著者
横山 顕 大森 泰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1745-1752, 2013 (Released:2013-10-07)
参考文献数
36
被引用文献数
1

飲酒,喫煙,野菜果物不足,やせ,頭頸部癌既往,アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)低活性型とアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)ヘテロ欠損型は,食道癌の危険因子である.多発ヨード不染帯,メラノーシス,MCV増大もリスクを高める.ALDH2欠損でアセトアルデヒドが蓄積し,ADH1B低活性でエタノールへ長時間曝露される.両遺伝子型+飲酒+喫煙で357倍のリスクとなる.ビールコップ1杯で赤くなるか,現在と過去の体質をたずねる簡易フラッシング質問紙法は,精度90%でALDH2欠損を判別し,飲酒・喫煙・食習慣と組み合わせた食道癌リスク検診問診票の高スコア群の癌の頻度は高い.予防の新戦略となる遺伝子解析の普及が望まれる.
著者
横山 顕礼 大楽 尚弘 池谷 伸一 新井谷 睦美 浅野 重之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1205-1212, 2008 (Released:2008-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
1

症例は61歳男性.18歳から統合失調症があり多剤向精神薬を長期常用し,呑気症および難治性便秘をともなっていた.著明な腹部膨満をともなう急性腹症にて当院に搬送されたが治療に反応なく死亡した.剖検にて腸管壊死をともなわない胃を含む全腸管の著明な拡張が認められた.向精神薬,下剤の長期常用,呑気症,統合失調症が関連して2次性偽性腸閉塞をきたし,腹部コンパートメント症候群を発症したものと考えられた.
著者
横山 顕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.9, pp.1518-1525, 2012 (Released:2012-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

飲酒は口腔・咽頭・食道・大腸がんの原因であり,エタノールとアセトアルデヒドに発がん性がある.少量飲酒で赤くなるALDH2欠損型と,多量飲酒の翌日に酒臭いADH1B低活性型は,飲酒家の食道・頭頸部がんリスクを高める.赤くなる体質と飲酒・喫煙・食習慣によるリスク評価は食道がん検診に活用できる.濃い酒の空腹摂取は胃粘膜障害をおこしやすい.ワインはH. pyloriの自然除菌を促進するかもしれない.大酒家や食道がん患者ではH. pylori感染を背景に萎縮性胃炎の進行が速く胃がんも多い.胃切除後の飲酒は急峻な血中濃度上昇を招きアルコール依存症のリスクを高める.飲酒と大腸がんとの関連は日本人で特に強い.
著者
横山 顕子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.251-257, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
16

過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) に対して腸管に焦点を当てた催眠療法 (gut-directed hypnotherapy : GDH) の有効性が欧米などから多く報告されているが, 本報告では, GDHではなく, 単回の年齢退行催眠療法で1年にわたり有効であった男性の下痢型患者の1例を報告する. 症例は49歳, 男性. Rome Ⅳ基準下痢型IBS. 8歳の頃に実母が病死後, IBSを発症. 母親が亡くなる前後の場面を催眠下で想起し, その場面に対する認知の変容を導いたところ, セッション後IBS症状は軽快した. セッション前後の心理検査ではうつと不安の尺度が軽減し生活の質が高まったと評価された. 少ない来院回数を望む患者やGDHに反応しない患者, 幼少時のトラウマの関与が疑われる患者に対しては, 退行療法が治療の選択肢の一つになると考える. なお, 退行療法を行う際には, クライアント自らの気づきを尊重することが重要と考える.
著者
横山 顕 高木 俊和 石井 裕正 村松 太郎 樋田 哲夫 丸山 勝也 加藤 眞三 武井 泉 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.395-402, 1991-05-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
28

自律神経障害と末梢神経障害は糖尿病とアルコール依存症の両者にみられる.アルコール依存症を合併した糖尿病 (DM・AL: n=68) の神経障害を, 糖尿病 (DM: n=50) とアルコール依存症 (AL: n=22) の神経障害と比較した.DM・AL, DM, AL各群のR-R間隔変動係数 (CVRR) は2.37±1.22, 2.80±1.08, 3.36±1.03, CVRR<2.0の頻度は49%, 22%, 9%であり, DM・ALで自律神経障害が高頻度であった.アキレス腱反射の減弱は50%, 32%, 23%, 振動覚の低下は47%, 24%, 9%に認められ, 末梢神経障害の頻度もDM・ALで高かった.糖尿病罹病期間3年以下では, DM・ALはDMに比し, 網膜症の頻度には差がなく, CVRRの低下, 振動覚の低下の頻度は高率であった。DM・ALでは, 脳萎縮ないし痴呆症等の中枢神経障害のある群で自律神経障害が高頻度にみられた.糖尿病とアルコール依存症の合併では, 両者の神経障害が相乗的に作用し, 自律神経障害と末梢神経障害が早期から進行することが示唆された.
著者
横山 顕 大森 泰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1745-1752, 2013-10-05
参考文献数
36

飲酒,喫煙,野菜果物不足,やせ,頭頸部癌既往,アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)低活性型とアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)ヘテロ欠損型は,食道癌の危険因子である.多発ヨード不染帯,メラノーシス,MCV増大もリスクを高める.ALDH2欠損でアセトアルデヒドが蓄積し,ADH1B低活性でエタノールへ長時間曝露される.両遺伝子型+飲酒+喫煙で357倍のリスクとなる.ビールコップ1杯で赤くなるか,現在と過去の体質をたずねる簡易フラッシング質問紙法は,精度90%でALDH2欠損を判別し,飲酒・喫煙・食習慣と組み合わせた食道癌リスク検診問診票の高スコア群の癌の頻度は高い.予防の新戦略となる遺伝子解析の普及が望まれる.<br>