- 著者
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栗林 裕
- 出版者
- 学術雑誌目次速報データベース由来
- 雑誌
- 言語研究 (ISSN:00243914)
- 巻号頁・発行日
- vol.1989, no.95, pp.94-119, 1989
トルコ語の対格は意味的に限定された目的語に表示されると伝統文法では捉えられてきた。本論では対格の出現条件をみるために, まず対格が表示される場合という観点から考察を始める。ある条件では対格表示が義務的になり, その他では随意的となる場合がある点より, 意味的条件による対格表示には限定の度合という概念が関与することを明確にする。そして意味的条件のみならず形態的・統語的・語用論的条件が対格表示に関与することを明示する。次に, 対格が表示されない場合という観点から考察する。そこでは目的語が動詞に抱合 (incorporate) された構造が連続的に存在し, 対格の出現は目的語と動詞の語彙化の度合に依存することを統語的変形テストにより立証する。最後に, 対格の出現は単に限定という意味的条件に依存すると見るだけでは全く不備で, 本論で提示した様々な条件が統合されることにより対格の出現が決定されることを示す。