著者
青野 智之 樋口 啓介 大平 孝 小宮山 牧兒 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1801-1812, 2005-09-01
被引用文献数
24

電波の送受信場所が異なると電波伝搬路特性の相関は急速に減少する.一方, 通信可能な2局間では電波伝搬の相反性が成立するため, 伝搬路特性の変化情報を利用することで, 受信場所が異なる第三者が盗聴困難な秘密鍵の生成・共有が可能となり, 鍵管理・鍵配送の必要のない秘密鍵生成・共有方式を実現できる.また, 民生品向け可変指向性アンテナとして開発中のエスパ(ESPAR : Electronically Steerable Parasitic Array Radiator)アンテナは, 可変容量素子であるバラクタダイオードを用いて指向性制御が可能であるため, 意図的に電波伝搬路特性を大きく変動させることが可能である.本論文では, エスパアンテナによる電波伝搬路特性の変動を利用した無線秘密鍵共有システムの試作に成功したので報告する.更に, 試作システムを用いた検証実験にて, 例えば128ビットの秘密鍵を3秒周期で変更するシステムの場合の鍵生成成功確率が99.998%以上となること, 及び盗聴局との相関特性から, 盗聴局が秘密鍵の解読に要する時間が, 7.19×10^4年以上かかる見積りとなることを確認した.