著者
長野 勇 木村 磐根 岡田 敏美 山本 正幸 橋本 弘蔵 鶴田 浩一郎 川口 正芳 杉森 明志
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.77-91, 1991-03

EXOS-D衛星は1989年2月21日に打ち上げられ, その後伸展物の展開, 高圧電源の投入を経て, 観測態勢に入った。VLF装置によるプラズマ波動の観測は, 一部他の搭載機器との電磁干渉が見られるが, 概ね良質のデータが取得されており, PFX装置で観測されたオメガ信号及びホイスラ空電のk及びPoynting vectorの解析に成功している。また, WB受信機やMCA装置により, オーロラに関連したHissやfunnel typeのエミションのスペクトラムが観測されている。この様に, 概ね良質な波動データを取得できたのは, 次のようなEMI対策によるところが大きい。すなわち第1次噛み合わせにおいて, 全てのサブシステムを衛星に組み込んだ後に各サブシステムからの放射磁界雑音特性を測定し(システム全体により構成されるループからの放射も含む), その雑音強度がVLF班の測定対象としている波動のレベル(磁界センサーが検出できる最小レベルを基準にすることが望ましいが)を越えている場合, そのサブシステムについてEMI対策をお願いした。改修後, 単体によるEMI測定を行なった。更に, 第2次噛み合わせにおいて, 組み上げ後再度EMIテストを行なった。このようにして, 各サブシステムのPIのご協力により, 放射磁界干渉雑音強度を減少させることが出来た。しかし, 一部の搭載機器においては, その改修によるシステム全体に与える影響を避けるため, そして改修にかかる時間的制約のもとで, 干渉を減らす為の装置の改修を諦めざるを得なかった。本報告では, EXOS-Dの干渉試験を通して得られたいくつかのEMI対策方法や資料について述べる。また, 打ち上げ後の軌道上におけるVLF装置と他サブシステムとの干渉結果についても述べる。そして, これらの経験を通して作成された1992年打ち上げ予定の科学衛星(GEOTAIL)に於けるEMC規制値についても触れる。