著者
倉賀野 妙子 梅村 素子 奥田 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.290-295, 1988-12-20
被引用文献数
8

エタノール濃度(1、5、15%)を異にして加熱したじゃがいものテクスチャーを比較するため、600W電熱器で25分加熱したじゃがいもについて官能検査、定速圧縮破断試験を行った。同時に、煮汁の濁度、固形分、可溶性成分を測定し、煮くずれ程度からも比較した。さらに、エタノールの影響の原因について水分含有率とペクチン質の変化から検討した。結果を要約すると以下の通りである。エタノールで加熱したじゃがいもは、水加熱に比較して、破断応力、破断エネルギー値が大きくなる、すなわち、破断の際の抵抗が増しこわれにくくなる傾向を示す。この原因の1つとして、水分含有量の低下や、水溶性ペクチン区分の減少(加熱による水溶化の減少)等が認められた。煮汁では可溶性成分の溶出が少なく、煮くずれによる固形分が少ないこと、濁度が低いことを認めた。これらの傾向は、エタノール1%では少ないが、濃度が高いほど顕著であった。一方、エタノール1%は官能検査でいずれの試料よりもやわらかく、ふっくらしているとの評価が得られ、また初期弾性率が低く、特徴的な傾向が認められた。1%エタノールで加熱終了後のじゃがいも中にはエタノールが0.13%浸透しており、少量のエタノールでもじゃがいもの組織に与える影響が大きいと考える。なお、調理書にある野菜・いも類の煮物に用いられる清酒、みりん濃度をエタノール濃度に換算すると0.5〜2.0%の範囲が多い。エタノールの影響はエタノール自身とエタノールによってもたらされる昇温速度の遅れの2要因から検討する必要があることが示唆された。