著者
寺田 恭子 赤井 綾美 小杉 知江 藤崎 亜由子 榊原 志保
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.379-390, 2014-12-25 (Released:2017-08-04)

本研究は,人が本来持ち備えている「主体性」に着目し,家庭での「しつけ」を地域の子育て家庭が共有することを通して,「子どもの主体性を育てる」地域の子育て支援の課題を検討することを目的としている。行動理論に基づき感情を抑制する親支援プログラムを活用しながら地域で「親の主体性」に働きかける「しつけ」に取り組んだところ,受講後の親アンケート調査から親の変化として「子どもの主体受容」「親効力感の向上」「自尊感情の安定」「自己のふり返り」という4つの因子が認められた。地域の子育て家庭が「しつけ」を共有することによって,自己の「しつけ」へのふり返りだけではなく,他の親やスタッフとの相互作用により「親の主体性」が育ち,さらに親と子の相互作用によって「子どもの主体性」が育つ芽が示された。
著者
榊原 志保 三和 真人 南澤 忠儀 八木 忍
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20
被引用文献数
1

【目的】臨床場面における患者様の履物は裸足やバレーシューズ、スリッパと様々見受けられる。しかし、これら履物の違いが臨床場面に及ぼす影響について着目した研究は散見されない。加えてスリッパは高齢者の転倒要因の一つとして挙げられているが、実際に力学的変化を研究したものは少ない。本研究はステップ昇降における裸足、バレーシューズ、スリッパの力学的変化を解析することによって、スリッパによる力学的特性と転倒要因との関係を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】対象は本研究の目的に同意の得られた健常女性12名(平均21歳)である。動作課題は、裸足、バレーシューズ、スリッパの3条件における高さ20cmのステップ昇降とし、それぞれ3回ずつ測定した。また動作を一定にするため、メトロノームに合わせて課題を行った。動作解析は三次元動作解析装置と床反力計を用い、関節角度、関節モーメント、第5中足骨床間距離を測定した。赤外線反射マーカーは臨床歩行分析研究会が推奨する10点に貼付した。尚、第5中足骨マーカーはバレーシューズの場合はシューズの上から、スリッパの場合は第5中足骨周囲を切り取り皮膚に貼付した。課題は二足継ぎ足昇降とし、右脚、左脚の順に行った。統計処理はそれぞれ3回のデータの平均値を求め、一元配置反復測定による分散分析を行った。差の検定は多重比較を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】スリッパの昇段では、右脚は踵離床時の足関節底屈角度(7.4°)が裸足に比べ有意に減少し、最大toe clearance(30.6cm)が裸足に比べ有意に減少した。スリッパの降段では、右脚は床接地時の股関節伸展モーメント(0.2Nm/kg)が裸足、バレーシューズに比べ有意に増加した。同様に足関節背屈角度(10.5°)が2つに比べて有意に減少した。上段左脚支持相の足関節背屈角度(13.6°)と足関節底屈モーメント(1.1Nm/kg)が有意に減少した。<BR>【考察及びまとめ】スリッパによる昇段において右脚の最大toe clearanceが減少したことから、スリッパはつまずき易いことが考えられた。また最大toe clearance時の重心は前方移動するため不安定となり、より転倒しやすいと考えられた。更に踵離床時の足関節底屈角度が減少したことから、スリッパは脱げ易く足先で持ち上げて離床しなければならないと考えられた。しかし各関節モーメントに有意な差は見られず、筋力の差を言及することはできなかった。一方ステップ降段における右脚の接地時に足関節を背屈、膝関節を屈曲することにより衝撃を吸収しているが、スリッパによる降段において足関節背屈角度が減少し、衝撃吸収の役割を果たしていないと考えられた。その代償として股関節伸展モーメントが増加し、衝撃を吸収していると考えられた。上段左脚支持相で足関節背屈角度、足関節底屈モーメントが減少していることから、スリッパは降段制動力を減少させると考えられた。