著者
河野 憲太郎 樋浦 善敬
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.267-270, 1983-07-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

鳥類に対する直腸電気射精法の応用をはかる目的で,さし当り鶏を用いて電極ならびに通電法の検討を試みた。1) 実験動物:単冠白色レグホーン種の雄鶏。2) 電気刺激器:めん山羊用交流電気射精器のスイッチを持続的通電可能に改造して使用。3) 電気射精用直腸探子:直径約8mm,長さ約35mmの中空プラスチック棒に3極環状または2極板状電極を配線し,これにL字型のビニール被覆鋼鉄線の柄をとりつけ,柄と導線を接着して作成した。4) 動物の保定:雄鶏の両脚を輪にした紐で縛り,輪の他端を腰掛けた施術者の片足で踏んで引張り,鶏体の胸部と腿部をその膝に乗せ,頭部を膝の外側方に下げ,尾部を高くして保定した。5) 精液の採取:探子の柄を尾の方に立てて電極部を直腸内に挿入し,電圧40V,電流0mAにセットしてスイッチを入れ,電流を徐々に増し,探子のわずかな移動操作によって強く充血ぼっ起した退化交尾器が突出して来る最小の電流を選んだ。排出される糞や尿は暖めた精液希釈液か生理液を吹きつけて洗い流し,脱脂綿でぬぐい,クロアカの両側を軽く圧迫し,交尾器から流出する精液を試験管で受けた。電流を切って後,探子を直腸から抜いた。6) 成績:13例の測定結果(M±S.D.)一採取精液量(ml)0.47±0.25,精子濃度(億/ml)16.46±4.64,精子活力(CLARK and SHAFFNERの相対値表示法)4.12±0.54。通電中動物はほとんど苦痛の様子をみせず,経験後も本法による精液採取を嫌うようにはみえなかった。7) 本法の問題点は糞尿による汚染で,通電法や探子の移動操作を慎重にすることで軽減することができた。
著者
河野 憲太郎 樋浦 善敬
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.267-270, 1983
被引用文献数
2

鳥類に対する直腸電気射精法の応用をはかる目的で,さし当り鶏を用いて電極ならびに通電法の検討を試みた。<br>1) 実験動物:単冠白色レグホーン種の雄鶏。<br>2) 電気刺激器:めん山羊用交流電気射精器のスイッチを持続的通電可能に改造して使用。<br>3) 電気射精用直腸探子:直径約8mm,長さ約35mmの中空プラスチック棒に3極環状または2極板状電極を配線し,これにL字型のビニール被覆鋼鉄線の柄をとりつけ,柄と導線を接着して作成した。<br>4) 動物の保定:雄鶏の両脚を輪にした紐で縛り,輪の他端を腰掛けた施術者の片足で踏んで引張り,鶏体の胸部と腿部をその膝に乗せ,頭部を膝の外側方に下げ,尾部を高くして保定した。<br>5) 精液の採取:探子の柄を尾の方に立てて電極部を直腸内に挿入し,電圧40V,電流0mAにセットしてスイッチを入れ,電流を徐々に増し,探子のわずかな移動操作によって強く充血ぼっ起した退化交尾器が突出して来る最小の電流を選んだ。排出される糞や尿は暖めた精液希釈液か生理液を吹きつけて洗い流し,脱脂綿でぬぐい,クロアカの両側を軽く圧迫し,交尾器から流出する精液を試験管で受けた。電流を切って後,探子を直腸から抜いた。<br>6) 成績:13例の測定結果(M±S.D.)一採取精液量(ml)0.47±0.25,精子濃度(億/ml)16.46±4.64,精子活力(CLARK and SHAFFNERの相対値表示法)4.12±0.54。通電中動物はほとんど苦痛の様子をみせず,経験後も本法による精液採取を嫌うようにはみえなかった。<br>7) 本法の問題点は糞尿による汚染で,通電法や探子の移動操作を慎重にすることで軽減することができた。
著者
河野 憲太郎 樋浦 善敬 山本 興三郎
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-14, 1971-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

1. 鶏卵の卵黄をLUFT11)の10%アクロレイン0.05Mりん酸緩衝液 (pH 7.4) に5~7日間冷暗所で固定, 3~7μ, 通常5μの凍結切片を作成, スダンIVまたはスダンブラックB-55%アルコール液, 1%ナイルブルーA液, BAKERの酸ヘマティンなどで脂質染色を施し, また切片作成後, HELLY液後固定-アザン染色, ピリジン抽出後 SCHIFF反応 (アクロレイン-SCHIFF 反応) などを行なった。実験鶏に対しあらかじめスダンIVまたはスダンブラックBの飼料中混合給与, または色素のコロイド液の静脈内注射を行ない, 卵黄内に形成される色素の縞によって卵黄球が形成された時期を推定した。色素の縞模様の形から発育中の卵黄内には一種のポテンシャル流を生じるのではないかと考え, 電気的モデル試験を行なった。回路は流体力学で利用されるKOHLRAUSCH橋を用いた。2. 白色卵黄球はラテブラ, ラテブラの頚, パンダー核, および胚盤の周囲の卵黄表層に分布し, 他の部分には黄色卵黄球のみが観察された。ラテブラの中心部から胚盤の隣接部にかけて原始卵黄球が分布し, 胚盤に接近するほど小型化し, 包含物中に空胞を生じ, 遂には小泡の集団のような構造を呈した。3. 白色卵黄球には, 大きな滴状包含物を1個含む3~25μの原始卵黄球から, 多数の微小滴状包含物を含む40μ前後のものまであり, その直径が増加するに伴なって, 包含物は微細化し, かつ数を増す傾向を示した。黄色卵黄球は径30~150μで, 微細な顆粒状包含物を無数に含むが, 部位によっては顆粒がやや粗いものも存在した。両卵黄球の包含物は, その染色性からたんぱく質が主成分で, 少量のりん脂質を含むことを示し, 基質はたんぱく質のほか脂肪の存在を示した。中性脂肪滴は流動的で, その局在が明らかでなかった。両卵黄球間の最大の差は基質のりん脂質の濃慶にあり, 白色卵黄球の基質は酸ヘマティンに対しほとんど陰性か弱陽性であったが, 黄色卵黄球は強陽性を呈した。4. 層状構造はラテブラにおいて常に認められ, 原始的な卵黄球とやや大型の卵黄球とが交互に配列するが, 外層ほど黄色卵黄球の形態に近づく。ラテブラの外側の黄色卵黄球の層では, 少数例を除いて形態や染色性は層状構造を示さなかった。5. 卵黄球間の連続相は原始卵黄球の存在部位でかなり多く, その他の卵黄球の部位ではごく少量であった。その染色性は少量のたんぱく質の存在を示した。6. 卵黄の中層ないし内層のスダン色素の縞模様は, ラテブラの頸の附近で一旦大きく隆起し, 陥凹し, さらにラテブラの頸に沿って小さく隆起する傾向を示した。電気的モデル実験の結果, 高抵抗部に適当な範囲内の抵抗をかけ, その抵抗を絶縁部に接近するほど高めることによって, この模様を近似的に再現し得た。7. 以上の結果を基として, 卵黄球の種類, 成分, 分布, ポテンシャル流の原因などに関し考察を加えた。
著者
樋浦 善敬 河野 憲太郎
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.286-291, 1982-09-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
35

本研究は採卵鶏の産卵開始期における2黄卵の産卵の機序を調査した。供試鶏120羽に脂溶性色素, スダンIII或いはスダンブラックを連日24時間間隔で静脈内注射した。これら鶏から産卵開始後30日間に産卵された正常卵2,914個と2黄卵157個の各卵黄内の色素輪を観察して, 卵巣卵胞の成長と排卵の様相を検討した。2黄卵の内, 約85%は2個の卵黄内の色素輪数が同じく, 残り約15%は両卵黄内の色素輪数が異なっていた。また前者における2個の卵黄の平均重量差は0.28gであり, 後者の場合には両卵黄の重量差は平均1.08gであった。両者の平均値の差は0.1%水準で有意であった。1日に休止期から急速成長相へ転移する卵胞の数は0, 1及び2個の場合があり, それらの出現相対比率はそれぞれ23.6%, 62.9%及び13.5%であった。同日に急速成長相へ転移した2個の卵胞の内, 約27%はほぼ同時に排卵されたが, 残りは互に排卵日を異にした。本実験結果から, 産卵開始期においては急速成長相へ転移する卵胞数, 卵胞の序列制及び卵胞の排卵反応性などがまだ充分に確立されていないことが明らかとなった。従ってこのような状況下で2黄卵もまれに産卵されるものと推察された。