著者
内田 希 前川 尚 横川 敏雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1414-1424, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
38
被引用文献数
2

半経験的分子軌道法MNDOを二元系ホウ酸塩ガラスに適用し,その構造と塩基度に対する考察を進めた。ホウ酸塩ガラス中に存在するとされるpentaborate,triborate,diborate構造のクラスターを組み立て構造の最適化を行なった。計算結果は実験的に決定された構造をよく再現した。四配位ホウ素(4B)あるいは非橋かけ酸素(NBO)の形成にともなうB-O結合長の変化は電荷の移動と対応し, Gutmannの結合長変化則による予想と一致した。これらを基に分子式[H8B12O23]2-をもち種々の組成における構造を反映した異性体を組み立てた。これらのクラスター中の,軌道相互作用による非局在化エネルギー,Sparkle親和力,陽子親和力を求め塩基度の尺度とした。ハードおよびソフト酸・塩基の考え方にしたがった場合,クラスター中のBO4-構造単位はハード塩基に分類され・非橋かけ酸素はむしろソフト塩基に分類された。二元系ホウ酸塩中の4Bの安定性は対となる塩基性酸化物の種類に依存し,アルカリ酸化物とH2Oの場合で大きく異なることが示された。