著者
額田 年 椿 恒城
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.119-122, 1964-09-01

(1) 体型的にみた場合海女の中でも大磯人は他の海女群及び非海女よりも比胸囲・比体重がすぐれている。潜水のための上体の発達から筋肉労働者としての体力作業に耐えうる体型であり他の職業婦人とは有意の差をみた。<BR>(2) 体力, 握力は左右が稍平行している。肺活量は他の海女群に比較して大きく, 止息時間と肺活量の相関は低いが潜水作業者として息こらえが長く出来るためには肺活量が大きい方がよく, 血圧は作業直後 (1~2分) にはさしたる変化はしないが30分後には95%が低下した。又, 年令が進むと共に血圧低下の度が大きい。体力的にすぐれた海女は漁獲高も多い。<BR>(3) 障害: 潜水による水圧との関係から30才以上に57.1%の耳鼻咽喉科的疾患がみられ, 聴力は年令と共に難聴者を増し8, 000cycleの高い音がきこえにくくなる。これ海女の職業病と云つてよい。<BR>(4) 疲労: 客難的主観的な検査からは作業後に疲労の徴こうがあらわれているが翌日には解消している所から正常疲労とみた。好酸球数は5.79%の減少率を示したが自覚疲労がなくとも海女の疲労はないとは云えない。毎日の作業であるから「なれ」が出来作業に苦痛は感じないが潜水そのものには疲労をともなつていると思われる。疲労部位は伊豆・志摩海女の作業形式には特色があるため前者は下肢に後者は上肢にその疲労感をみとめた。<BR>以上の事から海女作業は海女自体から云つた場合には苦痛にたえる様な職業とは云えないが海女作業の健康障害については充分に考慮してその改善をはかるべきである。
著者
椿 恒城
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.123-126, 1964-09-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
4

水中での作業であるが身体を冷しても作業後の採暖を行うので月経及び妊娠にはあまり影響がない。又早流産が少くなつたのは保健知織と公衆衛生施策の普及による成果であると思われる。分娩については水泳と云う全身運動が産婦体操の役目をしているように思われる分娩時間も短くしかも大部分が軽産である。産褥期間は21日で他の職業となんら変りはない。出生時の新生児の体重も変りはないが舳倉島海女の平均7.4人の出生数は多産であるが育児に関する関心が薄いと思われるのは50才以上の海女の子供の死亡率が49.1%と半数が死亡している事でもわかることであるがそれも消化不良とか栄養不良症であると云う。海女の年令が若いほど子供の死亡率が減少していると云う事は保健知識と育児知識が行きわたりつつある為とも云える。以上の事から海女業は婦人の生理に対して影響は少ない様に思われる。