著者
笹野高嗣 庄司 憲明 栗和田 しづ子 三條 大助 Takashi Sasano Noriaki Shoji Shizuko Kuriwada Daisuke Sanjo
出版者
東北大学歯学会
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.46-52, 1995-06
被引用文献数
1

微小循環系の組織血流の測定にレーザードプラー血流計が広く応用されている。この方法は, 水素ガスクリアランス法など従来の血流測定法とは異なるいくつかの利点を有している。しかしながら, この血流測定法は血流の絶対値を表示しない。そこで本研究では, レーザードプラー血流計を臨床における病態診断システムに応用するための基礎的実験として, 歯肉血流の測定値を水素ガスクリアランス法と比較し, レーザードプラー血流計の表示値の意義について検討した。実験にはネコ4匹を用い, 下顎歯肉の同一部位の血流をレーザードプラー血流計および水素ガスクリアランス法で測定した。歯肉血流を人為的に変化させる方法としては頚部交感神経の電気刺激を用いた。この結果, レーザードプラー血流計では複雑なプリパレーションを行うことなく, 非観血的に歯肉の血流を持続的にリアルタイムでモニターできたのに対し, 水素ガスクリアランス法では, 観血的で, 血流の測定は断続的であり, 瞬時の血流変化には対応できなかった。異なる個体間で測定された測定値については, レーザードプラー血流計の値(mV)と水素ガスクリアランス法の値(ml/100g/min)との間に相関は得られなかった。一方, 各々の血流測定法で算出された血流の変化率については, 両者の間に相関が得られた。以上の結果, レーザードプラー血流計の測定値を絶対値に変換することは困難であるが, 血流の変化率は評価できることが確認された。
著者
阪本 真弥 栗和田 しづ子 丸茂 町子
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.81-87, 1996-11-30 (Released:2014-02-26)
参考文献数
7
被引用文献数
4

高齢者の口腔乾燥症の実態を把握し, 口腔乾燥症を適切に診断し, 病因や病態に即した治療を行うための基礎的データを得ることを目的に, 口腔乾燥症の疫学調査を行った.対象は老人ホーム3施設に入居し調査に同意し協力を得ることのできた65歳以上の男性31人, 女性64人, 計95人 (平均年齢78歳) である.調査内容は問診, 視診, 触診唾液分泌量測定などを行い口腔乾燥の症状や程度, 口腔粘膜疾患や残存歯, 義歯の使用状況, 口腔清掃状態などについて調べた.その結果,1.口腔乾燥感は, 95人中23人 (24.2%) にみられ, 測定し得た89人中43人 (48.3%) の患者に唾液分泌量の低下がみられた.また, 高度な唾液分泌低下を示した人は4人 (4.5%) であった.2. 95人中85人 (89.5%) が何らかの慢性の全身疾患を有しており, 降圧剤や利尿剤など副作用として口腔乾燥を起こす薬を服用している人は62人 (65.3%) であった.さらに, このような薬を3種類服用している人は, 服用していない人と比較し, 唾液分泌量低下や口腔乾燥感を自覚する割合が高かった.3.舌乳頭萎縮は22.1%, 溝状舌は24.2%にみられたが, 口角びらんは2.1%で, 白板症, カンジダ, 扁平苔癬, アフタなどの粘膜疾患は認あられなかった.以上, 重篤は身体的および精神的疾患を持たない高齢者には治療を要する高度な口腔乾燥症はみられなかった.