著者
石山 哲 鶴田 耕二 武市 智志 高橋 慶一 森 雅江 今村 顕史 菅沼 明彦 味澤 篤 根岸 昌功
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.135-140, 2008
被引用文献数
5

症例は37歳同性愛の男性で, 2002年3月下旬, 腹痛, 下痢を主訴に前医を受診, 小潰瘍を主体とした非特異的大腸炎と多発性肝膿瘍を認め, 赤痢アメーバ症が臨床的に強く疑われ, メトロニダゾールにて治療されていた. Human immunodeficiency virus (以下, HIV) 抗体陽性が判明したため, 4月初旬当院感染症科緊急入院, CD4陽性リンパ球数が224/ulとHIVによる低免疫状態が疑われた. 入院翌日, 右下腹部痛の急性増悪あり緊急CTにて遊離ガス像と多量の腹水を認めアメーバ性大腸炎の穿孔と診断し緊急手術を施行した. 穿孔部位は盲腸で, 穿孔部を利用した人工肛門造設術を施行した. 肝膿瘍は保存的に治療し, 1年後に人工肛門を閉鎖した.近年アメーバ性大腸炎, HIV感染とも増加傾向にあり, これらを念頭においた早期診断および治療が劇症化の阻止と救命に重要であると考えられた
著者
松田 正己 大熊 由紀子 根岸 昌功 光石 忠敬
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.748-755, 1999-08-01

人権は「尊重」されたか 松田 1999年4月1日,昨年9月に成立した「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症予防医療法)について,「感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」(平成11年厚生省告示第115号,以下,指針とする)が出ました.今同現場の看護婦さんにその内容を知ってもらい,感染症にかかわるいろいろな課題を学んでもらいたいということで,法律の形成プロセス,指針の取り扱い,あるいは今後の展望について各界の先生方からご意見をいただきたいと思います. まず,各先生方から,この法律あるいは指針に関する思い,あるいは今までのご経験のなかから予防と人権,医療と人権との関係について思われるところをご説明ください.
著者
赤城 久美子 松永 るり 今村 顕史 味澤 篤 菅沼 明彦 根岸 昌功
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日皮会誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1265-1270, 2004

1997年から2002年12月までに都立駒込病院を受診したAIDS関連Kaposi肉腫(Kaposi' ssarcoma:KS)29例を対象として,臨床像と治療成績および転帰を解析した.すべて男性で平均年齢45歳,男性同性愛者が72%を占めた.KS診断時のCD4陽性リンパ球数は平均107/μlで,病期分類ではT1I1S1が最も多く41%を占めた.経過を追えた27例の治療は,多剤併用抗HIV療法(highly active antiretroviral therapy:HAART)のみが13例,HAARTと放射線療法の併用7例,HAARTと全身化学療法の併用2例,HAARTと放射線療法および全身化学療法の併用1例,無治療4例であった.治療の結果は腫瘍消失(complete remission:CR)18例,腫瘍縮小(partial remission:PR)2例,死亡7例であった.併用療法を含めたHAART導入23例におけるKS消失症例(CR)は73.9%に認められた.全身化学療法はHAARTと併用して3例に施行し,ABV療法(doxorubicin,bleomycin,vincristine)を行った1例は死亡,liposomal doxorubicinを投与した2例はともにKS縮小効果が得られた.放射線療法もHAARTと併用して8例13部位に施行し,全例KS縮小効果が認められた.転帰についてHAART普及前(1985~1996年)と普及後(1997~2002年)に分けて比較した.HAART前の21例は診断後2年以内に全例が死亡したが,HAART後の27例では20例が生存している.KS診断後18カ月の生存率は,HAART前が19.0%でHAART後は74.1%となった.HAART普及以後,HAART導入とliposomal doxorubicinの長期継続によってAIDS-KSの治療成績は著しく改善した.