著者
木村 研吾 堀 明洋 森岡 淳 岡本 哲也 芥川 篤史 浅羽 雄太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.3108-3112, 2010 (Released:2011-06-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は35歳,女性.原因不明の腹痛で当院受診歴があった.2008年7月同様の腹痛と発熱が出現し再診.腹部造影CTでは内部に低吸収域を伴う胃壁の肥厚を認め,胃壁内膿瘍と診断し入院となった.上部消化管内視鏡検査では,胃幽門部大弯側に粘膜下病変を認めた.抗生剤投与により腹痛は消失,退院となった.2009年4月再び腹痛が出現し,再診.CTでは前回入院時と同様の所見を認め,上部消化管内視鏡検査では,同病変頂部に潰瘍と膿の排出を認めた.以上より再燃性の胃壁内膿瘍と診断,手術を施行した.病変は直径3cm大の境界不明瞭な硬結として触知し,胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査では病変部に膵腺房細胞と拡張した導管を認め,膿瘍部では高度慢性炎症の像を呈しており,異所性膵に併発した胃壁内膿瘍と診断した.症状を伴う異所性膵は稀であり,文献的考察を加え報告する.