著者
寺井 岳三 植田 秀雄 行岡 秀和
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.275-279, 2005 (Released:2005-11-25)
参考文献数
10

放屁の有無の測定は,腸管運動の機能の評価において重要である.とくに手術後の患者では,腸管の動きが抑制されるため,放屁の出現は,腸管の運動が回復したことを正確に示し,経口摂取開始の指標となる.放屁を客観的に評価する放屁モニターの,指標として用いることができるガスは,大気中にほとんど含まれず,放屁中に必ず存在する事が必要条件であり,炭酸ガス(CO2)と水素(H2)が適する.CO2は呼気に5%含まれるため,部屋の換気や部屋にいる人数により大気中のCO2は変動するが,H2は,呼気中に含まれる濃度がCO2に比べるとはるかに少ないため,測定に影響が少ない.H2を指標とした小型で,簡便な放屁モニターを試作し,CO2アナライザーと比較した結果,信頼性が高く,CO2アナライザーより優れていた.今後,H2を指標とした放屁モニターの臨床での実用化が期待される.
著者
日本ペインクリニック学会用語委員会 西江 宏行 長櫓 巧 有田 英子 表 圭一 鈴木 孝浩 寺井 岳三 中谷 俊彦 藤井 善隆 森脇 克行
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.505-508, 2009-09-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
12

Painは,日本ペインクリニック学会用語集第2版で痛み,疼痛と和訳されているが,日本ペインクリニック学会用語委員会では第3版編集にあたりpainの訳語を,現代と過去の国語辞典,英和辞典,医学辞典,日中辞典,痛みに関する論文を調べ,再検討した.現代と過去の国語辞典は,「痛み」と「疼痛」を区別しており,「疼痛」とは疼く痛みのことであり,「痛み」の中のごく一部を意味すると定義されている.Painの訳語は,現代の主な英和辞典では,苦痛,苦しみ,痛みなどが記載されており,過去の英和辞典でも,主に痛,痛みと記載されており,疼痛という訳語は記載されていない.これに対して医学辞典では過去と現代ともに,ほとんどがpainの訳語を「痛み,疼痛」と記載し,「痛み」と「疼痛」を同義語としている.中国語では「疼:teng」「痛:tong」「疼痛:tengtong」は,ほぼ同じ意味である.用語委員会ではpainの訳語が医学界と一般社会で違いがあるのは望ましくないと考え,第3版のpainの和訳として「痛み」あるいは「痛」が適切であると結論し,ただ,疼痛がすでに定着した言葉になっているので,「疼痛」も併記することになった.
著者
矢部 充英 藤井 崇 寺井 岳三 松本 政明
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.1047-1051, 2008-11-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
14

心臓ペースメーカー波形と干渉したため,自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)を装着されたが,心室細動であったにもかかわらず作動しなかった症例を経験した。患者は61歳の男性で徐脈のため心臓ペースメーカー(Dual-pacing, Dual-sensing, Inhibeted mode; DDI)を埋め込まれていた。自宅で意識消失し,救急隊による心肺蘇生時にAEDを装着されたが,心室細動であったにもかかわらず作動しなかった。本症例で使用されたAEDは半自動式で,手動で解析し,電気ショックのタイミングを調整できるタイプであるが,ペースメーカー装着患者に対する性能までは保障されておらず,ペーシング波形を患者の心電図と誤認した可能性があった。一般にAEDの心室細動に対する解析アルゴリズムにおいてその感度,特異度は高く設定されているが,AEDと埋め込み型ペースメーカー波形との干渉については不明な点が多い。ペースメーカー装着症例におけるAED使用にあたっては機種によっては電気ショック適応であっても作動しない可能性があり注意を要する。ペースメーカーとAEDの相互作用について,更なる研究と解析アルゴリズムの改訂が望まれる。
著者
寺井 岳三
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.627-636, 2006 (Released:2006-12-22)
参考文献数
9

救急救命士の気管挿管が認められ, 病院での気管挿管実習が始まった. 大阪労災病院で実習を修了した救急救命士12名の問題点として, 麻酔器を用いたマスク換気が十分にできず, 人形を用いた事前訓練による悪い癖がついているため喉頭鏡操作がうまくできないことがある. 気管挿管成功率は92±6%であり, 個人間で技術にばらつきがみられるが, 年齢と成功率には有意な相関はなかった. 合併症は咽頭痛が12.5%, 嗄声が19.1%にみられた. 指導医は, 救急救命士が気管挿管を行うことの意義をよく理解し, 気管挿管実習とは総合的な気道管理実習の一部であると認識しなければならない. まずマスク換気がしっかりできること, そして確実かつ合併症を起こさない挿管技術を指導することが重要である.
著者
日本ペインクリニック学会用語委員会 寺井 岳三 長櫓 巧 西江 宏行 有田 英子 表 圭一 鈴木 孝浩 中谷 俊彦 藤井 善隆 森脇 克行
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.509-514, 2009-09-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
35

Neuropathic painは,ペインクリニック用語集第2版で,神経障害(因)性疼痛,ニューロパシックペインと和訳されているが,他の用語集ではニューロパチックペイン,ニューロパシー性疼痛と和訳されている.そこで,日本ペインクリニック学会・用語委員会は,用語集第3版でneuropathic painの和訳をどのようにすべきか検討した.医学辞典でneuropathyはニューロパシーおよび神経障害と和訳され,neuropathicで始まる言葉は神経障害性と和訳される場合が多い.医学中央雑誌のウェブ検索では,1991年から2008年まで神経因性疼痛の使用頻度が最も高く(66.5%),神経障害性疼痛(15.3%),ニューロパシックペイン(4.7%)であったが,2008年には神経障害性疼痛が著増(47.4%)し,神経因性疼痛は減少(48.5%)した.この神経障害性疼痛の使用頻度増加は,より的確な和訳語を使用することになったためと考えられる.医学辞典の和訳および現在の言葉の使用状況より,用語委員会ではneuropathicを神経障害性と和訳することを提案する.