著者
横山 知加 貝谷 久宣 谷井 久志 熊野 宏昭
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.52-63, 2015-11-30 (Released:2015-12-10)
参考文献数
58

本稿では,社交不安症(SAD)の脳構造と機能に関する研究について概説した。脳構造に関する研究では,SAD患者は扁桃体,海馬などの灰白質体積が小さいことに加えて,鉤状束における白質の構造的異常が報告されている。脳機能に関する研究では,スピーチ課題や否定的な顔表情に対して,SAD患者の扁桃体が過活動になることが一致した結果である。薬物療法や認知行動療法(CBT)によって,辺縁系および前頭前野領域の機能に変化が生じる。CBTに対する治療反応性の予測には,扁桃体などの皮質下領域でなく,視覚野や前頭前野(背外側,腹外側部)の皮質領域が関与する。また,安静時では扁桃体―眼窩皮質のネットワーク異常が示されている。これらの研究結果から,SADの脳病態に恐怖・不安に関わる辺縁系(扁桃体,海馬,前帯状皮質など)―前頭前野領域(腹内側部など)の構造および機能異常があると推察できる。
著者
巣山 晴菜 横山 知加 小松 智賀 野口 恭子 兼子 唯 鈴木 伸一 貝谷 久宣
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 = Japanese journal of behavior therapy (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.87-97, 2013-05-31
参考文献数
19

本研究の目的は、「不安うつ病尺度(Anxious Depression Scale; ADS)」の開発であった。不安障害にうつ病を併発した患者114名、うつ病を併発していない不安障害患者153名、大うつ病患者80名、大学生97名を対象に質問紙調査を行った。ADSは「行動・情動症状」、「身体症状」、「攻撃的情動(動的情動)」、「非攻撃的情動(静的情動)」の4因子で構成され、内的整合性は高かった(α=0.72〜0.92)。また、ADSは他の対象者と比較して不安うつ病患者において有意に高得点であり、うつ症状評価尺度と中程度の正の相関関係にあった。以上の結果から、ADSは高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。