著者
横山 顕 高木 俊和 石井 裕正 村松 太郎 樋田 哲夫 丸山 勝也 加藤 眞三 武井 泉 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.395-402, 1991-05-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
28

自律神経障害と末梢神経障害は糖尿病とアルコール依存症の両者にみられる.アルコール依存症を合併した糖尿病 (DM・AL: n=68) の神経障害を, 糖尿病 (DM: n=50) とアルコール依存症 (AL: n=22) の神経障害と比較した.DM・AL, DM, AL各群のR-R間隔変動係数 (CVRR) は2.37±1.22, 2.80±1.08, 3.36±1.03, CVRR<2.0の頻度は49%, 22%, 9%であり, DM・ALで自律神経障害が高頻度であった.アキレス腱反射の減弱は50%, 32%, 23%, 振動覚の低下は47%, 24%, 9%に認められ, 末梢神経障害の頻度もDM・ALで高かった.糖尿病罹病期間3年以下では, DM・ALはDMに比し, 網膜症の頻度には差がなく, CVRRの低下, 振動覚の低下の頻度は高率であった。DM・ALでは, 脳萎縮ないし痴呆症等の中枢神経障害のある群で自律神経障害が高頻度にみられた.糖尿病とアルコール依存症の合併では, 両者の神経障害が相乗的に作用し, 自律神経障害と末梢神経障害が早期から進行することが示唆された.