著者
佐藤 幸子 小築 康弘 北岡 千佳 梅澤 未来 高梨 萌 渡邉 綾香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.142, 2010

【<B>目的</B>】食べ物は「単なる商品」として、多くの人々に認識されているとも言え、食品の由来や食の風土・文化的価値に対する理解は希薄であると言っても過言ではないだろう。そこで、我々は、風土と文化を反映する料理の味覚体験を中心に据えた食教育の役割が重要であるとの考えに至った。本報告では、東京湾を魚場とする食産業の中心地である港区芝地区における「江戸前寿司」について、港区芝の寿司職人さんと連携し、体験型調理実習を実施し、地域密着の食文化的視点を取り入れた食教育プログラムを遂行した。更に、新たな食教育の方法として、USTREAMを利用したライブ映像を発信し、その可能性について検討した。<BR>【<B>方法</B>】本学食物栄養科専門科目として「食育演習」(通年,2単位)を新設し、その一講座として「江戸庶民の食文化―握り寿司」を開講した。対象は短大1・2年生30名とした。講座内容は、(1)歴史資料から見た芝地区の漁業についての講義、(2)寿司職人さんによる講義および実演、(3)調理実習、(4)味覚体験「学生による寿司と職人さんによる寿司の比較」を実施した。実習内容は、握り寿司として四種、巻物としてかっぱ巻きとし、食材は、現役漁師の丸氏が東京湾で捕獲した魚類と寿司職人さんが仕入れたものを使用した。講座後、学生に対する意識調査を行い、かわら版の作成と提出を義務づけた。また、講座をUSTREAMを利用したライブ動画発信を行い(アカウント名foodtoitan)、Twitterを利用した教員の解説コメントを同時発信した(アカウント名foodtoitan)。<BR>【<B>結果</B>】意識調査より、食文化・食材・調理・味覚教育を総合的に企画した体験型調理実習は、食と生命の基本的価値を学ぶ食教育として有効であると考えられる。さらに、今回の活動により、食教育に地域の専門家が参加することは有効な手段である可能性を見いだした。今後、継続的な地域組織との食教育プログラムを検討するとともに、USTREAMによる動画発信は、食教育推進の有望な手段である可能性が高いことから、大いなる活用を検討していきたい。