著者
村田 晃 大嶋 一夫 横尾 金浩 加藤 富民雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.1045-1051, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
21

AsAによるJ1ファージ不活化に対するアミノ酸の促進作用の機序について研究し,次のことがわかった. (1) この不活化促進作用に関与するアミノ酸の官能基は, α位のアミノ基とカルボキシル基である. (2) AsAとグリシンによるファージ不活化は,分子状酸素が存在しAsAが自動酸化される条件下で起こる. (3) この不活化に関与するのは, AsAの自動酸化に伴って生成する酸素ラジカルである.すなわち,不活化反応にフリーラジカル反応機構が関与している. (4) 酸素ラジカルのうち,ファージに直接作用するのは,主としてOHである. (5) OHの作用を受けたファージでは, DNAの1本鎖切断が起こっていると考えられる. (6) AsAの自動酸化がグリシンによって促進される. (7) 以上のことから, AsAによるファージ不活化に対するアミノ酸の促進作用は,分子状酸素によるAsAの自動酸化がアミノ酸によって促進されることによって,酸素ラジカルであるOHの生成量が増大し,そのためにAsAによるファージ不活化(DNA鎖切断)が促進されることであると結論できる.