著者
山口 晃弘 蜂須賀 喜多男 堀 明洋 廣瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.455-463, 1985-04-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1 36

過去14年間に手術を行った消化管原発の悪性腫瘍は2,721例で,その内訳は胃癌1,904例,小腸悪性腫瘍34例,大腸癌783例で,このうち穿孔をきたした症例の頻度は胃癌18例(0.95%),小腸悪性腫瘍3例(8.8%),大腸癌36例(4.5%)であった. 胃癌穿孔例はすべて進行癌であり,組織学的には中分化型管状腺癌が多く, ps(+),脈管侵襲も高度な症例が多数を占めた.切除率は100%であったが治癒切除は4例(22.2%)にすぎなかった.手術直接死亡率は22.2%,累積5年生存率0%, 4年生存率6.7%であった. 小腸穿孔は3例にみられ組織学的にはすべて悪性リンパ腫であった. 3例のうち1例は手術死亡し,他の2例も8カ月以内に全身の悪性リンパ腫に進展し死亡した.小腸悪性リンパ腫の穿孔は予後が極めて不良と考えられた. 大腸癌には遊離穿孔と被覆穿孔がみられ,遊離穿孔は左側結腸癌,直腸癌に多く,被覆穿孔は右側結腸癌に多い傾向があった.癌の口側穿孔例が7例(19.4%)にみられ,すべて遊離穿孔であり,主病巣はS字状結腸より肛門側にみられた.大腸癌穿孔例は組織学的には高分化ないし中分化腺癌が大半を占め,深達度ssの症例が半数であった.治癒切除は穿孔例の50%に可能であったが,手術直接死亡率は16.7%ですべて細菌性ショックによるものであった.治癒切除例の累積5年生存率は59.6%であり,胃癌穿孔,小腸悪性リンパ腫穿孔例とくらべはるかに良好な成績が得られた.大腸癌穿孔例では全身状態を考慮し,より積極的に根治手術を行うことが望ましいと考えられた.
著者
木村 研吾 堀 明洋 森岡 淳 岡本 哲也 芥川 篤史 浅羽 雄太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.3108-3112, 2010 (Released:2011-06-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は35歳,女性.原因不明の腹痛で当院受診歴があった.2008年7月同様の腹痛と発熱が出現し再診.腹部造影CTでは内部に低吸収域を伴う胃壁の肥厚を認め,胃壁内膿瘍と診断し入院となった.上部消化管内視鏡検査では,胃幽門部大弯側に粘膜下病変を認めた.抗生剤投与により腹痛は消失,退院となった.2009年4月再び腹痛が出現し,再診.CTでは前回入院時と同様の所見を認め,上部消化管内視鏡検査では,同病変頂部に潰瘍と膿の排出を認めた.以上より再燃性の胃壁内膿瘍と診断,手術を施行した.病変は直径3cm大の境界不明瞭な硬結として触知し,胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査では病変部に膵腺房細胞と拡張した導管を認め,膿瘍部では高度慢性炎症の像を呈しており,異所性膵に併発した胃壁内膿瘍と診断した.症状を伴う異所性膵は稀であり,文献的考察を加え報告する.
著者
新井 利幸 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 磯谷 正敏 堀 明洋 青野 景也 森 直治 前田 敦行 河合 正巳 高野 学 山口 竜三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2135-2140, 1994-09-01
被引用文献数
21

最近10年間に経験した消化器外科手術後に発症した急性肺塞栓症例8例を臨床的に検討した. それらは同期間の手術例の 0.07% に相当し, 平均年齢65.5歳 (55∿75), 1例が男性, 7例が女性, また7例が悪性疾患, 1例が胆石症であった. 術後の安静解除の時期に呼吸困難, 胸痛, 胸部不快感あるいは急性循環不全の症状がみられ, 心エコーで右心の拡張が認められれば急性肺塞栓症が強く疑われる. 肺動脈造影は診断のもっとも確実な方法であり, これを施行した5例全例で塞栓が証明された. 8例中5例は線溶・抗凝固療法で軽快したが, 3例は死亡した. そのうち2例は発症後数時間で失ったが, 1例は補助循環下に線溶・抗凝固療法を行い11日間の生存が得られた. 急性肺塞栓症に対しては, 必要なら補助循環を併施し, 強力な循環管理下に線溶・抗凝固療法をまず行うのがよいと思われる.
著者
近藤 哲 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 堀 明洋 広瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕 中野 哲 武田 功 小沢 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.1987-1995, 1984-11-01
被引用文献数
23

原発性十二指腸癌7切除例を対象として臨床的検討を行った. 5例は UGI, 内視鏡, 生検の3者で診断可能であったが, 2例は膵癌の十二指腸浸潤との鑑別が困難であった. しかし US と CT で膵癌を否定しえた. 血管造影では4例中2例が十二指腸原発と確認しえた. さらに切除可能性, 根治性を推定するのに有用であった. リンパ節転移は全例に認められ, 非治癒切除4例中3例の非治癒因子, 治癒切除後再発2例中1例の再発因子となっていたした. したがって, 乳頭上部癌では膵頭部癌第1群リンパ節郭清をともなう膵頭十二指腸切除を原則とし, 乳頭下部癌では腸間膜根部リンパ節をより徹底郭清し状況によっては血管合併切除再建が必要と思われた.