著者
森岡 一樹 深井 克彦 大橋 誠一 坂本 研一 津田 知幸 吉田 和生
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.653-658, 2008-07-25
被引用文献数
1 13

口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株のウイルス中に明らかに異なる2種類のタイプのウイルスが存在していた.一つはブラック形成能の著しく弱いSmall plaque virus(SPV)で,もう一つが大きいプラックを形成するLarge plaque virus(LPV)であった.プラック形成能に相反して一段増殖試験およびCPE形成能においてはSPVの方がやや優れていた.また, O/JPN/2000株に対するモノクローナル抗体を作製し, SPVおよびLPVに対してスクリーニングをおこなった結果,ウイルス中和試験および免疫染色においてSPVのみを識別することができた. SPVおよびLPVの遺伝子解析の結果, VP2の133番目とVP3の56番目のアミノ酸に相違がみられた.それぞれSPVはAsnとArg, LPVはAspとHisであった.乳飲みマウスに対する病原性はLPVのLD_<50>が10^2以下であったのに対しSPVでは10^5以上であった.これらの結果よりSPVの病原性は著しく低いことが推測された.またVP3の56番目アミノ酸に関してHisからArgへの変化は細胞馴化ウイルスで報告されていることから, O/JPN/2000株が典型的な症状を示さなかった一つの要因とも考えられる.