著者
森 智夫
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

木材を腐朽する真菌の一種である白色腐朽菌類は、木材腐朽時に栄養源を加え、低酸素条件におくと木材からエタノールを産生することが知られている。幾つかの白色腐朽菌の木材からのエタノール産生特性を調査したところ、Phanerochaete sordidaのみが栄養源無添加時に木材から再現よくエタノールを産生した。この菌の発酵特性を詳細に調査したところ、高糖濃度条件下では、呼吸代謝系の余剰ピルビン酸をエタノール発酵に利用可能な事、糖取込を向上させると発酵量が増加する事を明らかにした。また本菌は、木材腐朽時に低酸素ストレスに対する短期の応答機構としてエタノール発酵機構を利用しているようであった。
著者
森 智夫 川添 裕幸 堤 祐司 近藤 隆一郎
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.107-113, 2014

スギ植林地内に放置された風倒木あるいは間伐材を,林内で腐朽処理が可能な木材腐朽菌を単離し,その腐朽菌による周辺環境への影響を推定することを目的として検討を行った.スギ植林地などから高いスギ木粉腐朽能を有する木材腐朽菌としてキチリメンタケと,一般に広く分布する木材腐朽菌であるカワラタケの二種を選抜した.これらを半年以上放置されたスギ間伐材に接種することにより,間伐材を短期間で腐朽できることが確認できた.さらに,今回供試した菌株は隣接するシイタケほだ木への感染力を,分子生物学的手法により評価したところ,今回の試験においてはほだ木への感染は確認できなかった.よって,植林地などで間伐放置材などの生分解処理に用いるのに,生態系撹乱の懸念が低いものと期待される.