- 著者
-
梅崎 修
- 出版者
- 法政大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
最終年度は、戦後の代表的な賃金制度である職能資格制度の普及過程に携わった人事担当者の口述記録を整理し、冊子の形にまとめた。この史料によれば、職能性資格制度と職能給の普及は職務給の改良を残しつつ行われたことを確認できる。また、日本生産性本部の海外視察団のデータ・ベースと視察参加者のオーラルヒストリーを検証し、「日本生産性本部による海外視察団の運営と効果-海外視察体験の意味-」『企業家研究フォーラム』第4号(2007年9月)(森直子、島西智輝と共著)を発表した。海外視察団参加というアクターたちによって、新しい経営技法が紹介される過程を検証した。さらに、終戦直後の労使関係と分析した「職員・工員身分差の撤廃に至る交渉過程-「経営協議会」史料(1945〜1947年)の分析-」『日本労働研究雑誌』No.550(2007年5月)(南雲智映と共著)を刊行し、その連続で終戦直後の賃金制度導入を検証した。賃金制度に関しては、日本労務学会(2007年8月)でその成果を発表した。身分差撤廃と新人事制度設計に伴う労使の交渉を読み解いた。以上の分析は、終戦直後の混乱期から、徐々に企業内秩序が形成されるプロセスを扱っている。すなわち、職員・工員身分差撤廃が達成した後、欧米の人事制度を日本的に改良しながら、「能力」を基盤に秩序が作られたことがわかる。なお、新人事制度の従業員に対する説得力は、生産性向上に繋がるという点であったと言える。