著者
根本 俊男 堀田 敬介
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.90-113, 2010 (Released:2017-06-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

衆議院議員選挙の一部には小選挙区制が採用され,一票の重みの格差は2倍未満が基本と定められている.しかし,2002年再画定時の一票の重みの格差は2.054倍で,その基本は守られていない.この現状に対して批判は多く,議席数配分方式の見直しが提案されている.しかし,議席数配分だけではなく区割画定も格差に影響を与える.そのため,区割画定の影響把握が小選挙区を巡る議論では重要になる.その影響の計測法として坂口・和田(2000)により最適区割の概念が提案された.その後,実測で生じる技術面の困難が根本・堀田(2003)により克服され定量分析が実現された.その分析の結果,定数配分方式や議席数の改定では十分な格差縮小は難しく,区割線の引き方の変更にまで踏み込んだ検討が必要と現在では認識されるに至っている.そこで本論文では,区割線に関し市区郡行政界の変化と二つの県に跨る選挙区を許す県境緩和について定量的に分析し考察する.まず,市区郡行政界は平成の大合併を経て変化をした.その変化により,格差縮小の限界が2001年再画定検討時の1.977倍から5年後には2.153倍に拡大し,区割の環境は格差の観点から悪化していることを示す.次に,県境の緩和を許すことで2倍未満が達成可能であること,ただし,それには3県以上に適用する必要があることを明らかにする.さらに,道州制導入まで検討を進め,その効果の限界は1.940倍であることも提示する.これらの結果は,2011年に検討される区割再画定にて従来の区割方針に若干の見直しを加えたとしても格差2倍未満達成は不可能であることを強く示唆する.また,格差2倍未満にこだわることは,地域のつながりを崩す区割画定に直結せざるを得ない状況も示している.
著者
久保田 敬介 根本 俊男
出版者
文教大学大学院情報学研究科
雑誌
情報学ジャーナル = Journal of Information and Communications (ISSN:21856850)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-14, 2014-03-01

本研究は,三重県四日市市の期日前投票所設置について,住民の移動距離の観点から定量分析を行い考察を与えた.具体的には,施設配置問題に対する代表的な最適化モデルであるp-medianモデルとp-enterモデルを利用することで最適配置を導出し, 現在の配置及び配置数について分析を行った.また,より現実に近い投票所配置を考慮して現状にある四日市市の代表的施設1箇所をそのままの配置にした上で他の施設の最適な配置場所の導出に取り組んだ.その結果,現状の期日前投票所の設置数に対する,増設の効果,削減の妥当性,再配置の有効性などを示すことができた. This study analyzed the locations of early voting places in Yokkaichi city (in Mie prefecture, Japan) from an operations research perspective. Proposing optimal locations for early voting places make it more convenient for local residents and this could increase the voter turnout. In this study, by applying the p-median model and p-center model, we calculated optimal locations and examined current locations and the number of early voting places. In order to design early voting locations more realistically, we placed the main early voting places in their current locations and estimated the optimal locations of other early voting places. As a result, we identified that the current locations of early voting could be improved.
著者
久保田 敬介 根本 俊男
出版者
文教大学大学院情報学研究科
雑誌
情報学ジャーナル (ISSN:21856850)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-14, 2014-03

本研究は,三重県四日市市の期日前投票所設置について,住民の移動距離の観点から定量分析を行い考察を与えた.具体的には,施設配置問題に対する代表的な最適化モデルであるp-medianモデルとp-enterモデルを利用することで最適配置を導出し, 現在の配置及び配置数について分析を行った.また,より現実に近い投票所配置を考慮して現状にある四日市市の代表的施設1箇所をそのままの配置にした上で他の施設の最適な配置場所の導出に取り組んだ.その結果,現状の期日前投票所の設置数に対する,増設の効果,削減の妥当性,再配置の有効性などを示すことができた. This study analyzed the locations of early voting places in Yokkaichi city (in Mie prefecture, Japan) from an operations research perspective. Proposing optimal locations for early voting places make it more convenient for local residents and this could increase the voter turnout. In this study, by applying the p-median model and p-center model, we calculated optimal locations and examined current locations and the number of early voting places. In order to design early voting locations more realistically, we placed the main early voting places in their current locations and estimated the optimal locations of other early voting places. As a result, we identified that the current locations of early voting could be improved.
著者
根本 俊男 堀田 敬介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.136-147,226, 2005-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
9

一票の重みの格差に関する議論での新たな視点として格差の限界を客観的に提供し,考察を加えていきたい。例えば,現在の定数配分法と区割指針に沿った格差の限界は1.977倍と算出できる。格差拡大要因として指摘の多い各都道府県への一議席事前配分を廃すると2.032倍と逆に拡大し,この指摘は誤りといえる。定数配分法による要因を見るために,広く知られている人口比例配分法毎の限界値を算出したところ,最良でも1.750倍であった。また,現行法内で考えられる自由度を配分法に許してもやはり1.750倍が限界で,さらに法律の枠を超えた状況でさえ1.722倍未満は実現不可とわかった。これらより,格差の是正には,定数配分法の議論だけではなく,議席数の変更や県境を跨いだ選挙区設定への緩和など制度自体の改革が重要であることが数理的に明らかとなった。