染を回避できたのはこの規制導入の効果だけによるものではない。チリが80年代の危機を教訓に金融システムを再建し, 競争力のある為替相場を導入, 節度あるマクロ経済運営に努めたからに他ならない。短資流入規制はそうした文脈のなかで採られた政策手段のひとつである。チリの経験は, 金融のグローバル化が一層進展するなかで新興市場国が通貨投機の標的になることを回避する上で示唆に富むものである。
著者
栗原 昌子
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.85-91, 2001-02-14

本稿は, 筆者が1998年8月から9月にかけて国際交流基金の日本研究客員教授派遣事業により派遣されたメキシコのグアダラハラ自治大学経済学科において「日本経済入門」の一環として行った講義(使用言語スペイン語)「日本の金融」で用いたメモをこのたび書き起こしたものである。第1部は第二次世界大戦直後から90年代までの日本の経済発展過程を4段階に分け, その中で金融機関が果たしてきた役割, また, 日本モデルともいうべき独自の経済発展モデルを紹介したものである。第2部(次号掲載予定)では, 1990年代に戦後初めての長期不況と金融危機を経験したなかで着手された21世紀にむけての金融制度改革ならびに金融業界再編の進展を辿る。