著者
梶原 栄二 重田 暁子 堀内 浩幸 松田 治男 古澤 修一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.607-614, 2003-05-25
被引用文献数
21

鶏ではファブリキウス嚢(BF)がB細胞の分化に重要な組織であるが,一部の哺乳動物では回腸バイエル氏板(PP)などのgut-associated lymphoid tissue(GALT)が嚢相当組織であると考えられている.鶏GALTにはPPも存在するし,また盲腸扁桃(CT)などの存在も知られている.しかしながら,これらの組織とBF濾胞でのB細胞発生の関係は検討されていない.そこで本研究では胚発生におけるPP,CTとBF濾胞形成を免疫組織化学的染色により比較した.その結果,BFでは13日胚でMHC class II陽性細胞のリンパ濾胞への移入開始と少数のB細胞の集族が,15日胚以降でB細胞のさらなる濾胞移入が観察されたが,同じ13日胚でMHC class II陽性細胞の集族,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の出現(PPとCTの原基)が腸管で初めて観察された.15日胚ではMHC class II陽性細胞,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の数も増加した.これらの胚発生時期のPPの出現は,メッケル憩室付近と盲腸・回腸分岐部付近の2箇所に限定されていた.さらに,BF濾胞形成を完全に阻害させた場合でもPPとCTの原基が観察された.本研究により,鶏のPPやCTの形成はBF濾胞形成や外来抗原の刺激に依存することなく,胚発生の段階でBF濾胞形成と平行して行われている事が明らかになった.