著者
瓜田 純久 杉本 元信 三木 一正
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.99-104, 2006 (Released:2006-10-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

現代の医療では非侵襲的に多くの情報を得ることが求められている.採血さえも不要な呼気試験は,検査方法を工夫すると,多くの消化管情報を得ることができるが,その中心は水素・メタンガスの測定である.空腹時の呼気中水素は消化管発酵反応の指標と考えられているが,その再現性は低く,解釈は難しい.そこで,試験食を負荷して呼気中水素・メタンガスの経時的な変化から病態を評価する方法が一般的である.非吸収型の炭水化物,食物繊維などは小腸で吸収されず,大部分が大腸へ到達し,腸内細菌の発酵反応で分解される.この際発生する水素・メタンガスの時間,量からガス発生部位を推定し,消化管通過時間,細菌の異常増殖を診断することができる.発酵生成物が腹部症状を惹起する場合もあり,消化管での発酵の程度を把握することは重要である.今回,臨床現場における水素・メタンガス測定の実際を述べる.
著者
大野 敦子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.344-350, 2014-09-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
5

紅茶の特徴は香り・味・水色の3つの要素から成る.その多彩な特徴の捉え方や伝え方は人によって様々であり,特に香りや味を言葉で表現し,多くの人に伝えることは非常に難しい.よって,紅茶の複雑であいまいな特徴を,製品開発や品質検査においても的確に評価するために,紅茶の特徴を明確に表す評価用語を作成した.また,日本の消費者に紅茶の特徴をわかりやすく伝えるためのツールとして有用である.我々は,紅茶の香り・味・水色の特徴について,より多くの人と共有し,伝達するためのコミュニケーションツールとしての紅茶キャラクターホイールを作成し,その効果を示した.また,紅茶キャラクターホイールに基づいて紅茶の特徴を可視化した.
著者
岩下 剛
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.413-419, 2011-11-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
6

自動車の走行状態および停車状態で車室内のオゾン,粉塵,超微粒子の濃度を,全外気導入モード,再循環換気モードの 2つの条件で測定した.登坂中のトラックの後方を走行中,車室内粉塵濃度は大きく上昇した.全外気運転中のオゾン濃度I/O比は再循環運転中のI/O比よりも高かった.乗員4名の状態で,車室内CO2濃度を計測したところ,全外気運転では CO2濃度は 600〜800ppmであった.その後,再循環運転を開始すると,CO2濃度は15分で3800ppmに達した.室内空気質の悪化が運転パフォーマンスへ及ぼす影響を検討する必要がある.
著者
溝口 忠 高橋 誠 小野 大介 堀 雅宏 谷口 眞
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.11-17, 2009-01-25
参考文献数
14

賃貸集合住宅で居住者退去後に問題となる前居住者の生活残留臭の除去方法を実験により検討した.処理法としては3種の植物性オイルミスト,グラフト重合高分子塗膜剤処理,オゾン処理を取り上げた.ペット臭・煙草臭・芳香臭を着臭させたペーパータオルについてスクリーニング試験を行い,比較的効果の高い方法を実住宅に適用して評価した.塗膜処理はスクリーニング試験では有効であったが,実住宅では大きな効果は見られなかった.オゾン処理は10ppm 14時間処理で臭気強度4から2に低下することができた.これらの検討を通して残留臭気の除去ついての知見が得られた.
著者
後藤 奈美
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.390-396, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
4

ワインには非常に多くの種類がある.多彩なワインの特徴を消費者に伝えたり,専門家が品質を評価したりするには,様々な評価用語が使用される.有名なワインのアロマホイールは,ワインの香りを認識し,表現するための標準的な用語を提供することを目的としている.一方,品質評価用語では,その原因を示す用語が多いことが特徴と言える.ワインの香りは,原料ブドウ,発酵,貯蔵・熟成など,種々の要因の影響を受ける.ワインの香りにはまだ解明されていない点が多くあるが,これまでに明らかにされている成分についても紹介する.
著者
坂井 信之
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.321-321, 2011

最近,香りの心理効果が注目されている.一つの側面は心理効果の学術的な観点である.香りの効能に関する逸話的な報告はかなり多く,その特異的な側面が強調されてきた.例えば,良い例が嗅覚の記憶にみられる「プルースト効果」と呼ばれるものである.マルセル・プルーストによる『失われた時を求めて』の中に,紅茶に浸したマドレーヌを食べていると,ふと幼い頃の記憶が鮮明によみがえってきたという内容の記述があることから名付けられた.この現象にみられるように,香りから想起されるエピソード記憶のビビット感や時間的距離感の近さなどの特徴は嗅覚に特異的であるとされている.しかしながら,この件に関する学術的な研究は,長い間少数のグループが比較的古い手法で確かめる程度に留まっていた.さらに,嗅覚に関する個人差やあいまいさ(記憶の不確かさ)は顕著であることも加わり,嗅覚の心理効果に関する学術研究は,視覚や聴覚に比べて長い間放置された感があった.<BR>しかし, 2004年にリンダ・バックとリチャード・アクセルが,嗅覚レセプターの遺伝子解析の研究でノーベル賞を授与される前後から,嗅覚に関する学術的知見が飛躍的に蓄積されるようになってきた.ほぼ同時に,ヒトの脳を非侵襲的に計測する技術が進歩し,ヒト独自の嗅覚の情報処理機構についても,学術研究が行われるようになってきた.ここで触れたいくつかのトピックスについては,すでに本学会誌でも特集号の論文として紹介されているので,今回の特集では,嗅覚と視覚とのイメージの統合に関する現象論についてまとめていただいた.<BR>綾部氏は香りと形のイメージの一致,三浦氏と齋藤氏は香りと色の調和について,それぞれご自身の研究を中心にまとめていただいた.いずれの論文も非常に読み応えのある最新知見を紹介されており,これらの論文を読むことにより,ヒトは香りからどのようなイメージを思い浮かべるのかということについて理解が深まり,これからの香りの応用のシーズ (種)となる知見である.<BR>もう一つの観点は,嗅覚の心理効果をビジネスとして展開するというものである.これまでもアロマテラピーや消臭というビジネスがあった.しかしながら,最近注目されている香りのビジネスとは,香りの心理効果を積極的に応用するというものである.阿部氏と高野氏による論文は,香りや化粧がヒトの感情に及ぼす効果について概説したものである.一ノ瀬氏の論文は,シャンプーや男性用デオドラント製品,衣料用柔軟剤などの香りの実例を豊富に挙げながら,香りがヒトの感覚や感性にどのように作用するのかということについてまとめたものである.國枝氏の論文は,香りを積極的に使うことによって,行動障害の子どもや,認知症の高齢者などの症状の改善ができることをご自身の研究に基づいて,まとめていただいたものである.これらの論文は,いずれもすでにビジネス展開されているか,これからビジネス展開されていくものであり,香りビジネスに直結する,いや,これからの日本の香り社会を予想すると言ってもよいほどの基盤技術といえる.<BR>読者の皆様におかれては,今回の特集の学術的なシーズから新しい技術のヒントを得ていただいたり,実際の香りビジネスの実例に触れることで,これからの日本の香り社会のニーズに思いを巡らせていただきたい.これは本特集に執筆していただいた方々の共通の思いである.
著者
白田 志保 石川 清宏
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-45, 2013-01-15 (Released:2017-10-11)
参考文献数
2

食品の味覚とにおいが密接な関係にあることは知られている.しかし,その味覚・においを特徴付けている化学物質を明確にするためには,感覚的な分析手法と化学的な分析手法を組み合わせる必要がある.感覚的な指標をもとにした分析手法としては,におい識別センサーや味覚センサーなどが使用されているが,それらでは味覚・においを特徴付けている化学物質を特定することはできない.一方で,アミノ酸分析機や質量分析計を用いる化学分析手法では,化学物質の特定はできるものの,感覚的な指標との関連を議論することは難しい.今回,アミノ酸分析装置とガスクロマトグラフ質量分析計(以下GC-MS) に官能分析の一手法であるスニッフィング機能を組み合わせた,スニッフィング-GC/MSを用いて,数種類の市販チーズをそれぞれ分析することにより,感覚的な指標とその背後にある化学物質の同定を試みた結果,いくつかの知見が得られたので以下に報告する.
著者
中村 典子 城市 篤 寺嶋 有史 田中 良和
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.150-156, 2010-05-25

バラにはdelphinidinという多くの青い花に含まれる色素を合成する能力がなかったため青い品種がなかった.パンジーから得たdelphinidinを合成するために必要な遺伝子をバラで発現させると,delphinidinの含有率が95〜100%になり,花色が青く変化したバラを得ることができた.その中から選抜した系統について生物多様性影響評価をおこない,カルタヘナ法に基づく生産・販売の認可を取得した.アプローズ(花言葉「夢かなう」)として販売中である.アプローズは,香りがよく,その主成分はgeraniolであり,従来のバラの中では交雑で作出された紫色のバラの香りに近い.
著者
石田 裕
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.216-225, 2010-07-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
20

近年,食に関する苦情が多く寄せられている.生活環境の中には多くの化学物質が存在しており,ものによっては環境中から食品へ移染する場合もあり,摂取により安全性が妨げられる場合もある.食品への化学物質の移行に関していくつかの例を示したが,特に気化しやすい物質についてはその挙動を念頭におき,近くに食品を置かないことや,包装の材質を考え透過しない容器に入れておくなどが対応策として重要である.
著者
吉田 和之 磯本 淳貴 今井 秀秋 光田 恵 柏原 誠一 松田 克己
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.126-134, 2008-03-25
被引用文献数
1

一般住宅の臭気対策の基礎データを取得することを目的として,調理で発生した焼肉臭の主成分の分析を行うとともに,カタログ等でにおい低減が表示されている各種市販内装材の臭気低減効果と持続性能の評価を行った研究である.<BR>最初に,GC-におい嗅ぎとGC-MSにより,焼肉臭の主成分がアルデヒド類や硫黄系化合物であることを明らかにした.次に,20Lのステンレス製容器中で市販の珪酸カルシウム系の内装材が焼肉臭気を低減することを明らかにした.<BR>実際の住環境に近い1m<SUP>3</SUP>のボックスを用いて,臭気低減効果を臭気濃度等で評価したところ,焼肉臭が珪酸カルシウムやアルミ珪酸塩系の内装材により低減されることが確認された.また,珪酸カルシウムとアルミ珪酸塩系内装材の効果持続性の相違がデシケーターを用いた促進試験で明らかにされた.
著者
岩橋 尊嗣
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.183-183, 2012

日本では,これからの季節,温度と湿度の高い生活環境を迎える.そして,梅雨どきのジメジメ感は不快指数を一気に押し上げる.においと湿度の関係の定義は未だ確立されていないが,一般的には,湿度が高くなると,においに対しても敏感になりがちである.これは,高湿度によりもたらされる身体的な不快感との相乗効果も考慮する必要がありそうだ.また,高湿度になると空気の循環性が悪くなり,におい物質は滞留し易くなる.このような現象によっても,人はにおいをより強く,不快に感じるようになる.さらにこの時期,気温・湿度の上昇にともない微生物の働きが活発化する.この時に問題になるのがカビ・バクテリア(細菌)によって作りだされるにおい物質である.本特集では,微生物分野の研究で活躍されている専門の方々に,以下に示すテーマについてご執筆いただいた.いずれのテーマも,読者の方々に有益な情報となり興味深く読んでいただける事を確信している.鍵氏(東工大大学院)には「居住空間での微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)について」という題目で執筆していただいた.真菌(カビ)や細菌(バクテリア)などの増殖と代謝過程において様々なMVOCが産生される.ここでは,カビによって作られるMVOC に特化しての記述である.主たるMVOCはアルコール類,ケトン類,アルデヒド類,スルフィド類,低級脂肪酸類,テルペン類,フェノール類等で,これら多種の物質が複合されて,カビ臭が形成されるようだ.通常,ジェオスミン,2-メチルイソボルネオール類がカビ臭の典型とされるが,室内空間のカビ臭は単純ではなく複合臭である事が解る.柳氏(工学院大)には「空調システム内微生物の汚染とカビ臭の対策」という題目で執筆していただいた.空調システム(エアコン)内は,微生物(カビ,バクテリア)が容易に増殖できる環境が整っている.特に冷房時は栄養分,温度,湿度,酸素(空気)の条件が揃っており,微生物の増殖が活発化され,それに伴ってにおい物質も産生される.また,空調システムで生起する微生物汚染は,外部から空調系を経由する在郷軍人病(レジオネラ肺炎)と空調系自身が汚染源となる加湿器病に分類される事,調査事例も含め空調システムから分離された微生物,さらに殺菌法についても詳細に述べられている. 丸山氏(帝京大),安部氏(帝京平成大)らには「植物精油の抗真菌・抗炎症効果〜真菌感染症治療への可能性〜」という題目で執筆していただいた.近年,日本でもアロマセラピーや森林浴などという言葉が定着しつつある.趣味・嗜好的な分野と思われがちだが,植物精油の働きの一つとして,抗菌性・抗炎性など医療としての効能が注目されている.精油には既存薬剤にはない優れた皮膚浸透性や揮発性という物理的特性があり,これを生かした活用法が差別化となる.精油は細菌より真菌に対して強い効果を示すとされ本文中では,白癬菌(水虫)およびカンジダ菌に対する精油の有効性(治療効果)について詳細に述べられ,さらに,抗炎症効果についてもそのメカニズムとともに述べられている.最後に,竹内氏(奈良女子大),木内氏(産総研),鈴木氏(奈良女子大)らには「文化財保全のためのカビ臭対策」という題目で執筆していただいた.文化財の保護・保存で最も厄介なことはカビの発生による損傷であるとも言われている.記憶に新しいものとしては,古墳壁画のカビによる破損消滅がある.国宝や国宝級と言われる文化財がカビによって,いとも簡単に壊されていくのには驚かされる.しかしカビが,目に見えるレベルに達すると,既に被害が出ているらしい.著者らはカビによって産生されるにおい物質に着目し,これらをいち早く検出する事で,目視での確認以前の状態でカビ発生を早期確認出来る手法を開発した.本文ではこれらの研究結果について解説されている.最後になったが,本特集を企画するにあたり,ご多忙中にも関わらず執筆をご快諾いただいた著者の方々に,本紙面を借り深く感謝申し上げます.
著者
倉橋 隆
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.81-81, 2010-03-25 (Released:2016-04-01)

1980年代頃からの嗅覚関連分野の研究成果の発展には目覚ましいものがある.生理学・生化学,分子生物学の研究から嗅覚受容器細胞での情報変換機構が次々と解明され,嗅覚の受容システムは視覚の機構や生体内のホルモン受容や神経伝達と類似していることが明らかとなった.それらを基盤として1991年にBuck & Axelが「嗅覚受容体」を発見し,その業績に対して2004年にノーベル生理学・医学賞が授与された.この時期には世界中の多くの研究者が嗅覚に対して多角的なアプローチを行い,受容体の機構のみではなく,「不明瞭であった嗅覚の実体」を総合的に解き明かしたかたちになろう.「香りの創生」と言うと,それ以前にはややもすると芸術的・文学的な意味合いが強い分野であったが,この期間に科学のメスが入ったとも解釈でき,時代の大きなうねりの中で,基礎研究はもちろんのこと,香りにかかわる医学・産業・応用の分野にも少なからぬ影響があったことが多くの事例として挙げられる.例えば,今や医学研究ではヒトの細胞を利用して嗅覚・におい分子評価を行う試みがなされている(小林氏の項を参照されたい).また,創香の産業分野(福井氏の項を参照されたい)でも生体分子への効果からにおい分子のパラメータ(例えば悪臭を消すためのマスキング能など,坂井氏の項,竹内・倉橋の項を参照されたい)を推定できるほどになっているほどである.ところで,ノーベル賞に絡む意味で嗅覚の生体システムを分子的に眺めてみると,実はBuck & Axelらの仕事は一例である.嗅覚の情報変換に関与するG蛋白やcAMPは,生体の様々な臓器に共通するが,それぞれを発見したギルマン,ロッドベル(1994),サザーランド(1971)はノーベル賞の受賞に輝いている.分子の発見のみならず,昨今,嗅細胞でも盛んに利用される研究手法として強力な武器になるパッチクランプ法を開発したネーアー,サックマンは1991年の受賞,Ca感受性色素やケージド化合物を開発したツェンは2008年に受賞と,ノーベル賞クラスの研究にからむ事例が満載のシステムであるともいえよう.不斉合成に野依良治博士のテクニックが利用されていることは多くの人の知るところでもある(福井氏).また1987年に利根川進博士が免疫システムの解明に対してノーベル賞を受賞された際,「多様性」の意味で「免疫の次は嗅覚」に興味があると言われたことも思い出される.嗅覚は,複雑性ゆえに取り扱いが困難な一方で偉大な業績に絡む典型的な一例といえ,基礎研究でも魅力的な対象であるといえよう.今回の企画ではBuck & Axelの受賞5周年をきっかけに,「香りにまつわる様々な分野の一線の方たち」から,「嗅覚分野のノーベル賞受賞・科学的隆盛から刺激され発展していること」を執筆していただくことができた.関連する分野として,1.嗅覚の細胞分子生物学,2.嗅覚の心理物理学・生体計測,3.嗅覚研究の臨床医学応用,4.嗅覚研究の産業応用の4分野と広きにわたり,それぞれの専門家,第一人者の先生方からの御執筆を賜るだけでなく,全体を通して相関し,まとまりある内容としての集約性がみられた.基礎科学的内容では,決して嗅覚というトピックスにとどまることなく各分野の時代の最先端を垣間見ることができる.また,嗅覚に関連する医学・産業分野では分野の盛り上がりとともに基礎的知見を応用する可能性が無限に広がる様子が強く伝わってくる.執筆してくださった先生方に厚く感謝するとともに,読者の方々に嗅覚研究や応用の可能性の糸口がつかめるようであればと期待する.
著者
岸本 徹
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.13-20, 2013-01-15 (Released:2017-10-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

ビールの製造工程,および製造後の酸化によってビール中に生成するオフフレーバーについて解説した.ビールのオフフレーバーには原料,水に由来するもの,仕込工程,発酵工程中に生成してくるもの,缶やビンに詰めた後の保存後に生成してくる酸化劣化臭がある.それらの中にはSH基をもつ低閾値化合物のように,ビール中にng/L程度しか含まれない微量成分もあるが,近年では分析機器が発達し,定量することも可能となった.ビールのオフレーバーとして過去から近年,着目されている化合物について述べた.
著者
村上 栄造 河野 仁志 加藤 真示 水野 成治 野口 正弘 堀 雅宏
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.146-150, 2004
被引用文献数
1

厨房排気臭は、都市部での代表的な悪臭として認識が高まりつつある。そこで、その対策として光触媒技術の適用を検討した。光触媒フィルターには、3次元網目構造をもつセラミックス多孔体にTiO<SUB>2</SUB>微粒子をコーティングし、さらに、その表面には、化学的に安定したナノサイズの銀を担持して用いた。対象とした臭気は、中華料理店からの厨房排気臭とし、その排気臭に寄与している硫化水素の脱臭性能を確認する基礎的な試験を行い、得られた知見から光触媒脱臭装置を作成した。その結果、中華料理店の厨房排気臭に対してナノサイズの銀を担持した光触媒技術が利用できることが明らかになった。