著者
奥田 和子 渡邊 裕季子 倉賀野 妙子 河辺 達也 長浜 源壮 森田 日出男
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.81-85, 1990-02-20
被引用文献数
2

米重量に対して1.7%の本みりんを添加して炊飯した本みりん添加炊飯米の調理特性を、官能検査と物性測定の両面から検討した。本みりん添加炊飯米は水炊飯米に比べて、「外観」「粘り」「かたさ」「うまみ」「総合評価」において良好であり、好まれる比率が高いことを認めた。「香り」と「甘み」では好みの差がみられなかった。定速圧縮試験でえられた初期弾性率、総仕事量、付着エネルギーは、本みりん炊飯米の方が水炊飯米よりも大きく、官能検査でえられた「こしやねばりがありつぶれにくい」という評価とよく対応した。本みりん添加炊飯米の水中落下速度が水炊飯米に比べて速かったのは、表面の滑らかさに起因しているものと思われる。両米飯の水分含有率、重量増加率ではほとんど差がみられなかった。粘りの少ない食味の劣る米に対して本みりんを添加すると、うまみ、物性、香りを向上させることを認めたが、その作用機作については現在検討中である。
著者
倉賀野 妙子 梅村 素子 奥田 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.290-295, 1988-12-20
被引用文献数
8

エタノール濃度(1、5、15%)を異にして加熱したじゃがいものテクスチャーを比較するため、600W電熱器で25分加熱したじゃがいもについて官能検査、定速圧縮破断試験を行った。同時に、煮汁の濁度、固形分、可溶性成分を測定し、煮くずれ程度からも比較した。さらに、エタノールの影響の原因について水分含有率とペクチン質の変化から検討した。結果を要約すると以下の通りである。エタノールで加熱したじゃがいもは、水加熱に比較して、破断応力、破断エネルギー値が大きくなる、すなわち、破断の際の抵抗が増しこわれにくくなる傾向を示す。この原因の1つとして、水分含有量の低下や、水溶性ペクチン区分の減少(加熱による水溶化の減少)等が認められた。煮汁では可溶性成分の溶出が少なく、煮くずれによる固形分が少ないこと、濁度が低いことを認めた。これらの傾向は、エタノール1%では少ないが、濃度が高いほど顕著であった。一方、エタノール1%は官能検査でいずれの試料よりもやわらかく、ふっくらしているとの評価が得られ、また初期弾性率が低く、特徴的な傾向が認められた。1%エタノールで加熱終了後のじゃがいも中にはエタノールが0.13%浸透しており、少量のエタノールでもじゃがいもの組織に与える影響が大きいと考える。なお、調理書にある野菜・いも類の煮物に用いられる清酒、みりん濃度をエタノール濃度に換算すると0.5〜2.0%の範囲が多い。エタノールの影響はエタノール自身とエタノールによってもたらされる昇温速度の遅れの2要因から検討する必要があることが示唆された。
著者
奥田 和子 渡邊 裕季子 倉賀野 妙子 河辺 達也 長浜 源壮 森田 日出男
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.81-85, 1990-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
13
被引用文献数
4

The palatability and rheological properties of rice cooked in water and in Hon-Mirin solution was compared. The concentration of Hon-Mirin, used was 1.7%.Sensory evaluation showed that rice cooked in Hon-Mirin solution was more favourable than rice cooked in water on the appearance, stickiness, hardness, umami and total acceptance.Force-time curves of rices cooked in these conditions were examined under compression at a constant speed. When cooked in Hon-Mirin solution, initial elasticity and total and adhesive energies of the rice were greater than those of rice cooked in water.It was found that rice cooked in Hon-Mirin solution had higher falling speed in water than that of rice cooked in water. Supposedly the smooth surface of the former rice caused increase of falling speed. There were no differences on the moisture and the specific gravity between two cooked rices.
著者
北尾 敦子 倉賀野 妙子 奥田 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-24, 1996-02-20
被引用文献数
2

限られた資源を大切にし、環境汚染をくいとめるという視野から、家庭での揚げもの料理の実態と使用済み油の物理、化学的測定を行ない劣化度との関連性を検討した。1.使用後の廃油の酸価、過酸化物価、TBA値、粘度、色(L、a、b、彩度)は、新油のそれとほぼ同じ分布幅にあり、新油とほぼ変わらない程度の油が廃油として捨てられていた。 2.これは、揚げ物を始めて使い終るまでの期間が短いこと、使用回数が少ないことなど短期使い捨て型使用実態に裏うちされていた。3.さし油の有無によって上述の測定値には差がなかった。本結果のような短期使い捨て型ではさし油の効果は認められなかった。4.油の使用をストップする目安として色のほかに、健康によくない、カラット湯がらないという理由が上げられた。5.短期使い捨て型であるため廃油が多いものと推察されたが、流しに捨てるものは1%で、多くは市販凝固剤で固める、紙などに吸わせる、牛乳パックに入れゴミとして廃棄していた。6.資源を大切にするために、廃油になるまでの使用回数をいま少し延ばし、安易に油を廃棄する習慣を改め、1回の廃油量を減らす工夫が重要である。今後、1回のはり込み量を少なくするための鍋の形状、1回のはり込み油脂量と廃油との関連性を検討する予定である。
著者
大喜多 祥子 花﨑 憲子 和田 淑子 倉賀野 妙子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.9-17, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
28
被引用文献数
2

ビスケットの品質・嗜好性に及ぼすパラチノースの影響を検討するために,砂糖と置換するパラチノースの代替率を様々に変えたビスケットを調製し,生地の物性,焼成品の形状・官能評価,保存時の吸湿性を比較した。その結果,パラチノース溶液で調製した湿グルテンは砂糖に比べて圧縮時の応力値,エネルギー値ともに大きかった。ビスケット生地でも同様であった。したがって,生地調製時に形成されるグルテンの性状の相違が,生地物性に反映したと推察した。パラチノースは生地焼成時に垂直方向に大きく膨張させるため,焼成品は直径が小さく,厚さが大であった。パラチノースのみのビスケットは甘味が弱く,硬く,外観・甘味・風味が好まれず,総合的に好ましくないと評価された。パラチノースの代替率を60%にすると嗜好性が顕著に改善し,50%にすると砂糖のみの製品と変わらない嗜好性評価を得た。パラチノースのビスケットは,砂糖のビスケットに比べ水分活性が低いことから,保存性や物性変化の面で利用効果が期待できた。
著者
倉賀野 妙子 木村 宏樹 和田 淑子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.45-52, 1991-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3

薄力系の小麦粉よりグリアジン画分, グルテニン画分を分画して, それぞれ小麦澱粉に8%混合添加したものを小麦粉の代わりとし, これに油脂および水を混合してクッキーを調製して, ドウおよびクッキーの物性に与える両タンパク質画分の影響を調べた.ドウのクリープ試験による粘弾性係数ならびに定速圧縮試験による最大応力, 最大エネルギー値の結果によると, グリアジン画分のドウはやわらかくて変形しやすく, 滑らかに伸展するのに対し, グルテニン画分のドウは弾性に富んで硬く, 圧縮に抵抗する力が大となる傾向を示した.グリアジン画分のクッキーは焼成時に上方への膨張が大きく, みかけの膨化率は173%であった.電顕観察の結果から, 膨張は吸水したタンパク質によると思われる膜様の存在により, 内部組織に気泡が安定に保たれたためと推察された.一方, グルテニン画分クッキーのみかけの膨化率は102%であり, 焼成による膨化はほとんど生じなかった.電顕観察でも気泡のあとはほとんどみられず, ところどころにタンパク質によると思われる相互につながりのない小さな集合体が認められた.クッキーの圧縮破断試験によると, グリアジン画分クッキーはみかけの破断応力, 破断エネルギーが小さく, やわらかくて砕けやすいが, みかけの破断時間, 破断ひずみは大きく, 荷重一時間曲線には小さなピークが多数生じた.一方, グルテニン画分はみかけの破断応力, 破断エネルギーが大きい, 硬いクッキーとなるが, 破断時間, 破断ひずみが小さく, 荷重一時間曲線はピークの少ないシャープなパターンとなった.酸可溶性グルテン画分のドウおよびクッキーの物性はグリアジン, グルテニン両画分の影響を受けていると推察される場合と, グルテニン画分の特性による依存が大きい場合がみられた.酸不溶性タンパク質画分のドウおよびクッキーの物性は酸可溶性グルテン画分とは異なる傾向を示した.
著者
倉賀野 妙子 北尾 敦子 山田 光江
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.665-670, 1988
被引用文献数
1

クッキーの食味とショートネス, 硬さとの関係を把握するために嗜好度官能検査を行い, 同時に定速圧縮破断特性値と対応させて検討した.<BR>1) クッキーの嗜好度官能検査をもとに, 総合評価および各評価項目間の単相関係数, 偏相関係数を求めた.その結果から, ショートネスが, 甘味, 風味と並んで総合評価に貢献する官能的要因として欠かせないことが認められた.硬さはショートネスと大きな相関があり, クッキーにとっては, 両者は切り離せない性質であり, 硬さも総合評価に影響を及ぼす要因と推定される.<BR>2) クッキーのもろさの嗜好度評価 <I>K<SUB>B</SUB></I> とみかけの破断エネルギー <I>E<SUB>n</SUB></I> (×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>), および硬さの嗜好度評価 <I>K<SUB>H</SUB></I> とみかけの破断応力 <I>P<SUB>f</SUB></I> (×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>) の関係は, おのおの, <I>K<SUB>B</SUB></I> =-0.147<I>E<SUB>n</SUB></I><SUP>2</SUP> + 0.666<I>E<SUB>n</SUB></I> + 0.551, <I>K<SUB>H</SUB></I> =-0.209<I>P<SUB>f</SUB></I><SUP>2</SUP>+ 0.979<I>P<SUB>f</SUB></I> + 0.141 で示すことができた.クッキーのもろさは, みかけの破断エネルギー 2.27×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>, 硬さはみかけの破断応力 2.35×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>を有するものが, 嗜好度評価が最も高いことが推定された.これらの破断特性値を有するクッキーを調製できる材料配合比を明らかにした.
著者
倉賀野 妙子 長谷川 美幸 和田 淑子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.307-314, 1984

クッキーについて, 定速圧縮破断による破断特性を明らかにするとともに, これらの基礎的物性値が硬さ, もろさなどの官能評価の客観的指標となりうるかどうかについて検討した.<BR>クッキーは小麦粉濃度を40, 45, 50%の3水準とし, バター, 砂糖, 卵の配合比はScheff&eacute;の3成分系の単純格子計画法に従って, おのおの9試料とした.応力-ひずみ曲線の測定はダイナグラフによった.<BR>1) みかけの応力-ひずみ曲線は材料配合比により著しく異なった.また, クッキーの破壊はみかけの破断ひずみが0.19~0.33cm/cmの少ない変形領域で発生し, みかけの破断応力は1.08~5.73×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>, みかけの破断エネルギーは1.09~6.05×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>であった.<BR>2) みかけの破断応力<I>P<SUB>f</SUB></I>とみかけの破断エネルギーEnの間には高い相関が認められ, 回帰式<I>E<SUB>n</SUB></I>=-0.21+0.97<I>P<SUB>f</SUB></I>を得た.<BR>3) クッキーの材料配合比とみかけの破断応力, みかけの破断エネルギーとの間におのおの3次の推定式, 推定曲線を得た.<BR>4) みかけの破断応力<I>P<SUB>f</SUB></I>と官能による硬さの評価値<I>S<SUB>H</SUB></I>, みかけの破断エネルギー<I>E<SUB>n</SUB></I>と官能によるもろさの評価値<I>S<SUB>B</SUB></I>との間に, おのおの<I>S<SUB>H</SUB></I>=6.33log<I>P<SUB>f</SUB></I>-2.47, <I>S<SUB>B</SUB></I>=-3.46log<I>E<SUB>n</SUB></I>+1.18を得た.定速圧縮破断時のみかけの応力-ひずみ曲線から, クッキーの硬さ, もろさで表せる官能特性の程度を同時に推測できることが示唆された.
著者
倉賀野 妙子 北尾 敦子 和田 淑子 山田 光江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.889-893, 1988

クッキーの甘味評価と硬さの関係を材料配合比の点から明確にするため, Scheffé の 3 成分系の単純格子計画法を用いて, 材料配合比の異なるクッキーを調製し, 甘味の官能検査を行い, 材料配合比および既報 で得た定速圧縮破断特性値と対応検討した.<BR>クッキーの甘味評価値とバター, 砂糖, 卵の材料配合比との間に, 小麦粉 40, 45, 50 % 水準とも 3 次の推定式ならびに推定曲線が得られた. 甘味は砂糖のほかに材料配合比による影響を受ける. 卵の存在は甘味の強さを弱める方向に働くことが示された. 生地の砂糖濃度が同じでも卵を多く加えるとみかけの破断応力が大きくなり, クッキーが硬くなることが原因の一つと考えられる.
著者
和田 淑子 倉賀野 妙子 木村 宏樹
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.711-717, 1991-08-15
被引用文献数
8

澱粉特性がクッキーの品質に及ぼす影響を調べるため, ワキシーコーンスターチ(WCS)とハイアミロースコーンスターチ(HACS)という, 糊化特性の異なる二種類の澱粉を用いて単純化した配合のモデルクッキーを調製し,これを物性測定と官能検査により評価した. WCSクッキーはHACSクッキーとくらべ,垂直方向に大きく膨化し,スプレッド(焼き広がいは小さくなった・物性測定と官能検査のいずれにおいても,WCSクッキーは硬く,HACSクッキーは顕著なショートネスを示した.走査電子顕微鏡で観察してみるど脱脂したWCSクッキーには連続的な構造が認められ,これが膨化や硬い物性の原因と考えられた. 両クッキーともに糊化度は非常に低かったが, WCSのはうがHACSクッキーよりわずかに糊化度が高かった.示差熱分析と電子顕微鏡観察から,WCSの粒子がクッキー中で一部糊化していることが示唆された. 澱粉の糊化による連続構造はクッキーを膨化させ,最終製品を硬いものにしてしまうことが推察された. したがって,ショートなもろい食感のクッキーを作るうえで,澱粉糊化の阻害は重要であると考えられる.
著者
倉賀野 妙子 奥田 和子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-33, 2006 (Released:2006-07-28)
参考文献数
28

In order to seize the distinctive features of the mastication muscle activity magnitude at the market confectioneries, I examined electromyogram of mastication muscle by giving 2.3 grams each of thirty kinds of confectionaries sold on the market. Subjects were 16 college girl students of nineteen years old.  1) The mastication muscle activity magnitude of thirty kinds of confectioneries sold on the market was as fol1ows: cookies and biscuits are 2.0lmV, chocolates 2.29mV, nutrition balanced stuffs 2.39mV, fried dough cookies 2.44mV, wafers 2,50mV, boro 2.60mV, millet-and-rice cakes 2.70mV, rice crackers 2.86mV. potato chips 3.14mV, gumi 3.44mV, processed beans 3.74mV, crackers 3.83mV, marshmallow 3.87mV, sea tangles 4.69mV, dried small fish 4.75mV and dried cuttlefish 15.01mV.  2) Regarding thirty kinds of confectionaries sold on the market, I measured that there is positive correlation between the average value of the subjects' mastication muscle activity magnitude and their coefficient of variation at significant level. In case of confectionaries which need more mastication muscle activity magnitude (sea tangles, dried small fish, dried cuttlefish and so forth), the differences between individuals are larger.  3) The mastication muscle activity magnitude, its time, its frequency and its cycle of twenty-one kinds of cookies and biscuits, and potato chips show the positive correlation with their energy and fat contents at significant level. There is a tendency that as the more energy and fat content the confectionaries have, the less are the mastication time and frequency.
著者
倉賀野 妙子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.107-113, 2005-04-20
参考文献数
45
被引用文献数
2