著者
桑原 徹 植下 協 板橋 一雄
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 1979

この報告は, 濃尾平野の地盤沈下の近況と解析を主体にして述べている。すなわち, 濃尾平野の地盤構造, 地盤沈下の経年変化と現況, 地下水位の経年変化, 深層土質調査結果, 深層の横方向載荷試験結果, 地盤沈下量の解析と将来予測, 地盤沈下と温泉との関係について述べている。地下水の状況については, 多くの単層取水井の水位資料を用いて, 過去の地下水位と水位低下速度を推定し, 平面分布を示している。深層土質については, 飛鳥観測井設置時に得た不かく乱サンプルにより, 物理特性及び力学特性を明らかにしている。また, 横方向載荷試験により, 深度と地盤の変形係数との関係も明らかにしている。地盤沈下の解析では, シフマンの定率漸増荷重の場合の圧密式を用い, 地下水位の低下傾向を実測値に基づき仮定し, 地盤沈下経過を計算しており, 実測値と良く一致した結果を得ている。
著者
植下 協 桑山 忠
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, 1977-06-15

廃棄物として排出されるものは, 家庭からの動植物性の残渣や紙くず・繊維くずなどの都市ゴミから製造業や建設業などからの各種産業廃棄物まで種々雑多である。これらが各種中間処理の実施によって最終処分されるときは, ガレキ類, 土砂類, 脱水スラッジおよび焼却灰類に区分できる。この4種類の最終処分されるときの廃棄物の比重, 強熱減量, PH, コンシステンシー, 締固め, CBR, 圧縮および粒度試験の結果を示し, 埋立て材料としての特性について説明した。次に, 東中島, 榎津および戸田埋立処分跡地を例に, 廃棄物の埋立処分跡地の利用状況と地盤の特性を述べた。これらはいずれも生ゴミにより埋立てられたものであるが, 地盤の沈下が大きい, 強度が不足, メタンガスが発生, 植樹が枯死するなどの問題が生じている。これらの問題のうち, 腐食性廃棄物に起因するものは中間処理態勢の強化により対処できる。また, 跡地利用を考えて, 今まで行なわれてきた投棄処分という考え方を改めて, 廃棄物による盛土土工として十分な管理のもとに埋立て処分を行なう必要がある。
著者
植下 協 桑山 忠
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

昭和47年7月愛知県西三河地方の花崗岩地帯を襲った集中豪雨による地盤災害については従来雨量の少なかった地方に発生したこと, 大部分が自然斜面の崩壊であったこと, その発生頻度が地域内の基盤岩質によって著しく異なっていたことなどが特徴として挙げられている。崩壊規模は小さいものが多く, ほとんどが表層すべりであり, 同じ花崗岩地帯であっても, 粗粒黒雲母花崗岩地帯と角せん石・黒雲母花崗せん緑岩地帯とで斜面崩壊の発生頻度に大きな差があることが報告されている。東海地方を襲った豪雨は愛知県半田市付近から北東に伸びる幅20km, 長さ80kmの狭い帯状地域に集中しており, 中心地区の愛知県西加茂郡藤岡村, 小原村では7月12日21時から13日2時までの5時間に200〜250 mmの降雨量があったことが述べられている。筆者らは災害発生直後に組織された調査研究班に土質工学分野から参加し, 災害直後の航空写真を解析するとともに, 崩壊現地の調査を行なっている。それとともに, 今回のような崩壊多発山間地域の中で, 豪雨時に安全な場所を探すことも目的の一つとし, 同じような斜面で崩壊をまぬがれたところについても調査が行なわれたことが述べられている。しかし, 崩壊しなかった斜面下部に小規模な崖錐とか人口の石積などが散見され, 崩壊防止にこれらが役立っていたのではないかと述べられている。