- 著者
-
阪本 真弥
栗和田 しづ子
丸茂 町子
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.2, pp.81-87, 1996-11-30 (Released:2014-02-26)
- 参考文献数
- 7
- 被引用文献数
-
4
高齢者の口腔乾燥症の実態を把握し, 口腔乾燥症を適切に診断し, 病因や病態に即した治療を行うための基礎的データを得ることを目的に, 口腔乾燥症の疫学調査を行った.対象は老人ホーム3施設に入居し調査に同意し協力を得ることのできた65歳以上の男性31人, 女性64人, 計95人 (平均年齢78歳) である.調査内容は問診, 視診, 触診唾液分泌量測定などを行い口腔乾燥の症状や程度, 口腔粘膜疾患や残存歯, 義歯の使用状況, 口腔清掃状態などについて調べた.その結果,1.口腔乾燥感は, 95人中23人 (24.2%) にみられ, 測定し得た89人中43人 (48.3%) の患者に唾液分泌量の低下がみられた.また, 高度な唾液分泌低下を示した人は4人 (4.5%) であった.2. 95人中85人 (89.5%) が何らかの慢性の全身疾患を有しており, 降圧剤や利尿剤など副作用として口腔乾燥を起こす薬を服用している人は62人 (65.3%) であった.さらに, このような薬を3種類服用している人は, 服用していない人と比較し, 唾液分泌量低下や口腔乾燥感を自覚する割合が高かった.3.舌乳頭萎縮は22.1%, 溝状舌は24.2%にみられたが, 口角びらんは2.1%で, 白板症, カンジダ, 扁平苔癬, アフタなどの粘膜疾患は認あられなかった.以上, 重篤は身体的および精神的疾患を持たない高齢者には治療を要する高度な口腔乾燥症はみられなかった.