著者
栗林 裕
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

カシュカイ語はトルコ語と同じチュルク語南西グループに属していながら、特異な統語法を持つ言語である.統語法のみ近隣言語であるペルシア語から借用し、語彙はチュルク語系のものを用いるような統語的言語変化はチュルク語全体の中でも少数派である.非トルコ語研究者にとっても興味深いカシュカイ語の言語資料を広くアクセス可能な形で提示し、知識の共有を進めていくことで理論的研究と記述的研究の連携を図ることを目的として3 年間の研究成果を著書としてまとめた.
著者
栗林 裕
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.95, pp.94-119, 1989

トルコ語の対格は意味的に限定された目的語に表示されると伝統文法では捉えられてきた。本論では対格の出現条件をみるために, まず対格が表示される場合という観点から考察を始める。ある条件では対格表示が義務的になり, その他では随意的となる場合がある点より, 意味的条件による対格表示には限定の度合という概念が関与することを明確にする。そして意味的条件のみならず形態的・統語的・語用論的条件が対格表示に関与することを明示する。次に, 対格が表示されない場合という観点から考察する。そこでは目的語が動詞に抱合 (incorporate) された構造が連続的に存在し, 対格の出現は目的語と動詞の語彙化の度合に依存することを統語的変形テストにより立証する。最後に, 対格の出現は単に限定という意味的条件に依存すると見るだけでは全く不備で, 本論で提示した様々な条件が統合されることにより対格の出現が決定されることを示す。