著者
小泉 大 佐久間 康成 森 美鈴 宇井 崇 佐田 尚宏 安田 是和
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.1905-1908, 2010 (Released:2011-01-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

症例1は53歳,男性.30歳時に生体腎移植を施行.2004年に右鼠径部の膨隆を認め,次第に増悪した.2006年6月Lichtenstein法施行.ヘルニア門は恥骨のすぐ脇で,膀胱上ヘルニア,ヘルニア分類II-1と診断した.内鼠径輪は破壊され,精索が内側に変位していた.症例2は44歳,男性.25歳時に生体腎移植術を施行された.2005年右鼠径部膨隆を認め,次第に増大したため,2008年6月手術施行.外鼠径ヘルニア,ヘルニア分類I-2と診断.腎移植後の癒着のため剥離に難渋し,精索の同定,剥離が困難だった.腎移植術後の鼠径ヘルニアでは,腎移植のため鼠径管や腹膜前腔に癒着が起こり,鼠径管の剥離や精索の同定が困難となっていた.移植腎のある腹膜前腔に盲目的に指を入れ,通常のヘルニアの剥離操作を行うことは,移植腎の不慮のトラブルを避けるためにも行うべきではなく,その点で腎移植後の鼠径ヘルニア症例に,Lichtenstein法は有用な術式である.
著者
竹本 美由紀 小野 舞子 棗田 将光 藤森 美鈴 高杉 幸司 江澤 和彦 原田 遼三 西田 圭一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.36-44, 2017-03-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
16

目的:関節リウマチ(RA)の実臨床において,足関節より末梢の関節病変による足趾の変形のほか,皮膚に胼胝・感染等を有する症例は多く,近年ではフットケアの介入が提唱されている.RA患者のフットケアの有効性を評価するためには足病変の定量化が重要であると考え,独自のフットケアスコアを考案し,背景因子や病態との関連性を調査した.対象:当センターで2016年1月~5月にフットケアを施行したRA患者42例を対象とした.方法:フットケアチェックシートに,症状(S)・変形(D)・胼胝(C)・感染(I)について有所見の総合スコアを60点として評価し,スコアと種々の背景因子(年齢・罹病期間・Class・Stage・疾患活動性・HAQ-DI・VAS・治療薬剤)との関連性を解析した.結果:総合スコアはClass進行群で有意に高く,年齢及び罹病期間に有意相関があり,特にHAQ-DIとの間に強い相関を認めた.各コンポーネントのうち,症状(S)はDAS28及びHAQ-DIと,変形(D)は罹病期間と,感染(I)は年齢及びHAQ-DIとの間に有意な相関を認めた.胼胝(C)はどの背景因子とも相関はみられなかったが,他のフットケア各コンポーネントとの相関をみると,変形(D)との間に有意な相関を認めた.生物学的製剤(bDMARD)使用の有無でフットケア各コンポーネントスコアを比較した結果では,感染スコアがbDMARD使用群で有意に高かった.結論:RA患者のフットケアに関わる足病変を定量化することで,足病変と患者背景因子との関連が初めて明らかとなった.今後は患者満足度向上を目指すうえで,フットケア介入の有効性や限界を調査し,数値目標の設定を行っていく必要がある.