50 0 0 0 OA 感冒後嗅覚障害

著者
近藤 健二
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.271-277, 2014-07-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
54

感冒後嗅覚障害は,上気道のウィルス感染罹患後に上気道炎症状が消失したあとも嗅覚障害が持続する状態である.発症は中高年齢の女性に多く,嗅神経上皮および中枢嗅覚伝導路の傷害による神経性嗅覚障害と考えられている.内視鏡検査,画像検査では異常を認めず,上気道炎罹患後に嗅覚低下を自覚したという病歴が本疾患の診断の決め手となる.基準嗅力検査では中等症以上が大半で高度低下,脱失例が半分以上を占める.治療は本邦では亜鉛製剤,漢方製剤,ステロイド点鼻および内服,ビタミン製剤,代謝改善剤などが使用されている.また嗅覚トレーニングが回復に有効との報告もある.機能回復には長期間(1年以上)かかることが多い.

16 0 0 0 OA 茶の香り

著者
澤井 祐典
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.179-186, 2007 (Released:2008-03-22)
参考文献数
17

茶の香気は主に3つの要素から成り立っている.(Z)-3-ヘキセノール,(E)-2-ヘキセノール,ノナナール,(Z)-3-ヘキセニルヘキサノエートなどは若葉の青臭の原因成分であり,2,5-ジメチルピラジン(ピラジン類)などは香ばしい焙煎香の原因成分である.紅茶やウーロン茶に多く含まれるリナロール,ゲラニオール(テルペンアルコール)は花や果実の香りの成分である.このほか,玉露やてん茶には特別にジメチルスルフィドが多く含まれており,おおい香(葭簀などで遮光して育成することにより発生する)の海苔様の香りの原因成分である.
著者
瓜田 純久 杉本 元信 三木 一正
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.99-104, 2006 (Released:2006-10-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

現代の医療では非侵襲的に多くの情報を得ることが求められている.採血さえも不要な呼気試験は,検査方法を工夫すると,多くの消化管情報を得ることができるが,その中心は水素・メタンガスの測定である.空腹時の呼気中水素は消化管発酵反応の指標と考えられているが,その再現性は低く,解釈は難しい.そこで,試験食を負荷して呼気中水素・メタンガスの経時的な変化から病態を評価する方法が一般的である.非吸収型の炭水化物,食物繊維などは小腸で吸収されず,大部分が大腸へ到達し,腸内細菌の発酵反応で分解される.この際発生する水素・メタンガスの時間,量からガス発生部位を推定し,消化管通過時間,細菌の異常増殖を診断することができる.発酵生成物が腹部症状を惹起する場合もあり,消化管での発酵の程度を把握することは重要である.今回,臨床現場における水素・メタンガス測定の実際を述べる.
著者
広津 崇亮
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.191-199, 2015-05-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
48

微量のにおい物質の検知には,従来は物理・化学的手法が用いられてきたが,感度,選択性を追求すると大型化,高コスト化を招く問題があった.そこで近年注目されているのが,生物の嗅覚の高感度性,高選択性を生かしたバイオセンサである.その中には,生物の嗅覚機構を模倣するセンサ,生物の機構や設計思想を活用するセンサが含まれるが,本稿では生物そのものを利用するセンサについて紹介する.最近線虫C. elegansががんのにおいを高精度に識別できることが発見された.線虫嗅覚を用いたがん診断技術(n-nose)は,高感度,低コスト,非侵襲性,簡便,早期がんを発見できるなど,これまでのがん検査システムを変える可能性を秘めている.
著者
後藤 奈美
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.390-396, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

ワインには非常に多くの種類がある.多彩なワインの特徴を消費者に伝えたり,専門家が品質を評価したりするには,様々な評価用語が使用される.有名なワインのアロマホイールは,ワインの香りを認識し,表現するための標準的な用語を提供することを目的としている.一方,品質評価用語では,その原因を示す用語が多いことが特徴と言える.ワインの香りは,原料ブドウ,発酵,貯蔵・熟成など,種々の要因の影響を受ける.ワインの香りにはまだ解明されていない点が多くあるが,これまでに明らかにされている成分についても紹介する.
著者
大野 敦子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.344-350, 2014-09-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
5

紅茶の特徴は香り・味・水色の3つの要素から成る.その多彩な特徴の捉え方や伝え方は人によって様々であり,特に香りや味を言葉で表現し,多くの人に伝えることは非常に難しい.よって,紅茶の複雑であいまいな特徴を,製品開発や品質検査においても的確に評価するために,紅茶の特徴を明確に表す評価用語を作成した.また,日本の消費者に紅茶の特徴をわかりやすく伝えるためのツールとして有用である.我々は,紅茶の香り・味・水色の特徴について,より多くの人と共有し,伝達するためのコミュニケーションツールとしての紅茶キャラクターホイールを作成し,その効果を示した.また,紅茶キャラクターホイールに基づいて紅茶の特徴を可視化した.
著者
砂田 香矢乃 橋本 和仁 宮内 雅浩
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.174-183, 2013-05-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
13

紫外光しか吸収しない酸化チタンをベースに,その表面に銅イオンや鉄イオンからなるアモルファス状のクラスター助触媒を担持することで,室内光下でも十分な光触媒活性を発揮する新規な可視光応答型光触媒材料を創製した.それらの材料は,可視光下で空気浄化や抗菌・抗ウイルス,セルフクリーニングなど多機能な性能を示した.抗菌・抗ウイルス効果を中心に病院や空港で製品に近い材料で実証試験を行うなど,光触媒製品のマーケット拡大をめざした取組みについても紹介する.
著者
小川 治雄
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.330-339, 2015-09-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

日本酒の香りや旨みについて概説した.多種の日本酒,すなわち精米歩合や酵母種,醸造法,醸成期間などの醸造工程の異なるタイプの日本酒が対象となった.日本酒の成分と日本酒の持つ特有の香りや旨味の特徴との関わりをまとめた.酸度やアルコール類,カルボニル類,エステル類,アミノ酸,フルフラールの定量値などにより,それぞれのタイプの香味を伴った日本酒が特徴づけられた.アルコール成分と健康についても触れた.試飲からも日本酒の成分とその特徴が確認された.
著者
宇都宮 仁
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.352-360, 2007-09-25 (Released:2008-09-19)
参考文献数
23
被引用文献数
4 2

官能評価は,清酒の研究や製品分析に不可欠である.最初に,これまで行われてきた清酒の官能評価の歴史とその問題点について紹介する.最近,筆者らは,記述的試験法のために,用語,標準見本とフレーバホイールで構成される評価用語体系を作成した.この評価用語体系中のにおい・かおりに関する用語とその由来について説明する.また,専門家と専門家以外を比較するため,標準見本18種類と3種類の製品を利用して一般パネルによる清酒のかおりの表現,類別,嗜好について調査を行い,一般パネルによる清酒のかおり構造を作成した.
著者
長谷川 登志夫
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.133-140, 2013-03-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
10
被引用文献数
2

お香は,日本の伝統的な香りの文化である.白檀などの様々な香気素材がお香の香りのもととして使われている.これらの素材は,他には代え難い特徴的な香気を有している.これらの素材の香気についての多くの研究によって多数の構成成分が報告されている.しかし,それらの香気特性はほとんど解明されていない.次のような新規のアプローチによって,それらの香気特性について検討した.(1)香気素材の抽出方法の違いによる香気の違いを利用した解析.(2)素材の香気成分をいくつかの香気の特徴の異なる成分群にわけて解析.(3)素材の香気の経時変化の解析.
著者
岸本 徹
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.13-20, 2013-01-15 (Released:2017-10-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

ビールの製造工程,および製造後の酸化によってビール中に生成するオフフレーバーについて解説した.ビールのオフフレーバーには原料,水に由来するもの,仕込工程,発酵工程中に生成してくるもの,缶やビンに詰めた後の保存後に生成してくる酸化劣化臭がある.それらの中にはSH基をもつ低閾値化合物のように,ビール中にng/L程度しか含まれない微量成分もあるが,近年では分析機器が発達し,定量することも可能となった.ビールのオフレーバーとして過去から近年,着目されている化合物について述べた.
著者
直田 信一
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.392-398, 2008-11-25 (Released:2010-10-13)
参考文献数
4
被引用文献数
2

活性炭吸着装置は,有機溶剤の臭気対策や回収装置として,多くの分野での実績がある.しかし,活性炭の吸着できる量は有限であるため,頻繁に交換しなければならないという問題がある.これらの問題を解決するため,活性炭の交換が容易にできる方法や活性炭を再生—再利用(リサイクル)するシステムを構築することで,極めて簡便でCO2を殆ど発生しないVOCの処理装置を実現することができる.
著者
鈴木 隆
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.346-356, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
15

においを表す語彙の少なさについてはよく知られている.しかし,香料開発の現場を始めとして,かおりやにおいの分類や表現にさまざまなことばが使われているのも事実である.本稿ではそうしたことばが使われる場面や目的を,同定,記憶,描写,評価に分けて考察し,分類用語を含めた言語表現の具体的な機能について考察する.また,共感覚表現やオノマトペが多用される意義や,評価において特徴的に見られる,ネガティブ要素の探索という行為が,においのことばを生成するのみならず,嗅覚感度に影響を与える可能性を検討する.
著者
柏柳 誠 長田 和実 宮園 貞治
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.112-118, 2016-03-25 (Released:2020-09-01)
参考文献数
21

ニホンオオカミが絶滅してから,100年以上が経過している.最後にニホンオオカミが目撃された場所は,紀伊半島であった.その後,福岡で目撃情報があったが,群れをつくるオオカミが単独で行動することが考えられないために野犬ではないかと結論づけられた.本小論は,絶滅以来100年を経過しているためにオオカミに対する怖さを体験していないエゾシカがオオカミ尿由来物質(P-mix)を忌避するとともに恐怖関連行動を示した研究成果を中心に紹介する.
著者
駒井 三千夫 井上 貴詞 長田 和実
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.408-416, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
31
被引用文献数
2 3

三叉神経は,顔面の主要な感覚神経である.本稿では,この神経を介した刺激性物質の感覚受容について述べる.三叉神経受容といえばトウガラシなどの辛味成分のカプサイシン,冷線維刺激性のメントール,炭酸飲料の炭酸ガスなどがイメージされるが,ここでは3人の筆者がそれぞれ得意とする「三叉神経による溶存炭酸ガスの受容・伝達機構」(見出2 : 駒井),「香辛料・ハーブ類などに含まれる刺激物質の受容に関わるTRP(transient receptor potential)チャネル」(見出3 : 井上),「化学感覚と体性感覚の相互作用」(見出4 : 長田)について順に概説した.すなわち,(1)炭酸飲料中の炭酸ガスがどのようなしくみで受容されてシュワシュワ・チクチク感を感じるのかを解説し,(2)食品にさまざまな風味を付与する香辛料,ハーブ類の外因性化学物質による体性感覚発現への関与が示唆される受容機構のうち,最近解明されてきたTRPスーパーファミリーに属する4種の受容体を活性化する物質群を紹介し,(3)最後に,三叉神経刺激物質と味覚・嗅覚への影響が我々の生活で最も関心がもたれているので,味覚・嗅覚の神経伝達と三叉神経刺激の関連性について解説した.