著者
三品 浩基 横山 葉子 Mitchell D Feldman 角舘 直樹 福原 俊一
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.75-80, 2011-04-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

欧米では,メンター制度が医学領域の研究成果の達成のみならずキャリア形成,研究資金獲得にとって有用な教育システムとして認められている.わが国の医学研究教育においてもメンター制度を活用するにあたり,その試行経験から,メンタリングの促進因子と阻害因子を検討することが重要と考える.1)メンター制度下で臨床研究の実施経験がある医師12人を対象として,メンタリングの促進因子および阻害因子を探索するインタビュー調査を行った.2)インタビューの逐語録を質的に分析し,メンタリングの促進因子と阻害因子を抽出した.3)促進因子として,メンティーのレベルの適切な評価,メンティーの考えているキャリアパスの把握,コミュニケーションの双方向性,身近な先輩研究者の存在が抽出された.4)阻害因子として,メンターの忙しさ,相談内容のレベルの低さについてのメンティーの不安,メンター・メンティー間の上下関係が抽出された.5)施設におけるメンタリングの評価制度,およびメンターの教育制度がメンタリングの促進に必要な対策として期待された.
著者
有村 保次 西田 俊彦 南 麻弥 横山 葉子 三品 浩基 山崎 新 石崎 達郎 川上 浩司 中山 健夫 今中 雄一 川村 孝 福原 俊一
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.259-265, 2010

我が国の臨床研究の推進には,臨床と研究手法に精通した臨床研究医(clinical investigator)の養成が必要である.我が国初の臨床研究の系統的な教育を行う臨床研究者養成(MCR)コースが京都大学に開設された.今回,本コースの卒業生が臨床研究を実施する上で直面している問題点を調査し,今後の改善策を検討した.<br>1) MCRコース3期生までの全履修者28名を対象に,履修後の臨床研究実施に関する現状や将来像等について自己記入式質問紙調査を行った.<br>2) 回答者24名中(回収率86%),臨床研究を行う上で,「時間がない」,あるいは,「研究協力者がいない」といった問題を挙げる者は,それぞれ40%程度いた.<br>3) 「臨床研究を進めるために職場や周囲への働きかけ」を行った者は20名(83%)いたが,職場において臨床研究の支援が得られたのは1名のみであった.<br>4) このような状況下,自らの10年後の将来像として「病院で臨床研究を行う臨床医」と回答した者が半数以上いた(54%).また,「臨床研究を行う医師のキャリアパスを想像できる」と回答した者は42%であった.<br>5) MCRコースは改善の余地があるものの人材育成の具体的なモデルを呈示した.臨床研究のさらなる発展のため,医療現場における支援体制や人的・物的インフラ整備の必要性が示唆された.