著者
寺井 岳三 植田 秀雄 行岡 秀和
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.275-279, 2005 (Released:2005-11-25)
参考文献数
10

放屁の有無の測定は,腸管運動の機能の評価において重要である.とくに手術後の患者では,腸管の動きが抑制されるため,放屁の出現は,腸管の運動が回復したことを正確に示し,経口摂取開始の指標となる.放屁を客観的に評価する放屁モニターの,指標として用いることができるガスは,大気中にほとんど含まれず,放屁中に必ず存在する事が必要条件であり,炭酸ガス(CO2)と水素(H2)が適する.CO2は呼気に5%含まれるため,部屋の換気や部屋にいる人数により大気中のCO2は変動するが,H2は,呼気中に含まれる濃度がCO2に比べるとはるかに少ないため,測定に影響が少ない.H2を指標とした小型で,簡便な放屁モニターを試作し,CO2アナライザーと比較した結果,信頼性が高く,CO2アナライザーより優れていた.今後,H2を指標とした放屁モニターの臨床での実用化が期待される.
著者
植田 秀雄 小橋 恭一
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.270-274, 2005 (Released:2005-11-25)
参考文献数
6

呼気には,多くの成分が含まれていることは意外に知られていない.一説には400種類以上ともいわれ,いずれも生体代謝産物である.呼気中の成分はそれぞれ意味のある生体情報を持っている.つまり,ガス濃度の変化と疾病との関係が明らかにされれば,呼気という“非侵襲”生体試料が大きな意味を持つことになる.近年,わが国ではガス測定技術の進展とともに,さまざまな専用ガス測定器の開発とその臨床研究が盛んになってきている.他方,先ごろ「国際呼気研究学会」(International Association of Breath Research)が旗揚げされ,呼気研究の機運が世界的にも高まってきた.呼気ガス測定の実用化研究の結果,臨床活用範囲が広がることにより,医療面のみならず非侵襲であるため,日常の健康管理にも役立てられることになると考えられる.呼気(におい)測定の実用化は,将来的,社会的にまことに大きい意義がある.