著者
牧野 純 中束 賢譲 根津 郁実 石栗 太 中澤 武
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.41-55, 2023-11-01 (Released:2023-12-02)
参考文献数
32

わが国の『環境省レッドリスト2020』において,絶滅危惧種Ⅱ類(VU)にランクされているキリノミタケChorioactis geasterの保全を目的に,本種の菌糸成長と木材腐朽の特性を明らかにするとともに,原木栽培における子実体発生を試みた.その結果,菌糸はPDA培地において4℃から38℃までの範囲で生育し,その適温は30℃付近にみられた.木材腐朽に関与する環境要因等の影響は,線形混合効果モデルを用いて解析した.モデル選択の結果により,材の質量減少率は,樹種,培養温度,培養期間によって,また,ほだ木の材密度は栽培期間によって影響されることが示された.原木栽培においては,接種7年目の秋,イチイガシQuercus gilva のほだ木から最初の子実体が発生し,その時点における辺材の材密度は約0.62 g/cm3,質量減少率は約15%であった.子実体はその後も発生し,一部は裂開して子実層を裸出した.キリノミタケの原木栽培は,生息域外における有効な保全手法となる可能性が示唆された.
著者
大西 竹志 石黒 一弘 石栗 太 飯塚 和也 根津 郁実
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.153-156, 2023-08-31 (Released:2023-10-12)
参考文献数
4

都市緑地は,多様な役割があり,最近では脱炭素社会および循環型社会構築への貢献も求められてきている。本研究では,緑化樹木の植栽基盤へのバイオ炭施用によるCO2固定効果を評価することを目的とした。植栽基盤(黒土およびマサ土)に数種類のバイオ炭(木炭,竹炭およびもみ殻くん炭)を混合し,造園樹木の苗木の生育試験(9月~12月)を行った。得られた結果より,CO2固定効果と緑化樹木の生育効果の最適化を考察した。いずれのバイオ炭を土壌に施用した場合でも,植物生育の明確な阻害は確認されなかった。また,バイオ炭の施用割合別に,植栽基盤に固定することのできるCO2量は,0.03~0.24 t-CO2/m3と試算された。