著者
越智 良文 田嶋 敦 小池 由美 白勢 悠記 三谷 尚弘 森 向日留 末光 徳匡 松浦 拓人 鈴木 真
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.124-127, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
7

子宮破裂は子宮手術の既往のある妊婦に好発し,無痛分娩を併用した際には疼痛がマスクされ,その診断が遅延する可能性が指摘されている.今回子宮手術の既往のない経産婦が無痛分娩中に子宮破裂を起こしたが,速やかに診断し母児共に救命できた症例を経験した.34歳の1産婦に対し,妊娠39週6日に無痛計画分娩を行った.子宮口6cm開大から分娩遷延,頻収縮を認めたのちに左側腹部の突発痛と胎児心拍数モニタリングの異常を認め,子宮破裂と診断し帝王切開へ移行した.開腹時に児は腹腔内に脱出しておりそのまま娩出,母体の子宮体下部前壁左側に広範な裂傷を認めた.母児ともに術後経過は良好であった.子宮破裂は子宮手術歴のない妊婦にも起こり得る.特に良好な除痛が得られている無痛分娩中に発症した突発痛を伴う胎児心拍数モニタリングの異常は,子宮破裂を疑う契機になると考えられた.