著者
大平 孝 飯草 恭一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.12-31, 2004-01-01
被引用文献数
136

電子走査導波器アレーアンテナは1本の給電放射素子とその近傍空間に配置されたパラサイト放射` 素子から構成される. 放射素子間の空間電磁界結合によりビームが形成され, パラサイト素子に装荷だれか可変 容量デバイス(バラグタ)により指向性を電子的に制御する. 通常のアクティブフェーズドアレーアンテナと異 なり, システム構成に必要な送受信機が1系統なので低消費電力かつ低コストでの適応ビーム形成が期待できる. 逆に, 信号を観測でぎる出力ポートが1系統であること, ウェイトが直接制御量ではなくリアクダを介して間接 的に制御すること, 素子間結合並びに放射素子とリアクタデバイスが一体化していることのため従来構築されて きた線形適応アレー理論がそのままでは通用しないという技術課題がある. 、本論文ではこのアンテナの構造, 動 作原理, 定式化, 測定法, 制御方式, 並びに信号処理への応用技術を提示する. アンテナの高周波的振舞いを模 擬する数学モデル, 特性の定式化に用いる等価ウェ不トベクトル, バラクタ繰込みアドミタンス行列, 実効素子 長, 等価ステアリングベクトルの手法, バラクタの容量可変範囲を等価的に拡大する方法並びに非線形ひずみを 相殺するリアタタンス回路, 放射素子の極近傍界を測定し指向性並びにバラクタをキャリブレートする方法, 電 波環境に適応して自律的に指向性を制御するための学習的規範及びブラインド規範並びにリアクタンス最適化ア ルゴリ・ズム, リアクタンスドメイン信号処理の概念とこれを用いた電波到来方向推定, ダイバーシチ受信, 空間 相関について述べる.
著者
長谷川 拓 成田 譲二 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.61, pp.13-18, 2008-05-22
被引用文献数
5

無線通信におけるセキュリティ技術として,エスパアンテナを用いた秘密鍵共有方式が提案されている.本稿では,雑音耐性・盗聴耐性を同時に評価するための指標であるImacを定式化し,Imacの高くなるリアクタンスセットを探索する.計算機シミュレーションの結果,無作為にリアクタンスを選んだ場合の平均と比較してImacが約30%高くなるリアクタンスセットを発見した.さらに,従来方式の片側端末のみ7素子エスパアンテナを用いた方式と,提案する両端末に3素子エスパアンテナを用いた方式との性能比較を行った.従来方式では盗聴局が正規局の1/4波長(約3cm)内に近づいた際にImacが急激に低下するが,本提案方式では盗聴局が正規局に近づいてもImacが低下しないことを確認した.
著者
高 博昭 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.131, pp.1-6, 2009-07-09

センサネットワークでは,ネットワーク全体での消費電力削減が重要な課題の一つである.本研究では,ノードのデータを冗長なく表現するために最低限必要な情報量を表す集約モデルを定義し,それに基づいたセンサノードのスケジューリング法を提案する.そして,このスケジューリング法をCLARISに適用する.スケジューリング法を適応されたCLARISは相関性指標クラスタリングと集約モデルに基づいたノードスケジューリングにより消費電力削減を図る.シミュレーション結果からCLARISは従来方式であるLEACHとCLARAよりも優れた消費電力特性を実現していることを示した.
著者
本多 亮也 阿部 晋士 大平 孝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.1, pp.20-29, 2023-01-01

入力電力が異なる二つの高周波整流回路の合成動作において片方の高周波整流回路が動作しなくなるカットオフ現象について定量的に考察する.合成動作を解析する準備として,単体動作において高周波整流回路がカットオフする条件を導出する.カットオフ条件となる特定の出力電圧と流通角の値を導出する.この二つの特定の値を用いて,合成動作におけるカットオフ現象の理論解析を行う.結果,入力電力が小さい方の高周波整流回路がカットオフする入力電力比を発見し,定式化した.カットオフが起きる入力電力比は,入力電力が小さい方の高周波整流回路に関係なく,入力電力が大きい方の流通角のみで決まることを発見した.導出した理論を数値解析(ハーモニックバランスシミュレーション)と実機実験(6.78 MHz, 100 W)の両方で検証し,理論とよく一致していることを示した.
著者
大平 孝
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.15-22, 2021 (Released:2021-06-01)
参考文献数
25

ワイヤレス給電システムの一般的ブロック構成を示し,各ブロックの設計開発に役立つ基本理論を紹介する.結合系の最大電力伝送効率を支配するkQ 理論を述べる.一般化kQ 式を用いることで,電界や磁界など様々な結合方式の設計が可能になる.インピーダンスと反射率の関係を直感的に捉えることができる複素数平面を示す.この平面上でインピーダンスを頂点とする三角形の二辺の長さの比が反射率である.反射率と定在波比の関係を視覚的に捉えるための教材として考案されたゴムひもモデルを示す.このゴムひもモデルを使えば,数式も電卓も用いることなく,計算尺のような感覚で定在波比の振舞いを習得できる.結合系において,入力ポートと出力ポート両方で同時に整合をとることの重要性を述べる.電圧定在波比を二乗した電力定在波比の導入で,従来のスミス図表の中心付近が拡大される.インピーダンス平面上の2 点間を結ぶ曲線の長さを回路設計規範とするという考え方を述べる.高周波インバータを高効率で動作させるための負荷条件は複素数平面上で測地線となる.ダイオード整流回路で電源と負荷の抵抗比が流通角と電力変換効率を決定する.ここで述べた高周波回路理論は今後多彩なワイヤレス給電系の開発に大きく貢献する.
著者
韓 青 稲垣 恵三 飯草 恭一 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.50, pp.39-46, 2001-05-11
被引用文献数
10

エスパアンテナの極近傍界を測定するために必要な電波暗箱の最小寸法を見極めた。まず、シグナルフローグラフおよびアンテナの近傍に使うため光路差を考慮したレーダ方程式を用いたモデルを考案して、反射係数の理論式を導出した。次に、幾つかの電波吸収体について,エスパァンテナのReturn Lossを測定した。理論的及び実験的に厚いピラミッド型の吸収体を利用した場合はアンテナの極近傍に置いても吸収体からの反射量は低く抑えられており、アンテナと吸収体を1λまで近づけられることが分かった。さらに、導出した理論結果に基づいて小型暗箱を設計し、厚いピラミッド型の電波吸収体を使って、小型電波暗箱を試作した。最後に、試作した暗箱を検証した。約100MHzの帯域幅に約-40dBの反射係数が得られた。
著者
高 博昭 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.378, pp.153-158, 2011-01-13

センサネットワークでは,センサノードの消費電力削減が重要な研究課題のひとつである.省電力化を実現するひとつのアプローチとして,クラスタリングや送信データサイズを削減するデータ集約が挙げられる.しかし,既存研究では具体的な集約のアルゴリズムについては未考慮,計算能力に制限のあるセンサノードでは実現が困難,完全集約を想定しているなどの問題点が挙げられる.本稿では様々な実環境のデータに対し情報理論的解析を施し,センサノードの増加に伴うエントロピー増加率とノード数の関係を示す集約モデルの導出を行う.これにより,集約として情報源符号化を想定したときの集約効果についての定式化を行う.次に集約モデルに基づくクラスタリングを想定した間欠送信手法を提案する.これは各クラスタ内の集約モデルとノード数の関係から,しきい値に基づきクラスタメンバのデータ送信を確率的に行うことで送信回数を削減し,省電力化を図る手法である.間欠送信手法を既存クラスタリング手法であるLEACHやCLARAに適用した場合についてシミュレーションを行った結果,間欠送信なしの場合と比較してLEACHの場合で最大59%,CLARAの場合で最大29%の送信回数削減を実現した.
著者
小松崎 彰 斎藤 茂 行田 弘一 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.381-390, 2002-03-01
参考文献数
14
被引用文献数
20

エスパアンテナは,装荷された可変リアクタのリアクタンスを変化させることで指向性を制御できるアレーアンテナである.このリアクタンス最適化に対して,ハミルトン力学に基礎をおく高次元アルゴリズムを適用する.この手法は,未知変数(リアクタンス)を質点座標に対応させ,コスト関数をポテンシャルエネルギーに対応させた等価的な力学系を考え,質点の軌跡を追跡することによって最適解を求める手法である.コスト関数の局所的形状を用いず,質点が解領域へ移動しやすくなるという自律的運動の性質を利用するため,局所解にとらわれないという特徴をもつ.指定した方位角の利得を最大にするという目的を設定し,4変数(5素子)及び8変数(9素子)の計算例を示す.従来のモンテカルロ法のようなランダム探索と比較して,4変数においては同等の最大利得9.1dBi±0.5dBが得られる最適リアクタンスを1/5の更新回数で見つけることができ,8変数においては0.2dB高い最大利得10.5dBi土0.2dBが得られる最適リアクタンスを1/10の更新回数で見つけることができる.リアクタンス更新1回に要する計算時間はどちらの方法でも電磁界計算1回の計算時間と同等であるため,速さの比較においても4変数において5倍,8変数において10倍である.
著者
橋本 典征 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク : IEICE technical report (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.131, pp.13-18, 2009-07-09
被引用文献数
2 1

無線センサネットワークにおけるMAC層では消費電力削減のために効率的にスリープを行うプロトコルが提案されている.その中でも非同期型MACプロトコルはアクティブ状態の同期を必要としないため,同期型に比べてスケーラビリティは優れており,近年盛んに研究が行われている.しかし一方で,スリープの同期を取らないことから,宛先ノードがアクティブ状態に遷移するまでプリアンブルを送信し続けなければならない.それにより,遅延時間および消費電力が増加するという問題を抱えている.そこで本稿では,通信手順の中にアクティブ状態に遷移するまでの時間情報を付加することによって非同期状態から擬似的にリッスン状態のタイミングの同期を取る擬似同期MACプロトコルを提案する.これにより,送信ノードは宛先ノードがアクティブ状態に遷移するときに送信開始できる.実機実験により,提案方式はX-MACに比べ,デューティサイクルを約76%,遅延時間を約44%削減できることを示す.
著者
徳満 恒雄 大平 孝 原田 博司 柏 卓夫 丹冶 康紀 大和田 哲 大橋 洋二 北澤 敏秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波
巻号頁・発行日
vol.98, no.603, pp.123-132, 1999-02-17

1998年の欧州マイクロ波会議の概要について報告する. 本会議は28回目を数え, 10月5日から9日までオランダのアムステルダムで開催された. 今回より, 従来のEuropean Microwave Conferenceを核とし, GAASとMTT-S European Wirelessなる会議を合体して, European Microwave Weekとして開催された. 論文数は430件であった. 本報告では, これらの発表を衛星搭載機器, ワイヤレス通信, MMIC, ミリ波デバイス, 能動・受動フィルタ, パッケージおよび実装,電磁界理論に分けて, それぞれの概要と興味深い論文の紹介を行う.
著者
ヘッティアーラッチ ランガ 横山 光雄 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.394, pp.25-30, 2009-01-15

著者らはこれまでに,DS-CDMA通信方式用の干渉除去システムを提案し、シングルパスフェージング通信路での特性評価を行ってきた.この方式ではPN系列のCycle-and-Add特性に基づいて他局からの干渉信号を除去する新しいアルゴリズムを提案している.また,送信機側で電力制御方式を採用せず遠近問題が解決されていることも確認している.本稿では,マルチパスレイリーフェージング環境下での特性評価を行う.また,マルチパス環境で問題となるシンボル間干渉(ISI)の影響を抑制するためにガードインターバル(GI)挿入方式を導入しシステムの性能改善を目的とする.提案技術の適用分野として,緩やかなフェージング変動を受ける無線LAN,衛星通信,無線センサーネットワークなどの通信回線の実現に貢献できることが考えられる.
著者
古樋 知重 橋口 正哉 大平 孝 浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.219-225, 2003-02-01
被引用文献数
20

雪山などにおける遭難救助のための探索システムとして,腕時計型の小型電波発信機(マイクロ波ビーコン),及びエスパアンテナを利用した電波到来方向探知機の試作及び検証を行った。本システムはマイクロ波帯の利用により従来システムに比較して探索の位置精度(分解能)を大きく向上させた.更に,直接拡散型スペクトラム拡散方式(DS-SS)により耐干渉性を向上させたうえ,短パルスでも方向探知が可能なように方向探知機のアルゴリズムを改造することにより,マイクロ波ビーコンの電池寿命を大幅に延ばした.積雪地での実験により見通しで最大600m,マイクロ波ビーコンを湿った雪の下1mに埋めたときには30m離れた地点からの探知が可能であることを確認した.
著者
長谷川 拓 成田 譲二 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.391, pp.161-166, 2009-01-15

無線通信における情報量的安全性に基づく鍵共有方法として,エスパアンテナを用いた秘密鍵共有方式が提案されている.本稿では,秘匿条件付相互情報量Imacを高めるための方法として,指向性セット候補用意法及び雑音環境により使用する指向性セットを切り替える適応選択法を提案する.鍵長を16bitとする計算機シミュレーションの結果,無作為に指向性セットを選んだ場合の平均と比較して以下を確認した.(1)指向性セット候補用意法によりImac=0.5となる送信電力を5.7dB低く抑えられる.(2)指向性セット適応選択法により同じく7.1dB低く抑えられる.
著者
長谷川 拓 成田 譲二 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIP, 信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.390, pp.161-166, 2009-01-15

無線通信における情報量的安全性に基づく鍵共有方法として,エスパアンテナを用いた秘密鍵共有方式が提案されている.本稿では,秘匿条件付相互情報量Imacを高めるための方法として,指向性セット候補用意法及び雑音環境により使用する指向性セットを切り替える適応選択法を提案する.鍵長を16bitとする計算機シミュレーションの結果,無作為に指向性セットを選んだ場合の平均と比較して以下を確認した.(1)指向性セット候補用意法によりImac=0.5となる送信電力を5.7dB低く抑えられる.(2)指向性セット適応選択法により同じく7.1dB低く抑えられる.
著者
平田 明史 タユフェール エディ 青野 智之 山田 寛喜 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.63, pp.59-64, 2003-05-15
被引用文献数
6

エスパアンテナは円形配列アレーアンテナであるが,中央に給電素子を有しているため菱形のサブアレーを3対取り出せる構成となっている.そこで本報告ではリアクタンスドメインMUSIC法に3組の空間平均を適用して,コヒーレント波の到来方向推定を行う方法を提案する.特定の方向への平行移動による空間平均では,その到来角推定精度が到来角度に依存するために3組のMUSICスペクトラムを合成した形で空間平均後のスペクトラムを定義する.電波暗室内での実験結果から,到来角度差が角度分解能以上の場合には2波を分離し2つのピークを検出できることを示す.角度分解能として到来角度差45°を5割程度の割合で検出できることが分かる.
著者
青野 智之 樋口 啓介 大平 孝 小宮山 牧兒 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1801-1812, 2005-09-01
被引用文献数
24

電波の送受信場所が異なると電波伝搬路特性の相関は急速に減少する.一方, 通信可能な2局間では電波伝搬の相反性が成立するため, 伝搬路特性の変化情報を利用することで, 受信場所が異なる第三者が盗聴困難な秘密鍵の生成・共有が可能となり, 鍵管理・鍵配送の必要のない秘密鍵生成・共有方式を実現できる.また, 民生品向け可変指向性アンテナとして開発中のエスパ(ESPAR : Electronically Steerable Parasitic Array Radiator)アンテナは, 可変容量素子であるバラクタダイオードを用いて指向性制御が可能であるため, 意図的に電波伝搬路特性を大きく変動させることが可能である.本論文では, エスパアンテナによる電波伝搬路特性の変動を利用した無線秘密鍵共有システムの試作に成功したので報告する.更に, 試作システムを用いた検証実験にて, 例えば128ビットの秘密鍵を3秒周期で変更するシステムの場合の鍵生成成功確率が99.998%以上となること, 及び盗聴局との相関特性から, 盗聴局が秘密鍵の解読に要する時間が, 7.19×10^4年以上かかる見積りとなることを確認した.
著者
天野 信之 三浦 周 太郎丸 真 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.622, pp.13-18, 2006-03-01
被引用文献数
3

ミリ波帯を利用したギガビットクラスの超高速無線LANを実用化するために,天井設置型アクセスポイントと端末局で共用可能なセクタ切り替え型スロットアレーアンテナを提案した。伝搬距離に応じて効率的にシステム要求の利得を得るために垂直面内でセカントビームを形成し,通信エリアとして室内全体をカバーするために水平面内でセクタ切り替えを行う方式を採用した。アンテナ全体構造から1セクタのみを抜き出して電磁界解析を行った結果,最大利得11.6dBi,チルト方向θ=-65〜-60°の垂直面セカントビームを形成し,システム要求を満足することができた。また,反射損失特性の要求についてもほぼ満足した。