著者
佐藤 秀樹 伊藤 理紗 小野 はるか 畑 琴音 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.101-109, 2023-02-01 (Released:2023-02-17)
参考文献数
37

The deterioration of workers’ mental health and the resulting decline in their work performance have become significant contemporary problems. This study examined the relationship between reinforcement sensitivity (i.e., the behavioral inhibition/activation systems), rumination, depression, and the decline in work performance among local government employees. All the regular and non-regular employees in a local government aged 20 years or older, working over 29 hours per week, responded to a self-administered, anonymous questionnaire survey. We analyzed the responses of 2,223 employees. The results of structural equation modeling indicated that depression was positively associated with a decline in work performance. Also, the behavioral inhibition system was positively associated with depression, partially mediated by rumination. In contrast, the behavioral activation system was negatively associated with depression, which was not mediated by rumination. These results are meaningful for developing a psychological model of depression related to local government employees’ work performance decline.
著者
武井 優子 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.50-59, 2011 (Released:2012-02-29)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究の目的は,喪失体験経験後の回復過程における認知的および行動的な変化の特徴を明らかにすることである。喪失体験から回復した女子大学生8名を対象に,半構造化面接を行い,喪失体験を経験してから現在までの経過を修正版M-GTAで分析した。また,日本語版外傷後認知尺度(Japanese version of the Posttraumatic Cognitive Inventory; JPTCI),日本語版外傷体験後成長尺度(Posttraumatic Growth Inventory; PTGI),対処方略尺度(Tri-Axial Coping Scale; TAC-24),喪失体験のとらえ方(Visual Analogue Scale)を測定した。その結果,喪失体験からの回復には,肯定的な認知が増えることと,行動が活性化することが重要であることが示された。
著者
松永 美希 鈴木 伸一 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.157-166, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)

われわれは、腹痛への予期不安が強い全般性社会不安障害の28歳男性患者を経験した。患者は、他者からの否定的評価を恐れて、10年近く社会的交流を回避していた。この症例に対して、認知行動療法(リラクセーション、社会的スキル訓練SST、認知再構成法、エクスポージャー)を行った。その結果、リラクセーションを用いて不安に伴う身体症状に対処できるようになり、SSTでは、社会的交流に必要な振る舞いを獲得し、認知再構成法やエクスポージャーを通して、不合理な思い込みや他者からの否定的評価に対する不安が低減した。全13回の面接終結後、社会的機能は著しく改善し、フォローアップ期においてもその改善が維持されていた。本報告では、本症例の治療経過と、社会不安障害に対する認知行動療法の効果について検討した。
著者
唐 鈺穎 小野 はるか 小川 祐子 小澤 美和 田巻 知宏 大谷 弘行 清藤 佐知子 鈴木 伸一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.169-177, 2021 (Released:2021-05-21)
参考文献数
27

【目的】対象者の属性を調整した場合,乳がん患者である母親の抑うつ・不安と家族機能が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討する.【方法】交絡因子となる対象者の属性別にサブグループに分けて,抑うつ・不安と家族機能を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.【結果】各属性のサブグループにおいて,母親の抑うつが高い場合は母親の抑うつが低い場合よりも子どものQOLが有意に低いことが示された.きょうだいの有無のサブグループ,母親の化学療法の受療有無のサブグループにおいて,家族機能による子どものQOLに差異がみられた.【結論】今後,子どもを持つ乳がん患者の家庭を支援する際に,子どものきょうだいの有無や乳がん患者の化学療法の受療有無などといった属性も考慮したうえで,母親の心理状態と家族機能にアプローチする必要があると考えられる.
著者
清水 栄司 佐々木 司 鈴木 伸一 端詰 勝敬 山中 学 貝谷 久宣 久保木 富房
出版者
日本不安障害学会
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.116-121, 2014-03-31 (Released:2014-05-02)
被引用文献数
1

日本不安障害学会では,日本精神神経学会精神科用語検討委員会(日本精神神経学会,日本うつ病学会,日本精神科診断学会と連携した,精神科病名検討連絡会)からの依頼を受け,不安障害病名検討ワーキング・グループを組織し,DSM-5のドラフトから,不安障害に関連したカテゴリーの翻訳病名(案)を作成いたしました。ご存知のように,厚生労働省は,地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病として指定してきた,がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病の四大疾病に,新たに精神疾患を加えて「五大疾病」とする方針を決め,多くの都道府県で2013年度以降の医療計画に反映される予定です。精神疾患に関しては,「統合失調症」や「認知症」のように,common diseasesとして,人口に膾炙するような,馴染みやすい新病名への変更が行われてきております。うつ病も,「大うつ病性障害」という病名ではなく,「うつ病」という言葉で,社会に広く認知されております。そこで,DSM-5への変更を機に,従来の「不安障害」という旧病名を,「不安症」という新名称に変更したいと考えております。従来診断名である,「不安神経症」から,「神経」をとって,「不安症」となって短縮されているので,一般に馴染みやすいと考えます。ただし,日本精神神経学会での移行期間を考え,カッコ書きで,旧病名を併記する病名変更「不安症(不安障害)」とすることを検討しております。そのほかにもDSM-5になって変更追加された病名もあるため,翻訳病名(案)(PDFファイル)を作成しました。翻訳病名(案)については,今後も,日本精神神経学会精神科用語検討委員会の中での話し合いが進められていく予定です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
著者
笹川 智子 金井 嘉宏 村中 泰子 鈴木 伸一 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.87-98, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
30

本研究の目的は、日本版Fear of Negative Evaluation Scale(FNE;石川ら,1992)の短縮版を作成し、その測定精度を項目反応理論(IRT)の観点から評価することであった。項目数を削減することによる情報量の損失を、段階反応モデルを用いることで補い、12項目五件法の尺度を構成した。テスト情報関数の形状から、作成された短縮版は幅広い尺度値レベルで安定した測定精度を保つことが示された。特に特性値の高い被検者に対しては30項目二件法の原版よりも有効性が高く、Leary(1983)のBrief Fear of Negative Evaluation Scale(BFNE)との比較においてもすぐれた測定上の特徴をもつものであった。また、簡便なスクリーニングテストとしての有用性や、他の尺度との併用など、臨床・研究場面への応用可能性が論じられた。
著者
市倉 加奈子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.79-88, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
33

身体疾患患者は、それぞれの疾患に特有な問題を抱えている。たとえば、がん患者は診断や余命の告知が衝撃や絶望をもたらす。心疾患や糖尿病患者はセルフケアや長期療養に伴う苦痛が大きい。これらの心理社会的問題や苦痛の改善に、認知行動療法(Cognitive behavioral therapy: CBT)が有用であることが先行研究で明らかにされてきた。がんのCBTは、認知療法、行動活性化療法、問題解決療法、マインドフルネス認知療法などで構成される。一方で心疾患や糖尿病のCBTは認知療法、生活習慣改善を目指す行動療法が用いられることが多い。チーム医療において、上記の身体疾患患者に対するCBTを適用していくために、公認心理師の役割や行動コンサルテーションなどのCBT活用方法について議論する必要がある。今後はさらにエビデンスを蓄積し、身体疾患患者に広く心理的支援が提供されることが求められている。
著者
田上 明日香 伊藤 大輔 清水 馨 大野 真由子 白井 麻理 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.11-22, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究の目的は、うつ病休職者の職場復帰の困難感を測定する尺度を作成し、さらにその尺度をもとに職場復帰の困難感の特徴を明らかにすることであった。単極性のうつ病と診断された34名を対象に職場復帰の困難感について自由記述による回答を求め、項目案を作成した。次に、単極性のうつ病と診断された休職者60名を対象にその項目について探索的因子分析を行い、「職場で必要な体力面の困難」「職場復帰後の対人面の困難」「職務に必要な認知機能面での困難」の3因子10項目から構成されることが示され、十分な信頼性と内容的妥当性、併存的妥当性が確認された。そこで、職場復帰の困難感尺度を使用してタイプ分類を実施したところ、四つの類型を得た(全般困難型、復職後の対人関係困難型、体力・認知機能困難型、困難少型)。最後に、それぞれの類型にあわせた支援について議論がなされた。
著者
田上 明日香 伊藤 大輔 大野 真由子 白井 麻理 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.95-106, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、うつ病の治療において、うつ症状とともに評価が必要とされている社会的機能に着目し、うつ症状と社会的機能に関連する心理的要因を明らかにすることである。単極性のうつ病と診断された66名を対象に、自動思考尺度(ATQ-R)、対処方略尺度(TAC)、ソーシャルスキル尺度(KISS)、うつ症状尺度(BDHI)、社会適応状態尺度(SASS)を実施した。その結果、うつ症状に対しては、"自己に対する非難"が関連していたが、社会適応状態には"肯定的思考"と"肯定的解釈と気そらし""社会的スキル"が関連しており、うつ症状と社会適応状態では関連する要因が異なることが示唆された。これらのことから、うつ病患者への支援においては、うつ症状だけでなく社会適応状態に関連する要因を検討する必要性が議論され最後に本研究の限界について述べられた。
著者
岡島 純子 谷 晋二 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-211, 2014-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

本研究では、通常学級に在籍し、仲間との関係がうまくもてない自閉症スペクトラム障害(ASD)児に対して社会的スキル訓練(SST)を実施し、般化効果、維持効果について検討した。その際、(1)機能的アセスメントの実施、(2)標的とされた社会的スキルに関する概念的理解を深めるために、ASDの特性に合わせた教示の実施、(3)標的とした社会的スキルを行動リハーサルする機会を十分に設定するために保護者とリハーサルをするためのホームワークを行った。機能的アセスメントから特定された標的スキルは、働きかけに反応するスキル、エントリースキル、主張性スキル、感情のコントロールスキル、問題解決スキルであり、10セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、社会的スキル得点が向上し、放課後に友達と遊びに行く割合が増え、1ヵ月後も維持していた。
著者
伊藤 大輔 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-22, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、致死性のないトラウマが外傷後ストレス反応、トラウマ体験後の認知に及ぼす影響を検討するとともに、致死性のないトラウマ経験者の認知と外傷後ストレス反応の関連を、致死性のあるトラウマ経験者との比較から検証することであった。大学生302名を対象に、外傷体験調査票、改訂版出来事インパクト尺度、トラウマ体験後の認知尺度が施行された。その結果、重篤な外傷後ストレス反応を発症・維持していた人数に、致死性のあるトラウマ経験群と致死性のないトラウマ経験群で有意差はみられなかった。また、自責の念は、致死性のないトラウマ経験群のほうが有意に高かった。さらに、トラウマ体験後の認知と外傷後ストレス反応の関連は、致死性のあるトラウマ経験群のほうが致死性のないトラウマ経験群と比較して強いことが示された。以上の結果から、今後、致死性のないトラウマ経験者の特異的な認知内容を検証する必要性が示唆された。
著者
国里 愛彦 山口 陽弘 鈴木 伸一
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.324-334, 2008-03-31
被引用文献数
3

現在盛んに研究がなされているパーソナリティモデルにCloningerの気質・性格モデルとBig Fiveモデルの2つのモデルがある。しかし,2つのモデル間の関連性についての研究は少ない。そこで,本研究は,気質・性格モデルとBig Fiveモデルとの関連を検討することを目的とした。大学生457名を対象にTemperament and Character lnventory(TCI)とBig Five尺度を実施した。その結果,TCIとBig Five尺度は強い関連を示し,気質・性格モデルはBig Fiveモデルの説明を行うことが可能であることが示唆された。また,外向性を除くBig Fiveモデルの各因子の説明には,気質だけでなく性格が必要であることが示唆された。最後に,気質・性格モデルの観点からBig Fiveモデルの各因子の特徴について論議された。
著者
鈴木 伸一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.504-511, 2004-02-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
19
被引用文献数
10 9

The purpose of this study was to validate the three dimensional model of classifying coping behavior. The three are: Encounter-Avoidance, Problem-Emotion, Behavior-Cognition Dimension. A set of questionnaires on coping behavior and psychological stress responses were administered, and 1 604 undergraduates and 1 296 adults completed them. Analyses of covariance structure were performed, and results indicated that the three dimensional model, with eight coping style, showed the highest goodness-of-fit statistics. Multiple regression analyses also indicated that Problem-Emotion and Behavior-Cognition dimensions were useful for predicting the coping effects on psychological stress responses. Therefore, the two dimensional model of Problem-Emotion and Behavior-Cognition, with four coping style, would be helpful for further investigation of coping behavior that would buffer psychological stress responses.
著者
佐々木 美保 宮尾 益理子 奥山 朋子 七尾 道子 越坂 理也 佐田 晶 石川 耕 水野 有三 熊野 宏昭 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.81-91, 2018-05-31 (Released:2019-04-05)
参考文献数
24

本研究の目的は、成人2型糖尿病患者の抑うつ・不安がセルフケア行動に及ぼす影響を検討することであった。外来通院中の2型糖尿病患者65名を対象に質問紙調査を実施した。階層的重回帰分析の結果、セルフケア行動のうち、患者の食事療法遵守行動は不安から有意な負の影響が認められた。また、フットケア遵守行動では、抑うつから負の影響が認められた。一方、運動療法遵守行動には抑うつ・不安いずれからも有意な影響性は認められなかった。抑うつ・不安の高い外来通院中の2型糖尿病患者には、食事療法やフットケアに関する療養指導に先立って、セルフケア行動遵守場面における抑うつ・不安が生じる際の対処行動について、行動分析によるアセスメントと介入を行っていくことが有効であると考えられた。
著者
小関 俊祐 伊藤 大輔 小野 はるか 木下 奈緒子 栁井 優子 小川 祐子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.15-28, 2018-01-31 (Released:2018-06-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

本研究の目的は、日本の認知行動療法の実践家を育成するために不可欠と考えられる教育研修内容を明らかにすることであった。まず、国内外の認知行動療法家4名によって、英国認知行動療法学会が認証した大学の35の研究科を対象に、教育内容項目が網羅的に収集された。次に、国内外の認知行動療法家7名によって、英国におけるガイドラインにおける教育カテゴリーと日本での教育制度の状況を参照しながら、収集された580項目の教育内容について、分類・整理が行われた。その結果、最終的に、3カテゴリー、62項目が得られ、日本の認知行動療法の教育内容リストが作成された。今後、本研究を基盤として、教育研修内容を構成することが求められる。
著者
伊藤 大輔 兼子 唯 小関 俊祐 清水 悠 中澤佳 奈子 田上 明日香 大月 友 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-129, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、近年の外傷後ストレス障害(PTSD)に対する認知行動療法の効果をメタ分析によって検証することと、PTSDの効果研究に関する今後の検討課題を明らかにすることであった。メタ分析の結果、PTSDに対する認知行動療法の有効性が明らかにされ、その適用範囲も拡張しつつあることが示された。さらに、今後の課題として、(1)対象者の症状プロフィールや状態像を考慮した介入法の検討を行うこと、(2)薬物療法と認知行動療法を組み合わせた際の効果について検証すること、(3)治療効果に作用する治療技法および要因を特定し、効率的かつ適切な介入法を検討すること、(4)治療効果に影響を及ぼす治療技法以外の要因について検討すること、などが指摘された。
著者
伊藤 大輔 佐藤 健二 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-12, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、トラウマの構造化開示が心身の健康に及ぼす影響を検証することであった。実験参加者(大学生25名)は、構造化開示群、自由開示群、統制群に無作為に振り分けられ、20〜30分間の筆記課題を3日間行った。構造化開示群は認知的再評価を促進させるため、実験者からの詳細な指示に従ってトラウマを筆記するように求められた。自由開示群は自由にトラウマを筆記するように求められた。統制群は中性的な話題について筆記するように求められた。効果指標には、コルチゾール、ワーキングメモリ容量、出来事インパクト尺度、外傷体験後の認知尺度を用いた。その結果、構造化開示群、自由開示群においては、内分泌系の改善効果が維持される可能性が示された。また、構造化開示群が統制群と比較して認知機能が向上したものの、統計的には有意傾向であった。したがって、今後も、実験手続きを改定し、構造化開示の効果について再検証する必要がある。
著者
鈴木 伸一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.61-74, 2001
被引用文献数
7

&nbsp;&nbsp;1.日本のコナラ林について植物社会学的な種組成および分布の検討を行った.各地域から報告された既発表文献と筆者らの報告した合計562の植生調査資料を用い,総合常在度表により広域的に比較した.その結果,日本のコナラ林群落を次の9群集にまとめ,イヌシデ-コナラ群団,コナラ-ミズナラオーダー,ブナクラスに位置付けた.1)オニシバリ-コナラ群集,2)ノグルミ-コナラ群集,3)アベマキ-コナラ群集,4)ケネザサ-コナラ群集,5)ケクロモジ-コナラ群集,6)クヌギ-コナラ群集,7)クリ-コナラ群集,8)カシワ-コナラ群集,9)オクチョウジザクラ-コナラ群集 <BR>&nbsp;&nbsp;2.コナラ林は各群集の分布状況から,沿岸地域,西南日本地域,中部内陸地域,東北日本地域および日本海地域の5つの分布型にまとめられることを明らかにした.特に西南日本地域と東北日本地域はほぼフォッサ・マグナを境界とし,植物区系上の境界である牧野線に対応していた.<BR>&nbsp;&nbsp;3.垂直分布では,コナラ林は沿岸低地から海抜1350mまでみられ,2つの分布パタ-ンに大別される.1つはヤブツバキクラス域のみに分布する群集で,自然立地をもたない集約的管理によって形成されてきた二次林である.中国大陸の夏縁性ナラ林との類縁をもつと考えられる.他の1つはヤブツバキラス域から下部ブナクラス域まで分布する群集で,二次林だけでなく自然植生としても存在する.ブナクラスの種群が優勢で,二次林としては下部ブナクラスの夏縁広葉樹自然林に由来すると考えられる.
著者
伊藤 大輔 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.155-166, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、非致死性トラウマ体験者を対象として、トラウマ体験後の認知を測定する尺度(CognitionsInventoryofNon-lethalTrauma;CINT)を作成し、その信頼1生、妥当性を検討することであった。大学生302名を対象に、非致死性トラウマ体験後の否定的な考えについて自由記述による回答を求め、項目を作成した。次に、大学生902名を対象に、CINT暫定版を実施した。探索的因子分析を行った結果、「自己の能力や価値に対する否定的な認知」「出来事の対処についての後悔の念」「他者関係性に対する否定的認知」「周囲の不安全・将来に関する否定的認知」の4因子19項目から成るCINTが作成された。また、CINTは十分な信頼性と内容的妥当性、基準関連妥当性、併存的妥当性を有することが確認された。最後に、CINTの臨床的有用性に関して議論がなされた。