著者
柴田 尚 戸澤 一宏 杉山 英男
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.jjom.H24-11, 2013-11-01 (Released:2018-01-27)
参考文献数
12

チェルノブイリ事故以後から富士山において実施している野生きのこを指標とした放射性セシウムに関するモニタリングの結果を報告した.福島事故以前には,高海抜地域の野生きのこで放射性セシウム濃度が高く,福島事故以後には,低海抜地域の野生きのこで放射性セシウム濃度が高かった.また,富士山の野生きのこに含まれる Cs-137濃度に対するチェルノブイリ事故の寄与率と福島事故の寄与率を計算し,前者(17%)に比べて後者(73%)が高い数値であることを示した.
著者
細野 天智 鵜沢 美穂子 大前 宗之 升本 宙 出川 洋介
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.77-91, 2021-11-01 (Released:2021-12-28)
参考文献数
78

Octospora系統(チャワンタケ目,ピロネマキン科)は多数のコケ植物生および少数の非コケ植物生の種からなる系統群である.本系統に含まれる種は主にヨーロッパや北アメリカから報告されているが,日本からの正式な報告は皆無であった.筆者らは盤菌類の調査によって得られた標本の中から,本系統に含まれる以下の4属4種を形態的に同定し,これらの同定結果は核リボソームRNA遺伝子の大サブユニット領域を用いた分子系統解析によっても支持された.Leucoscypha leucotricha (新称 ワタゲシロチャワンタケ)は非コケ植物生で,カバノキ属の樹下より採集された.他の3種はいずれもコケ植物生で,Neottiella albocincta (新称 アラゲタチゴケチャワンタケ)はナミガタタチゴケを,Octospora ithacaensis (新称 ゼニゴケツブチャワンタケ)はゼニゴケを,Octosporopsis erinacea (新称 ケゼニゴケニセチャワンタケ)はケゼニゴケをそれぞれ宿主としていた.いずれも東アジア新産で,O. erinaceaは基準産地のボルネオ島に続く二例目の報告となる.
著者
白水 貴 稲葉 重樹 牛島 秀爾 奥田 康仁 長澤 栄史
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.jjom.H30-02, 2018-05-01 (Released:2018-06-09)
参考文献数
25

日本においてキクラゲ Auricularia auricula-judae またはアラゲキクラゲ A. polytricha とされていた標本および菌株を用いて分子系統解析と形態比較に基づく分類学的検討を行った.Auricularia auricula-judae とされていた標本を含む26 サンプルは A. heimuer,A. minutissima,A. thailandica,A. villosula の4 種に同定され,A. auricula-judae s. str. は見られなかった.Auricularia polytrichaとされていた標本を含む26 サンプルは A. cornea と同定され,A. polytricha s.str やA. nigricans は見られなかった.この結果は,従来日本において A. polytricha として認識されてきた菌の中に A. cornea が含まれていることを示している.
著者
白水 貴 大前 宗之 新井 文彦 稲葉 重樹 服部 友香子
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.125-130, 2021-11-01 (Released:2021-12-28)
参考文献数
13

モミ属樹木の材上に発生したキクラゲ属の子実体を採取し,分子系統解析と形態比較によりA. americana s. str.と同定した.本邦におけるA. americana s. str.の報告は初である.
著者
升本 宙 出川 洋介
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.19-25, 2020-05-01 (Released:2020-06-10)
参考文献数
33

日本新産のシラウオタケ属菌Multiclavula vernalis (新称:ネコノコンボウ)について,長野県産標本に基づき,子実体と地衣体の形態を報告した.また,核rDNAのITS領域の分子系統解析の結果,および多胞子由来の培養株の情報も付記した.本菌は亜高山帯の黒ボク土からなる地上に子実体を散生し,地衣化していた.地衣体は地上に形成され,不定形または小球形,菌糸が一個または数個の藻類細胞を取り囲む構造をしていた.共生藻は緑藻で,球形から楕円形,細胞内に油球と思われる小胞を多数有していた.
著者
白水 貴 藤田 彩花 中村 昌幸 高松 進
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.33-39, 2020-05-01 (Released:2020-06-10)
参考文献数
9

クマノザクラ葉上に発生したうどんこ病菌を採取し,分子系統解析と形態比較によりPodosphaera prunigenaと同定した.タイプ標本の観察結果に基づき,P. prunigenaの記載文を修正した.また,P. prunigenaの原記載では未報告の分生子と分生子柄の形態的特徴を記載した.クマノザクラを宿主とするうどんこ病菌の報告は初である.
著者
糟谷 大河 小林 孝人 黒川 悦子 Hoang N.D. Pham 保坂 健太郎 寺嶋 芳江
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-45, 2016-05-01 (Released:2016-08-17)
参考文献数
45

3種の日本新産のチャツムタケ属菌,Gymnopilus crociphyllus (オオチャツムタケ),G. dilepis (ムラサキチャツムタケ)およびG. suberis (エビイロチャツムタケ)について,本州(茨城県,富山県,石川県,愛知県),鹿児島県(奄美大島)および沖縄県(西表島)で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,これら3種はそれぞれ,最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.
著者
青木 孝之 岡田 元
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
pp.jjom.H29-05, (Released:2017-11-18)

2017 年7 月に中華人民共和国深圳で開催された「第19 回国際植物科学会議(IBC 2017)命名規約セクション」において採択された「国際藻類・菌類・植物命名規約 (ICN; 深圳規約 2018)」における改正点の概要について解説した.
著者
大和 政秀 谷亀 高広
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.jjom.H20-02, 2009-05-01 (Released:2018-03-30)
参考文献数
127

ラン科植物は菌類との共生に強く依存して生活している植物群であり,特に種子発芽後の初期成長時には共生菌からの炭素化合物の供給に完全に依存している.ラン科の中には葉緑素を失った種(菌(類)従属栄養植物)も存在するが,このような種は世代を通じて共生菌からの炭素化合物の供給に依存している.ランの主な共生菌としては,従来,不完全菌類であるリゾクトニア属菌が知られてきたが,近年の分子生物学的手法の導入によって,様々な菌群がランの共生菌として同定されるようになった.共生菌には樹木に外生菌根を形成する菌群も含まれ,このような場合には樹木・共生菌・ランの間に3者共生の関係が営まれていると考えられる.この外生菌根菌の共生は,特に菌従属栄養性のランで報告例が多い.共生菌は主に担子菌であるが,外生菌根形成能を有する子嚢菌が共生菌として同定される例も報告されている.また,特定の菌群に対して高い特異性を示す例も数多く明らかにされている.ラン科植物は環境の変化に弱く希少植物となっているものが多いが,共生菌に関する知見はこのようなランの生活史の解明と保全にとって重要である.本総説ではこれまでの知見をまとめ,可能な限りこの関係についての整理を試みるとともに,ラン科植物の保全活動における共生菌への理解の重要性についても考察した.
著者
米山 彰造 安東 夏都美 東 智則 佐藤 真由美 牛島 秀爾 松本 晃幸
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
pp.jjom.H29-04, (Released:2017-11-18)

本研究は新たな農林水産施策を推進する実用開発事業(課題番号27036C)の一部として実施したものである.また,本研究に貴重な助言,ご指導いただいた奈良県森林技術センター河合昌孝氏と鳥取大学農学部付属菌類きのこ遺伝資源研究センターの中桐昭博士に厚くお礼申し上げます.
著者
丸山 隆史 糟谷 大河
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-109, 2021-11-01 (Released:2021-12-28)
参考文献数
28

日本新産のモリノカレバタケ属菌Gymnopus densilamellatus(ミツヒダニオイカレバタケ,新称)を,新潟県産標本に基づき形態的特徴の記載と図を添えて報告した.本菌の子実体は異臭を発し,白色型と褐色型の2型があり,ひだが緻密である点が特徴である.核rDNA ITS領域の系統解析により,日本と韓国産標本の配列は単系統群をなし,本菌が朝鮮半島から日本列島へ連続的に分布することが示された.
著者
折原 貴道
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.63-80, 2020-11-01 (Released:2020-12-18)
参考文献数
51

地下生菌とは元来,子実体が地表に露出せず,胞子の能動的散布を行わない大型菌類を指すが,現在では.地上生か地下生かに拘わらず,このような菌に共通する形態的・進化的特性を備えた菌類を広く指す場合が多い.日本における地下生菌の多様性や分類に関する研究は近年急速に進展し,現在では,日本列島が世界的にも有数の高い地下生菌多様性を誇る地域であることが認知されつつある.本稿では,近年特に多様性の解明が著しい,イグチ科ヤマイグチ属およびクロヤマイグチ属に近縁な4属(Chamonixia [アオゾメタマイグチ属(新称)],Octaviania[ホシミノタマタケ属],Rossbeevera [ツチダマタケ属],Turmalinea [ベニタマタケ属])の地下生菌について,近年の分類体系を紹介するとともに,日本産全既知分類群の簡易的な記載および解説を加えた.さらに,和名がついていない分類群については新称を与えた.
著者
中井 実 大前 宗之 折原 貴道
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.51-55, 2021-05-01 (Released:2021-06-16)
参考文献数
19

北海道において,植栽されたナルコユリ(アマドコロ属)の根茎から発生した子嚢果について形態学的な検討を行った結果,Stromatinia rapulumと同定した.本種はヨーロッパではアマドコロ属を宿主とするが,日本では従来ツルドクダミが宿主とされ,日本産標本の菌と宿主の種同定には疑問の余地があった.本報告は,S. rapulumの日本で初めての確かな採集記録であり,新たにナルコユリチャワンタケという和名を提唱した.
著者
髙橋 由紀子
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.3-18, 2020-05-01 (Released:2020-06-10)
参考文献数
78

陸地面積の3割を占める森林は,生物多様性保全機能や土壌保全・水源涵養機能等の多面的機能を有する.これらの生態系サービスを享受するには多様で持続可能な森林管理が必要であり,病害虫による森林劣化は解決すべき重要な課題の一つである.特に植物病害の病原微生物は菌類がその3/4以上を占めることから,病原菌の防除が健全で持続的な森林管理上必要とされる.病害虫による被害を抑えるための手段として,従来は薬剤散布による化学的防除が用いられてきたが,環境汚染や生態系攪乱への配慮から,近年はあらゆる防除手法を組み合わせ,被害を低減させる総合的病害管理の手法へと移りつつある.森林の主たる構成要素である樹木においては,農作物とは異なり永年生で個体サイズも大きく,また自然条件下にあるため管理が複雑で難しい.環境負荷の少ない生態的病害管理による防除方法を確立するためには,病原菌の生態的特性の理解が不可欠である.本稿では,樹木病原菌の生態的特性の総合的な理解のために行われた,分類・系統学,解剖病理学,分子生態学に関する研究を紹介した.
著者
富樫 巌 大谷 和也 安東 敬史 細川 芽衣 曽我 瞳 幸田 有以
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.93-98, 2016-11-01 (Released:2016-12-23)
参考文献数
13

グルコースやマルトースの40% (w/w) 水溶液などを凍結保護液とし,シイタケ 6 菌株の−20°C での凍結保存の検討,保存種菌の差異 (寒天培地を含む菌体ディスク,菌糸のみの菌体ペレット) の影響評価を行った.その結果,供試菌株 ANCT-05072 で菌体ディスクとマルトースの組合せが優れ,生存率100%が維持された凍結保存期間が8 週間に達した.菌体ペレットでは生存率100%に至らず,菌株・保存用種菌における寒天培地の有無・糖液 (種類と濃度) の組合せが保存菌株の生存率と生存期間を支配すること分かった.
著者
遠藤 直樹
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.23-36, 2019-11-01 (Released:2020-01-07)
参考文献数
78

菌根性きのこはマツ科やブナ科などの森林樹木の根系上に外生菌根を形成し,宿主植物と相利共生するきのこ類である.本菌群はそのような生態学的重要性に加え,マツタケやトリュフに代表される食用価値の高い菌種を多く含む経済学的重要性を有した菌群である.しかし,菌根性きのこは腐生性きのこ類と比較して難培養性であり,様々な基礎研究や応用研究の材料となる菌株がごく限られた分類群でしか得られておらず,分類や生態に未解明の要素が多い.本稿では,菌根性きのこ類の中でも特に林産資源として重要な食用種を多く含むAmanita属(タマゴタケ類),Boletus属(ヤマドリタケ類),Tricholoma属(マツタケ),およびHygrophorus属(ユキシロ)を対象に,筆者が取り組んできた分類や生態,および培養技術の開発に関する一連の研究について論じた.
著者
吉見 昭一
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.jjom.H13-03, 2002 (Released:2020-10-13)
参考文献数
35

Twelve species and one unpublished species of Scleroderma have been recognized from Japan. A taxomic key is presented here based mainly on spore characters.
著者
犀川 政稔
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.jjom.H22-03, 2011-05-01 (Released:2018-03-30)
参考文献数
57

ゾウパーゲ科とコクロネマ科菌類の分生子および接合胞子の形成と発芽について述べ,この2科の11属99種と5変種を識別するための検索表を示した.これらの観察法についても簡単に述べた.
著者
丸山 厚吉 堀 清鷹 村上 哲明
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
pp.jjom.H29-03, (Released:2017-11-18)

ハラタケ科のいわゆる Lepiota 類に属する日本では未報告の Macrolepiota mastoidea を東京都・山梨県・神奈川県で,Echinoderma echinaceum を山梨県富士山麓で採集し,核rDNA のITS 領域を用いた分子系統解析,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.和名としてそれぞれトガリカラカサタケ,コオニタケを提案した.