著者
高橋 裕子 芳賀 しおり 石坂 幸人 三森 明夫
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.46, 2011

アンジオテンシン阻害酵素 2(ACE2:ACEホモログ)は、ACE作用に拮抗して血管保護に働く。我々は、膠原病の収縮性血管病変に、ACE2阻害が関与する仮説を立て、患者血清中にACE2阻害自己抗体を証明した。すなわち、精製ヒトリコンビナントACE2によるELISAで、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、四肢末端壊死の患者(SLE, SSc, MCTD)で抗体の高値陽性17人/18、対照患者24人で低値(p<0.0005)、健常者28人で陰性であった。血清ACE2活性は、抗ACE2抗体価と逆相関し(R2 = 0.55)、患者血清IgG分画は、in vitro ACE2活性を抑制した。末端壊死が進行中のSLE 1例では、ステロイド治療+血漿浄化/DFPPにより抗ACE2抗体消失、血清ACE2活性欠損の回復をみた(Takahashi, et al: Arthritis Res Ther, 2010)。その後、新たなPAH 3人で抗体高値を確認した一方、非血管病にも高値例(7/54)を認めたが、それら血清IgG分画にはin vitro ACE2阻害作用がなかった。さらにランダムペプチドライブラリー法で得た抗体の反応部位候補2ヶ所の合成ペプチドで血清を吸収し、4患者で抗ACE2抗体価低下、in vitro ACE2阻害活性の低下をみた(p<0.05)。現在、抗ACE2-MAbによる動物モデルを作成中である。
著者
杉岡 寛子 森 明子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.323-332, 2016 (Released:2017-03-08)
参考文献数
35

目 的 正期産における前期破水の発生に関連する要因を明らかにすることである。方 法 主にローリスク妊産婦を対象とする産科病院(二次医療機関)と助産所の2施設において,正期産に出産した妊産婦の妊娠・分娩記録を用い,前期破水の発生に関わる要因を検証する関連検証型研究である。分析では,各変数の記述統計および各変数と前期破水発生との関連を明らかにし,最終的に2項ロジスティック回帰分析(変数増加法)を行った。検定の有意水準は両側5%とした。なお,本研究は聖路加看護大学(現聖路加国際大学)研究倫理委員会の承認を得て実施した。結 果 2010年8月から2012年10月に出産した610名(産科病院310名,助産所300名)の妊産婦を分析の対象とした。平均年齢31.46歳で,初産婦30%,経産婦70%であった。前期破水は全体の20%に発生していた。 前期破水発生と関連のあった8変数(初経産,BMI,出産回数,出生体重,性感染症,早産期の内診,正期産の内診,調査場所)における欠損値を除去した,474名分のデータで2項ロジスティック回帰分析を行った結果,前期破水発生と関連する因子として統計学的な有意差が認められた変数は,「初産婦(オッズ比=2.145,95%信頼区間:1.308-3.519, p=.003)」であり,「正期産の内診実施(オッズ比=1.837,95%信頼区間:0.998-3.383, p=.050)」は有意水準には満たなかったが比較的強い関連がみられた。初経産婦別に分析すると,経産婦では「性感染症(オッズ比=3.129,95%信頼区間:1.378-7.015, p=.006)」であった。結 論 正期産における前期破水発生の要因として「初産婦」,有意水準は満たさなかったが「正期産の内診実施」,そして経産婦においては「性感染症」が明らかとなった。前期破水の予防・対策に向け,妊婦(特に初産婦)への指導や,性教育など非妊時からの性感染症対策の必要性が改めて示された。正期産の内診については,今後その実態を明らかにしたうえで,その適応やあり方について検討していく必要がある。
著者
森 明子 山田 直子 吉田 知加子 高尾 恭一 小池 文彦 風間 宏美 須賀 比奈子 高尾 哲也 Akiko MORI Naoko YAMADA Chikako YOSHIDA Kyoichi TAKAO Fumihiko KOIKE Hiromi KAZAMA Hinako SUGA Tetsuya TAKAO
出版者
昭和女子大学近代文化研究所
雑誌
学苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.782, pp.57-63, 2005-12

RT-PCR法を用いて,葉状乳頭における味覚受容体の発現を検討した。すなわち葉状乳頭部から擦過法により取得した組織を使用し,味覚受容体候補であるTHTRファミリー(THTRs)およびT2Rファミリー(T2Rs)の発現をRT-PCR後,マイクロキャピラリー電気泳動により測定した。40歳以上の健常者ではTHTRs,T2Rsの受容体において,多数を発現していることが認められた。これに対し30歳以下の被験者ではいくつかのTHTRsおよびT2Rsで発現を認めたが,典型的な発現パターンはなかった。さらに薬服用者や高齢の味覚異常者においては,健常者に比べてTHTRs, T2Rsともに発現していない受容体が多かった。これらのことから,まず青年期では味覚受容体が成長段階にあり,20歳の成人になっても味覚の成長は十分ではないことが考えられた。壮年期になると味覚受容体が十分発達し,高齢者になってもその味覚受容体の発現数は減少しないことが示唆された。また薬剤の服用者や味覚異常者も,味覚受容体の欠落の可能性が示唆された。
著者
横井 悠加 伊藤 理恵 森 明子 森下 勝行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-19_2-H2-19_2, 2019

<p>【はじめに、目的】</p><p>腹直筋離開(diastasis rectus abdominis:以下DRA)は,左右の腹直筋間に位置する白線の離開とともに,白線の機能障害を呈するものと定義されている(Venes et al., 2005).白線が位置する腹壁の障害は,その協調的作用から,骨盤底機能障害や腰部骨盤帯痛を引き起こすと予測されるが,本研究者らが実施したシステマティックレビューではその関連性を否定する結果が示された(横井ら,2017).この結果の要因として,各先行研究におけるDRAの定義に相異があること,またDRA評価時に腹直筋間距離(inter-rectus distance:以下IRD)のみで判断しており,白線の重要な機能である白線の組織硬度を評価していないことが考えられた.そこで本研究では,DRAを呈する女性のIRDと白線の組織硬度を測定し,それらと骨盤底機能障害との関連性を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>対象は,2017年1月から2017年12月までに出産した産後女性16名(年齢33.1±5.0歳,身長159.1±5.4cm,体重51.6±5.8kg,BMI 20.5±2.5kg/m<sup>2</sup>)である.研究デザインは横断研究を採用し,DRAの評価指標として,超音波診断装置によるIRD(臍部上1cmごとに10cmまで10箇所と,臍部下1cmごとに5cmまで5箇所の計15箇所)と,組織硬度計による白線の組織硬度(IRD測定箇所と同様)を計測した.いずれかの計測箇所にてIRDが25mm以上,または白線の組織硬度が150N/m以下であった場合をDRAと判断した.また,骨盤底筋の機能評価として,超音波診断装置での経腹法による膀胱底部挙上距離を計測し,骨盤底機能障害には,International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form(以下ICIQ-SF)を用いて尿失禁を評価した.統計解析は,2標本<i>t</i>検定を用い,有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>IRDによる評価では,DRA+群が8名,DRA―群が8名となり,白線の組織硬度による評価では,DRA+群が6名,DRA―群が10名となった.IRD,または白線の組織硬度を基準にした場合,どちらにおいてもDRAの有無による膀胱底部挙上距離(IRD: DRA+群; 1.8±3.2mm, DRA―群; 3.2±5.1mm,<i>p</i>=0.52, 95%IC=-5.95, 3.15, 白線の組織硬度: DRA+群; 3.3±5.2mm, DRA―群; 2.0±3.7mm,<i>p</i>=0.548, 95%IC=-3.36, 6.07)とICIQ-SF(IRD: DRA+群; 3.1±4.9点, DRA―群; 0.4±1.1点,<i>p</i>=0.158, 95%IC=-1.33, 6.83, 白線の組織硬度: DRA+群; 1.8±3.2mm, DRA―群; 3.2±5.1mm,<i>p</i>=0.947, 95%IC=-4.35, 4.08)の結果に有意差を認めなかった.</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>本研究では,DRAの新たな評価指標として白線の組織硬度を計測し,また先行研究よりもIRDの計測箇所を増やすことで,包括的なDRAの評価を試みたが,本結果より,どちらの評価指標を用いても骨盤底機能との関係において否定的な結果が示された.このことから,DRAによるIRDの増加と白線の組織硬度低下は骨盤底機能に影響を及ぼさないことが示唆された.しかし,本研究におけるサンプルサイズは再考の余地があり,今後更なる研究の継続が重要と考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,城西国際大学倫理委員会の承認を得た上で,対象者には口頭および書面にて説明を行い,同意を得た後に実施している.</p>
著者
垣内 優芳 森 明子 松本 恵実 金 明秀
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.318-322, 2018-11-05 (Released:2018-11-30)
参考文献数
25

【目的】頭頸部複合屈曲位の状態で誤嚥の回避や気道内分泌物の喀出(喀痰)のために咳嗽が生じた場合,頸部屈曲位と比較して咳嗽が効果的に行えるのか不明である.本研究の目的は,頭頸部複合屈曲位と頸部屈曲位において随意的咳嗽力を比較検討することである.【対象と方法】対象は健常成人男性21名であった.測定肢位は,リクライニング座位45°とした.測定条件は,頭頸部複合屈曲位と頸部屈曲位の2条件とし,それぞれにおいて咳嗽時最大呼気流量,胸郭拡張差,最大吸気圧,最大呼気圧の測定を行った.【結果】咳嗽時最大呼気流量,胸郭拡張差,最大呼気圧は,頸部屈曲位よりも複合屈曲位において有意に低い値を示した.また,複合屈曲位において咳嗽時最大呼気流量は最大吸気圧,最大呼気圧と関連を認めた.【結論】リクライニング座位時における頭頸部複合屈曲位は,頸部屈曲位と比較して随意的な咳嗽力において不利に働くことが示唆された.
著者
垣内 優芳 佐々木 貴哉 松本 晋輔 森 明子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.113-116, 2014 (Released:2014-03-26)
参考文献数
17

〔目的〕頸部回旋が随意的な咳嗽力におよぼす影響を検討すること.〔対象〕健常成人15名.〔方法〕頸部は正中位,右30°回旋位の2条件とし,各条件における咳嗽時最大呼気流速(CPF),呼吸機能検査,最長発声持続時間(MPT)を測定した.〔結果〕CPF,肺活量(VC)と%VCは正中位に比べて右30°回旋位で有意に低かった.一回換気量(TV),MPTなどは両条件で有意差はなかった.CPFとVC,努力性肺活量(FVC),一秒量(FEV1.0),%FEV1.0,最大呼気流速(PEF),MPTに正の相関が認められた.〔結語〕CPFは,VC,FVC,PEFやMPTなどと関連が認められ,頸部正中位より30°回旋位で減少することが明らかとなった.