著者
榊 信廣
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.613, 2017-05-24

定義 胃粘膜萎縮は一般的に“組織学的な胃固有腺の減少・消失”と定義される.updated Sydney system1)では,“胃粘膜萎縮は腺組織の減少と定義される.萎縮は粘膜の菲薄化を導き,強い粘膜障害を起こすすべての病的状態の基準となる”と記載されている. 日本人に一般的にみられるHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎の結果として発生する萎縮性胃炎の場合は,胃底腺が萎縮・消失する変化だけでなく,腸上皮化生,そして腺窩上皮の過形成を伴い複雑な形態をとるのが一般的である.
著者
山本 雅一 吉田 操 村田 洋子 室井 正彦 小川 利久 門馬 久美子 榊 信廣
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.2723-2727, 1990-12-01
被引用文献数
20

1975年から1989年7月までに経験した421例の食道癌を対象とし, 食道癌症例における重複癌について検討を加えた. 重複癌は51例 (12.1%) で, 同時性26例 (6.2%), 異時性25例 (5.9%) であった. 重複部位の検討では胃癌が25例 (全体の 5.9% ;重複癌の 49%) と多く, 同時性15例, 異時性10例であった. また, 早期胃癌は19例(76%)であった. 次に多い重複部位は, 口腔, 咽頭, 喉頭などの頭頸部領域の16例 (同時性5例, 異時性11例) (ぜんたいの 3.8% ;重複癌の 31%) であり, うち10例 (62.5%) は食道癌診断以前にそれらの癌が診断されていた. 3重複以上の多重複癌は5例 (重複癌の 9.8%) であり, いずれも初癌から5年以上の生存例であった. 食道癌切除後の経過年数との検討では, 術後5年以上7年未満経過症例の重複癌発生率 (23.1%) は, 3年以内の症例の発生率 (1.1%) と比較すると有意に高かった. 近年, 食道癌における重複癌症例は増加しており, 現況を踏まえた日常診療が需要と考えられた.

1 0 0 0 OA 1.内視鏡診断

著者
門馬 久美子 吉田 操 榊 信廣
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.28-35, 2000-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

胃・食道逆流症(gastroesophageal reflux diseases: GERD)とは,食道内酸逆流により引き起こされる病態すべての総称であり,自覚症状あるいは,他覚所見を有するものである.食道粘膜への過剰な刺激は,食道粘膜の炎症性変化を起こすが,有症状者でも内視鏡有所見者は半数程度であり,自覚症状と粘膜所見の間には乖離がある.内視鏡にて観察される食道炎の大半は,上皮の欠損によるびらん・潰瘍性の変化であり,食道・胃接合部から口側へ,連続的あるいは非連続的に広がり,食道・胃接合部に近い下部食道に最も変化が強い.内視鏡所見を分類するには,ロサンゼルス分類,あるいは,食道疾患研究会の新分類案が使用されている.