著者
井上 隆 青松 幸雄 小林 経宏 田仲 徹行 桑田 博文 中島 祥介
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.1604-1609, 2008 (Released:2011-06-08)
参考文献数
17

症例は55歳の女性で, 近医にて腹部エコー検査, CTを施行され, 肝外側区域の嚢胞性腫瘤病変と診断された. 精査加療目的に当科紹介受診した. CT, MRIにて膵体部より頭側腹側に突出する2房性嚢胞性腫瘤を認めた. 膵粘液性嚢胞腫瘍の術前診断にて開腹した. 術中所見, 術中超音波検査にて悪性所見を認めず, 膵腫瘍摘出術・周囲のリンパ節pick upを施行した. 病理組織学的検査所見にて繊維化を伴った膵実質より連続する嚢胞を認めた. 嚢胞上皮下に乾酪壊死を伴った類上皮細胞からなる肉芽腫およびラングハンス巨細胞を認め, 孤立性膵結核と診断した. 摘出したリンパ節も同様の所見であった. 術後に抗結核剤の4剤併用療法を2か月間施行後, 2剤併用療法を1年間施行し, 現在再発は認めていない. 今回, 孤立性膵結核の1切除例を経験したので, 文献的考察を加え報告する.

1 0 0 0 OA 尿膜管癌の1例

著者
久下 博之 桑田 博文 中島 祥介
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.2025-2028, 2003-08-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
10

症例は51歳,男性.下腹部腫瘤を主訴に来院した.臍部から恥骨上縁に新生児頭大,弾性硬の腫瘤を触知した.骨盤CT検査,骨盤MRI検査で膀胱頂部に10×8cm,内部に粘稠な液体を有すると思われる腫瘍を認めた.尿膜管腫瘍と術前診断し手術を施行した.腫瘍は腹横筋膜と腹膜の間に存在し,膀胱頂部と連続していた.周囲臓器への浸潤,骨盤内リンパ節の腫大は認めなかった.腫瘤摘出術,膀胱部分切除術を施行した.標本内にはゼラチン様物質が充満し,組織学的にはムチン産生性高分化型腺癌であった.最終的に尿膜管癌と診断した.尿膜管癌は比較的稀な疾患であり,泌尿器科にて血尿などで発見されることが多いが,下腹部腫瘤のみで外科を来院することもあり鑑別の際,本症の存在を念頭におくことが肝要である.
著者
桑田 博文
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.943-952, 1983-06-01
被引用文献数
4

分節的胃切除術における幽門洞枝温存の意義を解明する目的で, 術後1年目の胃横切2群 (幽門洞枝切離と温存群) と対照の正常群について空腹時の胃節電図を観察した. 横切2群の横切上部は正蠕動放電のみで放電間隔, 伝播速度ともに正常群の胃体部に類似した. 横切下部は不規則な正蠕動放電の中に逆蠕動放電をみ, 正蠕動放電の放電間隔と伝播速度は正常群の幽門洞部に較べ延長と遅延を示し, 異常運動が観察された. この異常運動は幽門洞枝の有無に関係なく存在し, 胃内容排出傷害の問題に関係すると推察される. 従って, 分節的胃切術の際, 幽門洞枝の有無にかかわらず幽門筋切離術が必要と考えられる.