著者
茶谷 成 森藤 雅彦 佐々木 秀 横山 雄二郎 村上 義昭 末田 泰二郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.2149-2152, 2004-08-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
6 4

今回,鉗子や体位の工夫により摘出しえた経肛門的直腸異物の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性.自慰目的にて清涼飲料水の瓶を肛門より挿入し,抜去不能となり当院に来院した.腹部X線像にて直径4 cm高さ15 cmの瓶を認めた.まず用手的摘出を試みたが摘出できなかった.膣鏡診および内視鏡診施行するも抜去不能であった.腰椎麻酔下,載石位にて通常の鉗子を用いて摘出を試みたが把持困難であった.そこで,下肢をさらに挙上して高載石位とし,股関節を屈曲させ,腹部を愛護的に圧迫し,肛門を左右から拡張すると異物の全周が可視できた.また八爪鈎骨鉗子を用いることで異物を把持し摘出しえた.術後は特に合併症を認めなかった.今回用いた方法は経肛門的直腸異物摘出法の一つとして有効であり,今後同様症例に対して試みる価値があると考えられた.
著者
森藤 雅彦 浜中 喜晴 平井 伸司 宮崎 政則 中前 尚久
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.94-98, 2001-01-25 (Released:2009-08-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

中皮腫は漿膜最上層のmesothelial cellを発生母地とする腫瘍である.われわれは,肉眼的に限局した形態で発見された悪性胸膜中皮腫の1例を経験したので報告する.症例は57歳,男性.胸部異常陰影にて入院した.精査にて横隔膜原発腫瘍を疑い胸腔鏡下切除術を施行した.術中迅速病理にて悪性所見を認め,肺,横隔膜にも浸潤していたため右肺下葉,横隔膜の一部を合併切除した.術後の病理組織検査にてmalignant mesotheliomaが疑われ,免疫組織学的検討にてCytokeratin陽性, Vimentin陽性, CD34陰性であった.その後2度局所再発し,手術と化学療法を施行し,現在外来通院中である. malignant mesotheliomaは診断が困難であるが,他疾患との鑑別に免疫組織学的検索が非常に有用である.現在本疾患に対する有効な治療法はなく,予後も極めて不良と言われる.新たな治療法の解明のためにも他疾患との明確な鑑別診断が必要と考える.