著者
藤崎 亜由子 麻生 武 飯島 貴子 島内 武 亀山 秀郎 藤崎 憲治
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、虫と出会うことの教育的意義を深く探求し、「園庭の虫あそび図鑑」の作成や「保育者養成教材の開発」という実践的成果へと結実させることを目的とした。結果、「Web版の園庭の虫遊び図鑑」を作成し、運用を開始した。図鑑には園庭で撮影した300種を超える虫を掲載した。また、関西地区の保育者や学生(保育者養成校)へのアンケート調査の結果も反映させ、生物学的な網羅性ではなく園庭という身近な環境に生息し、親しみやすい虫を優先的に記載した。さらに「虫あそびの教育的意義」について理論的にまとめるとともに、幼稚園での観察調査を通じて子どもたちの虫捕り遊びの中での動きとコミュニケーションを分析した。
著者
藤崎 亜由子 麻生 武
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.91-102, 2022 (Released:2023-02-15)
参考文献数
32

子どもと自然との関わりを育むための基礎的データを集めることを目的に,園庭に生息する15種の身近な虫に対する子どもの認識を調べた。3,4,5歳,計91名の幼稚園児にインタビュー調査を実施した。虫の写真を見せて,名前を知っているか,見たことがあるか,好きか,触れるかを尋ねた。その結果,虫の名前の認識は加齢とともに増加していた。一方で,5歳児になると特に女児は虫を嫌う子が増え,幼児期にはすでに虫への嫌悪感情に男女差が生じることが示された。ダンゴムシ,テントウムシ,チョウなどは名前もよく知られておりかつ好かれていた。クモ,カメムシ,カなどは嫌われていた。最後に虫に対する幼児の認識を5つに類型化して教育的関わりについて議論した。
著者
藤崎 亜由子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.109-121, 2002-08-10 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
2

飼い主がペット動物の「心」をどのように理解しているのかを調べるために,実際のやりとり場面の観察を行った。イヌの飼い主22人,ネコの飼い主19人に自分のペット動物をビデオカメラで撮影してもらい,その中に含まれる飼い主の発話及び行動について分析を行った。併せて質問紙調査も行った。その結果,飼い主は動物の注意を引く為に発話を行うことが最も多く,次いで動物に対して内的状態を尋ねたり,状況を問う等の質問形式の発話が多く見られた。また,動物の内的状態への言及は,イヌ・ネコの飼い主とも「感情状態」が最も多かった。特に,飼い主が動物に内的状態を付与することが多かった場面は,飼い主の働きかけに動物が無反応であったり,回避行動をとる場面であった。イヌ・ネコの飼い主で比較した結果,人はイヌよりもネコに対してより微妙な顔の表情を読みとるなど,動物に対する飼い主の発話及び行動にはいくつかの違いが認められた。しかし,質問紙の回答からは,イヌ・ネコという全く異なる二種の動物に対する飼い主の「心」の理解には違いが無いことが示された。以上の結果は,人のペット動物に対する「心」の読みとり,関わり方には,幼い子どもに対する育児的な関わり方といくつかの共通点があるという視点から議論された。
著者
藤崎 亜由子 廣瀬 聡弥
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.85-94, 2022-03-31

本論では、保育内容の領域「環境」の中で身近な自然(動植物)との関わりに焦点を当て、特に自然と関わる際にその促進要因とも阻害要因ともなる虫に注目した。まず、幼稚園教育要領等に示された「幼児教育において育みたい資質・能力」と領域「環境」の「ねらい」を踏まえて、保育者を目指す学生及び保育者が身に着けてほしい知識、技能及び態度を明らかにした。その上で、虫に注目する意義やその教育的活用の方法について整理し、虫との関わりを通して自然や生命の豊かさを実感し、生物多様性への関心と関わりを醸成する保育を目指し、その担い手となる学生に伝えるべき内容を含んだ実践プログラムを提案した。最後に提案した実践プログラムを授業として実施した上で、受講生からの感想を質的に分析し今後の課題を探った。
著者
藤崎 亜由子 倉田 直美 麻生 武
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.67-77, 2007-04-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
1

近年登場したロボットという新たな存在と我々はどのようにつきあっていくのだろうか。本研究では,子どもたちがロボットをどう理解しているかを調べるために,5〜6歳児(106名)を対象に,2人1組で5分間ロボット犬と遊ぶ課題を行った。あわせて,ロボット犬に対する生命認識と心的機能の付与を調べるためにインタビュー調査を行った。ロボット犬は2種類用意した(AIBOとDOG.COM)。DOG.COMは人間語を話し,AIBOは電子音となめらかな動きを特徴とするロボットである。その結果,幼児は言葉をかけたりなでたりと極めてコミュニカティブにロボット犬に働きかけることが明らかになった。年齢群で比較した結果,6歳児のほうが頻繁にロボット犬に話しかけた。また,AIBOの心的状態に言及した人数も6歳児で多かった。ロボット犬の種類で比較した結果,子どもたちはDOG.COMに対しては言葉で,AIBOに対しては動きのレベルで働きかけるというように,ロボット犬の特性に合わせてコミュニケーションを行っていた。その一方で,ロボット犬の種類によってインタビュー調査の結果に違いは見られなかった。インタビュー調査では5割の子どもたちがロボット犬を「生きている」と答え,質問によっては9割を超える子どもたちがロボット犬に心的機能を付与していた。以上の結果から,動物とも無生物とも異なる新たな存在としてのロボットの可能性を議論した。
著者
寺田 恭子 赤井 綾美 小杉 知江 藤崎 亜由子 榊原 志保
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.379-390, 2014-12-25 (Released:2017-08-04)

本研究は,人が本来持ち備えている「主体性」に着目し,家庭での「しつけ」を地域の子育て家庭が共有することを通して,「子どもの主体性を育てる」地域の子育て支援の課題を検討することを目的としている。行動理論に基づき感情を抑制する親支援プログラムを活用しながら地域で「親の主体性」に働きかける「しつけ」に取り組んだところ,受講後の親アンケート調査から親の変化として「子どもの主体受容」「親効力感の向上」「自尊感情の安定」「自己のふり返り」という4つの因子が認められた。地域の子育て家庭が「しつけ」を共有することによって,自己の「しつけ」へのふり返りだけではなく,他の親やスタッフとの相互作用により「親の主体性」が育ち,さらに親と子の相互作用によって「子どもの主体性」が育つ芽が示された。
著者
藤崎 亜由子 倉田 直美 麻生 武
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.67-77, 2007
被引用文献数
3

近年登場したロボットという新たな存在と我々はどのようにつきあっていくのだろうか。本研究では,子どもたちがロボットをどう理解しているかを調べるために,5〜6歳児(106名)を対象に,2人1組で5分間ロボット犬と遊ぶ課題を行った。あわせて,ロボット犬に対する生命認識と心的機能の付与を調べるためにインタビュー調査を行った。ロボット犬は2種類用意した(AIBOとDOG.COM)。DOG.COMは人間語を話し,AIBOは電子音となめらかな動きを特徴とするロボットである。その結果,幼児は言葉をかけたりなでたりと極めてコミュニカティブにロボット犬に働きかけることが明らかになった。年齢群で比較した結果,6歳児のほうが頻繁にロボット犬に話しかけた。また,AIBOの心的状態に言及した人数も6歳児で多かった。ロボット犬の種類で比較した結果,子どもたちはDOG.COMに対しては言葉で,AIBOに対しては動きのレベルで働きかけるというように,ロボット犬の特性に合わせてコミュニケーションを行っていた。その一方で,ロボット犬の種類によってインタビュー調査の結果に違いは見られなかった。インタビュー調査では5割の子どもたちがロボット犬を「生きている」と答え,質問によっては9割を超える子どもたちがロボット犬に心的機能を付与していた。以上の結果から,動物とも無生物とも異なる新たな存在としてのロボットの可能性を議論した。
著者
藤崎 亜由子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.109-121, 2002-08-10
被引用文献数
4

飼い主がペット動物の「心」をどのように理解しているのかを調べるために,実際のやりとり場面の観察を行った。イヌの飼い主22人,ネコの飼い主19人に自分のペット動物をビデオカメラで撮影してもらい,その中に含まれる飼い主の発話及び行動について分析を行った。併せて質問紙調査も行った。その結果,飼い主は動物の注意を引く為に発話を行うことが最も多く,次いで動物に対して内的状態を尋ねたり,状況を問う等の質問形式の発話が多く見られた。また,動物の内的状態への言及は,イヌ・ネコの飼い主とも「感情状態」が最も多かった。特に,飼い主が動物に内的状態を付与することが多かった場面は,飼い主の働きかけに動物が無反応であったり,回避行動をとる場面であった。イヌ・ネコの飼い主で比較した結果,人はイヌよりもネコに対してより微妙な顔の表情を読みとるなど,動物に対する飼い主の発話及び行動にはいくつかの違いが認められた。しかし,質問紙の回答からは,イヌ・ネコという全く異なる二種の動物に対する飼い主の「心」の理解には違いが無いことが示された。以上の結果は,人のペット動物に対する「心」の読みとり,関わり方には,幼い子どもに対する育児的な関わり方といくつかの共通点があるという視点から議論された。