- 著者
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横田 直子
横田 直子
小坂 香代子
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- 雑誌
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, 2012
【はじめに】<BR>心臓リハビリテーションの効果は様々なエビデンスが証明されているが継続できる受け皿が乏しい現状である。通所リハビリテーション(以下デイケア)において慢性期リハビリテーションを継続し効果のあった症例を報告する。学術的発表にあたりご本人より承諾を得ている。<BR>【症例紹介】<BR>70代男性。病前は転勤の多い会社員。診断名:心筋梗塞・多臓器不全(H20.12)EF27%、BNP800-1000pg/ml、血圧96-80/62-50mmHg。H21.6月自宅退院。入浴・更衣のみ軽介助。屋外連続歩行は30M程度。知的レベル高く、治療への意欲強い。<BR>【経過】<BR>H22.12月通所施設の終了に伴い当デイケア利用開始。専門的なリハビリを継続したいとの希望あり。以前レジスタンストレーニング中心の自主トレーニングが原因と思われるBNP上昇があり自主トレ中止となっていた。監視下にて3Mets程度のプログラムから開始し、開始1ヶ月で持久力の向上と安全な運動強度が定着した為、セラバンドを用いた自主トレーニングを指導。教育と情報交換の場としても活用される。H23.6月散歩やバスでの外出を楽しまれるようになる。8月NPOで行っている心臓リハビリテーションを紹介し、デイケアと併用開始。運動負荷試験の結果現行の運動強度のまま継続の方針となる。妻の入院の際も家事や見舞いなど行えていた。9月耐久性の向上に伴いプログラムを追加。同程度の運動時間を延長。調理・園芸・散歩・掃除など楽しまれる。<BR>【結果】<BR>退院後21カ月時点で急性増悪なし。ADLは入浴の洗体を除いて自立。H23.12月の会議にて、執刀医から筋量が増えてほめられたこと、苦しくて20歩で休んでいた道を20-30M歩行後自分でひと息入れて歩き続けられたこと、リスクに配慮して外出できていることがご本人より語られた。また、道行く人に障害者と見てもらえず苦労したことも語られた。<BR>【考察】<BR>包括的心臓リハビリテーションの一環として介護保険下でのデイケアにて慢性期心臓リハビリテーションの継続に関わった。介護サービスの他、医療・NPOなどのサービスと共同して症例を援助できた。急性増悪なく運動耐用能、自己効力感の改善ほか一定の効果を得た。デイケアは慢性期の心臓リハビリテーションの一選択と成りうる。終了期限がなくライフスタイルやQOLに踏み込んで援助を継続する事が可能であり、通院困難による継続不能の要素も除外できる。今後も制度や情報不足の狭間でリハビリテーションの恩恵を受けられない方が少なくなるよう働き掛け続ける必要がある。