著者
坂野 雄二 東條 光彦
出版者
日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 = Japanese journal of behavior therapy (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.73-82, 1986

本研究の目的は,日常生活のさまざまな状況における個人の一般性セルフ・エフィカシーの強さを測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性について検証することである。知覚されたセルフ・エフィカシーの強さを表わしていると思われる項目の選択と,それらの因子分析の結果にもとづいて,16項目から成る「一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)」が作成された。再検査法,折半法,平行検査法等による検討の結果,GSESは内的整合性も高く,信頼性,妥当性も十分に高いことが示された。また,抑うつ状態にある患者と,中程度ないしは高程度のセルフ・エフィカシーを示す健常者との聞でGSES得点の比較を行ったところ,抑うつ状態にある者は,そうでない者に比べて得点が有意に低いという結果が示された。その結果,GSESは弁別力という点でも妥当性は高く,臨床的応用あるいは研究への応用に十分に耐えうることが示唆された。
著者
酒井 美枝 伊藤 義徳 甲田 宗良 武藤 崇
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 = Japanese journal of behavior therapy (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-11, 2013-01-31
参考文献数
27

「創造的絶望(絶望から始めよう) : Creative Hopelessness(CH)」とは、不快な私的事象を制御することへの動機づけの低減を目的としたアクセプタンス&コミットメント・セラピーにおける治療段階、および、その介入によって獲得されたクライエントの姿勢を指す。CHの獲得の効果を検討した研究はなく、その理由としてその弁別法がない点が挙げられた。そこで、本研究では、行動分析学における「言行一致」を用いて、CHの獲得を弁別し、その効果を検討することを目的とした。社会的場面への回避傾向の高い大学生17名に対して、CH Rationale(講義とエクササイズ)を実施した。結果として、CHが獲得された言行一致群は他群と比べ、介入後のRationaleに関する習得度が最終的に高くなる傾向が示唆された。また、言行一致群では介入前後で社会的場面への苦痛度や精神的健康が改善することが示された。
著者
村山 恭朗 岡安 孝弘
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 = Japanese journal of behavior therapy (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.215-224, 2012-09-30
参考文献数
31

抑うつ的反すうとはネガティブな認知を繰り返し体験することを指す。反すう傾向が高い場合うつ病リスクは高まるが、反すう傾向が低い場合にはネガティブな認知が抑うつを悪化させるプロセスが緩和される。しかしながら、この抑うつ的反すうが加齢に伴って量的および質的にどのように変化するかに関して、あまり研究されていない。そこで本研究は、大学生群と30・40代の成人群が示す抑うつ的反すう傾向と低反すうの緩衝効果を比較することで、加齢に伴う反すう傾向の変化を検討した。その結果、成人群では反すう傾向が低く、さらに低反すうの緩衝効果が認められた。このことから、加齢に伴って抑うつ的反すうは軽減し、個人はより効果的にネガティブな認知に対応できるようになると示唆された。また本研究結果から年齢に適した予防的介入が議論された。
著者
巣山 晴菜 横山 知加 小松 智賀 野口 恭子 兼子 唯 鈴木 伸一 貝谷 久宣
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 = Japanese journal of behavior therapy (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.87-97, 2013-05-31
参考文献数
19

本研究の目的は、「不安うつ病尺度(Anxious Depression Scale; ADS)」の開発であった。不安障害にうつ病を併発した患者114名、うつ病を併発していない不安障害患者153名、大うつ病患者80名、大学生97名を対象に質問紙調査を行った。ADSは「行動・情動症状」、「身体症状」、「攻撃的情動(動的情動)」、「非攻撃的情動(静的情動)」の4因子で構成され、内的整合性は高かった(α=0.72〜0.92)。また、ADSは他の対象者と比較して不安うつ病患者において有意に高得点であり、うつ症状評価尺度と中程度の正の相関関係にあった。以上の結果から、ADSは高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。