著者
重藤 潤 堤 祐司
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.91-100, 2016-07-25 (Released:2016-08-05)
参考文献数
54

植物ペルオキシダーゼは,大きな遺伝子ファミリーを形成しており,大部分が細胞壁に局在することが知られている。しかし,細胞壁におけるそれらの機能については不明な点が多い。植物ペルオキシダーゼの中にはフェノール類に対する酸化酵素としてだけでなく,活性酸素種の発生源としても機能するものが存在する。さらに近年の生化学的な研究によって,木化に関与する植物ペルオキシダーゼのもつ特徴的な基質酸化能力が明らかとなった。したがって,植物ペルオキシダーゼは反応特性の面でもそれぞれ差別化されており,相応の役割を細胞壁で果たしていると考えられる。
著者
森 智夫 川添 裕幸 堤 祐司 近藤 隆一郎
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.107-113, 2014

スギ植林地内に放置された風倒木あるいは間伐材を,林内で腐朽処理が可能な木材腐朽菌を単離し,その腐朽菌による周辺環境への影響を推定することを目的として検討を行った.スギ植林地などから高いスギ木粉腐朽能を有する木材腐朽菌としてキチリメンタケと,一般に広く分布する木材腐朽菌であるカワラタケの二種を選抜した.これらを半年以上放置されたスギ間伐材に接種することにより,間伐材を短期間で腐朽できることが確認できた.さらに,今回供試した菌株は隣接するシイタケほだ木への感染力を,分子生物学的手法により評価したところ,今回の試験においてはほだ木への感染は確認できなかった.よって,植林地などで間伐放置材などの生分解処理に用いるのに,生態系撹乱の懸念が低いものと期待される.